私は死んだ、あなたを苦しめるために

私は死んだ、あなたを苦しめるために

大宮西幸 · 完結 · 20.3k 文字

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紹介

あの夜、私は十数人に引きずられて駐車場の隅に連れ込まれた。

目を覚ましたとき、両手は使い物にならなくなり、両足は麻痺していた。

私は事故だと思っていた。実の兄と婚約者の会話を聞くまでは——

「あのチンピラどもは手加減を知らなかったが、結果的には都合が良かった。今回の賞は、シャーロット以外にありえない」

シャーロット。我が家に養子として迎えられた「可哀想な妹」。

十二年間、彼女は私の論文を、私の枠を、私の栄誉を奪い続けた。そして私が最も信頼していた二人の男が、それらすべてを彼女の前に差し出したのだ。

彼らは私をわがままだと言い、分からず屋だと言い、彼女に譲るべきだと言った。

彼らは信じていた——十二年前、両親の命を奪ったあの火事は、私が放ったものだと。

しかし真実は、火を放ったのはシャーロットだった。火の中から彼らを引きずり出したのは、私だった。

彼らは救命恩人を取り違え、十二年間信じ続けてきた。

今、彼らは私に死を望んでいる。

ならば彼らの望み通りにしてやろう。

チャプター 1

 あの夜、手術を終えたばかりの私は、十数人の男たちに囲まれ、駐車場の隅に連れ込まれた。

 拳、鉄パイプ、ナイフ。

 次に目を覚ましたとき、私は病院のベッドの上にいた。

 両手の神経が断裂し、二度とメスを握ることはできない。

 脊髄損傷による下半身麻痺で、余生を車椅子で過ごすことになった。

 兄のライサンダーは目を赤くし、「あのゴロツキどもを地獄に送ってやる」と息巻いた。婚約者のニコラスは震える手で私の手を握り、「世界最高の医療チームを探す」と誓った。

 私は彼らを見つめながら、心の中でこう思った。

 大丈夫。どんなことがあっても、私にはお兄様がいる。ニコラスがいる。

 世界で一番私を愛してくれる二人がいるのだから。

 しかし一週間後、車椅子で階段の踊り場を通りかかったとき、聞き覚えのある二人の声が耳に飛び込んできた。

「正気か?」

 それは……ニコラスの声だった。

「ただ学術研究発表会を欠席させるだけの話だったはずだろ。ペニーの手はもう元に戻らないんだぞ!」

 私の車椅子が止まる。

 心臓が早鐘を打ち、耳鳴りが頭の中で響き渡る。

 次の瞬間、ライサンダーの声が漂ってきた。

「あのゴロツキども、手加減を知らねえな。だが結果オーライだろ? これで今回の脳神経外科学会学術賞は、間違いなくシャルロットのものだ」

 全身の血液が、瞬時に凍りついた。

「でも……」ニコラスの声が揺れる。

「でも、はない」ライサンダーが遮る。「ペニーは令嬢だ。幼い頃から家族に愛され、甘やかされてきた。俺は実の兄で、お前は婚約者だ。俺たちが守ってやれば、後半生が不自由だろうと何不自由なく暮らせる」

「だがシャルロットは違う」彼は一呼吸置いた。「あの子は養女だ。ずっと肩身の狭い思いをしてきた。あの子が心から欲しがっていた学術賞だ。ペニーは優秀すぎて邪魔なんだよ。シャルロットには俺しか頼れる人間がいない。あの子の道を塞ぐ奴は、誰であろうと許さない」

 ニコラスが長く息を吐く音が聞こえた。

「……わかったよ」その声には、妥協の色が滲んでいた。「ペニーは毎日痛みで眠れないようだ。医者に言って、一番強い鎮痛剤を使わせてやってくれ」

 足音が遠ざかっていく。

 あたりは死のような静寂に包まれた。

 私は車椅子の上で、風に吹かれる枯れ葉のように震えていた。

 あの日の暴行は、事故ではなかった。

 私が最も信頼していた二人が、周到に計画したものだったのだ。

 口を開き、叫ぼうとした。泣き叫びたかった。けれど、悲憤と絶望が喉元までせり上がったが、漏れ出たのはただの嗚咽だけだった。

 わからない。

 ライサンダーは私の実の兄だ。両親が亡くなってから、この世でたった一人の血の繋がった家族だった。

 ニコラスは私の婚約者だ。一生私を守ると誓ってくれた人だった。

 それなのに、彼らは……。

 彼らは自らの手で、私を壊した。

 たった一人の養女のために。

 十二年前のことを思い出す。

 あの大火事は私の両親を奪い、そしてシャルロット・ヴァンダービルトをもたらした。

 彼女の両親も私の両親と共に亡くなり、アシュワース家が彼女を引き取ることになったのだ。

 初めてリビングに立った彼女の姿を覚えている。怯えきった様子で、私を「ペニー」と呼んだ。

 私は一番のお気に入りだったバービー人形を彼女に手渡し、愚かにもこう思ったのだ。「よかった、私にも妹ができた」と。

 この「可憐な」妹が、私の人生における最大の災厄になるとも知らずに。

 最初は些細なことだった。

 シャルロットが父の遺したアンティークの磁器を割ったのに、目を赤くして「ペニーがやった」と言ったこと。

 私の論文を紛失したのに、涙目で「わざとじゃないの」と訴えたこと。

 そのたび、ライサンダーは眉をひそめて私に言った。「ペニー、いい加減にしろ」

 ニコラスも眉間を揉みながら私を諭した。「シャルロットは悪気がないんだ。君が譲ってあげなさい」

 やがて、事態は常軌を逸していった。

 私が三ヶ月徹夜して書き上げた論文が、発表時にはシャルロットの名前になっていた。

 私が勝ち取った海外研修の枠に、最終的に選ばれたのはシャルロットだった。

 私のものであるはずのすべてが、ゆっくりと、確実にシャルロットに奪われていくのを、ただ指をくわえて見ているしかなかった。

 何が一番滑稽かって?

 私が本気で、自分が至らないせいだと思い込んでいたことだ。

 今日、この瞬間まで。

 最初から最後まで、私が大切にしていたものはすべて、最も信頼していた二人の手によってシャルロットに捧げられていたのだ。

 あの踊り場の陰で、どれくらい座り込んでいただろう。

 こんな体になって、生きる意味がどこにあるというのか。

 両手は動かず、両足は麻痺。

 唯一信じていた肉親と愛する人が、私を地獄へ突き落とした張本人だった。

 目を閉じると、屋上の手すりが脳裏に浮かぶ。

 あそこから飛び降りれば、すべてが終わるかもしれない。

 その時、ポケットの中で携帯電話が震えた。

 画面には見知らぬ番号が表示されている。

 しばらく見つめていたが、意を決して通話ボタンを押した。

「アシュワース様でいらっしゃいますね」電話の向こうから、穏やかな男の声がした。「私どもはアズラ研究所の者です。あなたがお遭いになった悲劇をお聞きしております。もしよろしければ、私どもと一緒にお仕事をしていただけませんでしょうか?」

 私は笑った。笑いながら、涙がこぼれ落ちた。

「今の私はただの廃人よ。あなたたちの足手まといになるだけ」

「いいえ」相手の声は冷静で、確信に満ちていた。「私どもなら、あなたを立ち直らせることができます。もう一度メスを握らせ、もう一度大地に立たせてみせましょう」

 心臓が大きく跳ねた。

 数秒の沈黙。

「ただし条件があります。研究所に入った後は、過去との繋がりを完全に断っていただきます。親族や友人との連絡は一切禁止。対外的にはこう発表します——ペネロペ・アシュワースは死亡した、と」

 死。

 病室の天井を見つめながら、ふと、その言葉が恐ろしいものではないように感じられた。

 ペネロペ・アシュワース。

 アシュワース家の令嬢。ライサンダーの妹。ニコラスの婚約者。

 二十八年間愛され、そして粉々に踏みにじられた女。

 確かに、彼女は死ぬべきだ。

「わかった」自分の声が、まるで他人のことのように平坦に響いた。「その条件、受け入れます」

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