紹介
妹が首席で卒業を迎えようとしていた、その大事な日に、絵里はまた出血した。「わざと病気になった」と責められる。
次第に冷たくなっていくバスタブの中で、彼女は血を流しながら家族からの愛と怨みを思い返す。「生き続ける」ことと「全てを手放す」ことの間で、最も絶望的な選択を迫られていた。
彼女を殺すのは病ではない。家族の無関心だ。
チャプター 1
医者は、十五歳まで生きられないだろうと言っていた。
フォン・ヴィレブランド病――名前が長すぎて完全には覚えられなかったけれど、その意味だけは痛いほど理解していた。私の血は固まることを忘れてしまったのだと。ほんのかすり傷一つが、命取りになるのだと。
十歳の時に診断を受けたあの日、診察室のドア越しに母さんが泣き崩れる声が聞こえた。
それ以来、私は「壊れやすい少女」になった。私の世界は、凝固因子の注射と医療費の請求書、そして日に日に濃くなっていく両親の目の下の隈だけに縮小してしまった。
だが、私は今ここにいる。もうすぐ十八歳になる――私と梨奈が十八を迎えるまで、あとたったの三日だ。
私たちは双子だ。けれど鏡に映る彼女は、私より頭半分背が高く、頬は血色良く染まり、その瞳は診断を受ける前の私のように輝いている。
「絵里、本当に行かないの?」
卒業式のガウンをまとった梨奈が、私の部屋の入り口に立っていた。
今日は彼女の高校の卒業式だ。首席で卒業する彼女は、答辞を読むことになっている。
それで、私は? 診断されてからというもの、教室に足を踏み入れたことさえない。かつては私だって優等生だった。壇上に立ち、何かを成し遂げることを夢見ていた。今はただベッドの上から、私が送るはずだった人生を彼女が生きるのを眺めているだけだ。
「膝が痛くてたまらないの」私は右膝を押さえた。
「長くは立っていられないわ」
母さんが駆け込んできた。車のキーを握りしめている。
「梨奈、遅れるわよ!」
膝に置かれた私の手を見て、母さんの声が詰まった。
「また痛むの? よりによって今日?」
「母さん、無理そう……」
「八年よ」母さんは私の言葉を遮り、声を震わせた。
「梨奈の大切な日には決まって、あんたは具合が悪くなる。いつだってそう!」
「本当に痛いの……」
「本当に?」母さんは突然、コーヒーテーブルの上にあった薬の箱を掴み上げた。来週分の凝固因子だ。一箱三千ドルもする。
「これのために、母さんは仕事を辞めてつきっきりで看病してきたのよ! これのために、売れるものは全部売ったの!」
母さんの手の中で、箱が震えていた。
「今日だけでいい」母さんは私を睨みつけた。
「梨奈に卒業式を味あわせてあげて。母さんに息をつかせてちょうだい。お願いだから」
口を開こうとしたが、言葉が出てこなかった。
箱が母さんの手から滑り落ちた。
パリーンと乾いた音を立てて、ガラスの小瓶が砕け散った。破片が四方八方に飛び散り、その欠片の一つが私の足首をかすめた――他の誰かなら、絆創膏さえいらないような、ほんのかすり傷だ。
だが、私の血は固まらない。
血の玉が湧き上がってくる。一滴、二滴、そして細い筋になった。
あたりの空気が凍りついた。
「ガーゼ持ってくる!」梨奈が洗面所へ向かおうと振り返った。
「待ちなさい!」母さんの声は氷のように冷たかった。
「自分でやらせなさい」
母さんは鍵と梨奈の手首を掴んだ。
「行くわよ」
「でも、絵里が……」
「今すぐ!」
バタンとドアが閉まった。
私は一人取り残され、血が足をつたって明るい木目の床に滴り落ちるのを見ていた――母さんが毎日モップをかけて磨いている、あの床だ。
しゃがみこんで袖で拭おうとした。けれど血は滲むばかりで、さらに大きな染みとなって広がっていった。
つま先から冷たさが這い上がってくる。この感覚は嫌というほど知っている。
私はふらつく足で洗面所へ向かった――そこは私の聖域だ。出血の発作が起きるたび、ぬるま湯に浸かって過ごした場所。
バスタブに身を沈めると、温かいお湯が一時的に寒気を追い払ってくれた。
携帯電話に手を伸ばし、まずは父さんにかけた。父さんは卒業式のために一日休暇を取っていたはずだ。
コール音が鳴り続ける。出ない。
母さんにかけた。電話がつながると、背後からマーチングバンドの演奏と歓声が聞こえてきた。
『それではお迎えください、卒業生総代、川村梨奈!』割れんばかりの拍手喝采。
「絵里?」母さんの声は潜められていた。
「なによ?」
「母さん、血が止まらないの……」
二秒間の沈黙。
「今度は何のつもり?」母さんの声色が険しくなった。
「梨奈がスピーチをするところなのよ! わざとやってるの?」
「嘘じゃないの、本当なの……」
「もういい加減にして! いつものように自分で何とかしなさい――ガーゼを当てて処置すればいいでしょ。あんたなら大丈夫よ!」
通話が切れた。
私は携帯電話を握りしめたまま、浴室に響く残響を聞いていた。お湯は赤みを増し、体は冷たくなっていく。
バスタブの縁に、母さんのニットのカーディガンが掛かっていた。私はそれを顔に被せ、ラベンダーの香りを吸い込んだ。
十二歳の時、腕を骨折して入院した夜、母さんはこのカーディガンを着て、一晩中私の手を握ってくれていたっけ。
お湯が徐々に冷めていく。
出血の勢いが弱まった――傷が治ったからではない。流れる血が尽きかけているからだ。
意識が遠のき始めた。私は思った。もしかしたら、これでいいのかもしれない。
父さんと母さんはもう、明け方まで医療費のことで喧嘩しなくて済む。
梨奈は大学の願書を書くたびに、「姉が重病のため、地元の学校を志望します」なんて書かなくて済む。
そして私も、もう無理に明るく振る舞わなくていい。真夜中の激痛に耐えながら枕を噛み締め、声を押し殺す必要もなくなるんだ。
最後の力を振り絞って、私はシャワーカーテンを引いた――ひまわり柄の防水カーテン。ひまわりは生命力の象徴だからと、母さんが選んでくれたものだ。
カーテンに少しだけ隙間を残した。
もし誰かが私を探しに来てくれたら、見つけてもらえるかもしれない。
もしも……。
水は完全に冷たくなっていた。私は、とても寒かった。
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***
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