別れた後、私は妊娠していることを隠した

別れた後、私は妊娠していることを隠した

マナコの愛 · 連載中 · 163.3k 文字

838
トレンド
838
閲覧数
0
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

「希実……」

緒方廷治は、私の中で果てながら、うっとりと姉の名を口にした。

あの日から三年。私はずっと、姉・希実の哀れな影として生きてきた。

廷治は私の大学合格通知を破り捨て、希実が死の間際に着ていたシルクのドレスを無理やり着せつけ、避妊薬を喉の奥に押し込んだ。涙にむせび、息もできない私をよそに。

周囲は口を揃えて言った。「霞澄、お前が希実を殺したんだ。お前は彼女に命を借りている」と。

実の両親でさえ、私に唾を吐きかけて罵った。「なぜお前が死ななかったのか」と。

それでも私は、あらゆる屈辱を呑み込んだ。耐え続ければいつか真実が明らかになり、この借りを返せる——そう信じて、ただひたすらに耐え抜いた。

だが、あの雨の夜、私はついにその声を耳にした。姉・希実の声を。一本の電話越しに、無邪気で退屈そうな愉悦を滲ませて、彼女はこう言っていた。

「ああ、あれね、ただの冗談だったのよ。まさか本気にするなんて思わなくて。霞澄が犬みたいに廷治の足元を這いずり回って、私の服を着て、私の代役をやってるのを見るのが……正直、ここ数年で一番おもしろい暇つぶしだったわ」

その瞬間、私の世界は音を立てて崩れ去った。

私の苦しみのすべては、彼女の歪んだ遊びにすぎなかった。愛した男も、血を分けた家族でさえも——皆が結託して私を壊し、ただ彼女の笑顔のために動いていたのだ。

私は勢いよく個室のドアを開け放ち、全員の目の前で、希実の頬を思い切り張り飛ばした。

「ゲームがしたいなら、そう、受けて立ってあげる」

その後、妊娠検査の結果を緒方廷治に叩きつけると、彼は半狂乱になり、必死に私を引き止めようとした。

「緒方廷治、あなたにこの子の父親になる資格はない。代わりの人形でも探しなさい——私は、もう行くから」

チャプター 1

「希実……」

情が昂りきったその瞬間、緒方廷治は――松本霞澄を抱きながら、姉の名を呼んだ。

屈辱の涙が霞澄の目尻からつうっと落ちる。けれど彼女は、しばらくしてから従順に腕を回し、彼の身体をきつく抱き返した。

三年前。松本希実は海に身を投げた。

死の間際、最後にかけた電話は霞澄宛てだった。だがあのとき霞澄は研究室にいて、着信に気づかなかった。

希実を心の底から愛していた緒方廷治は、その責任を霞澄に押しつけた。

退学を強要し、希実の真似をさせ、陽の当たらない愛人にした。

霞澄は泣きも喚きもしない。ただ彼の怒りを受け止め続けた。

自分自身もまた、あの電話に出られなかったことを悔いていたから。

熱が冷めると、廷治は冷淡に身を起こし、避妊薬を霞澄の身体に放った。

疲れきった身体を支えながら、錠剤を無理やり飲み込む。喉の奥がむかむかして、吐きそうになる。

最近、胃の具合が悪いのか――とにかく吐き気がひどい。

十分以上も手間取っていると、緒方家の執事が迎えに来て促した。

緒方廷治は決して、霞澄を自分の家に泊めない。どれだけ遅くなろうと、どれだけ疲れていようと、彼女は出ていかなければならなかった。

彼にとって霞澄は、呼べば来て、用が済めば捨てる玩具。

胸に刻んだ初恋を弔うための代用品にすぎない。

霞澄は黙々と支度を早めた。

緒方家の門を出て、癖のように振り返る。

二階の窓辺に、すらりとした影が見えた気がした。

目の奥の痛みをこすり、もう一度見る。そこには誰もいない。

霞澄は自嘲気味に笑った。

――幻だ。あの人は私を憎むことで手一杯だ。見送るはずがない。

一時間後、霞澄は松本家に戻った。

玄関を入った瞬間、茶碗が飛んできて、額にどん、と当たる。

鮮血が白い額を伝い、あっという間に整った顔を汚した。

だが松本奥さんは微塵も痛まなかった。指を突きつけ、怒鳴り散らす。

「役立たず! 男ひとり繋ぎ止められないなんて。あのとき死んだのが、どうしてあんたじゃないの!」

胸がぎゅっと痛んだ。

姉の死は、もともと温厚だった緒方廷治を偏執と暴虐に変えた。

それだけじゃない。実の両親までも、苛立ちをぶつける存在に変えてしまった。

そして霞澄は、罪の元凶として黙って受け続ける。

奥さんは新聞を霞澄に叩きつけた。大見出しが目に刺さる。

【緒方・新谷両家、近く婚姻へ。帝都資本、勢力図激変か】

その瞬間、息が止まった。

緒方廷治が……結婚?

一生憎む、死ぬまで苦しめると言い捨てた男が、別の女を娶る?

――それはつまり。ようやく憎しみを手放し、私を解放してくれるということ?

虚しさ、軽さ、そして胸の奥に隠れていた、ほんのわずかな悔しさが一気に押し寄せる。

「パァン!」

呆然としていた霞澄の頬を、奥さんの平手が打った。

「聞いてるの? 黙って何よ! 希実が死ぬ前だって、あんたなんかに助けは求められなかった。彼氏ひとりも守れないなら、生きてる価値ある?」

愛娘を失った母は、狂ったみたいだった。

泣き叫び、霞澄を家から叩き出し、緒方廷治に頭を下げて翻意させて来いと命じる。

「できないなら、二度と帰ってくるな!」

追い出された霞澄は、月光を見上げた。

額の傷はじくじく痛むのに、胸の痛みのほうがずっと重い。

――こんな贖罪の日々が、まだ続くのだろうか。

霞澄は緒方廷治に電話をかけた。繋がらない。

いつだって彼から呼ばれるだけで、彼女から連絡を取る術はない。

最後に、彼の助手へ伝言を残した。

三十分後、親友の羽田絵亜が霞澄を拾い、家に連れ帰った。

傷口を丁寧に処置し終えたところで、絵亜は堪えきれず爆発する。

「ほんっとムカつく! あんたのお姉さんがいなくなって何年よ。まだそんな扱い? あれは自殺でしょ。責任って言うなら、みんなにある。なんであんただけ!」

霞澄は絵亜の手を握り、静かに首を振った。

表向きは明るく派手だった姉が、裏で重度のうつだった。

それに気づけなかった自分は、妹として失格だと思っている。

そして、出られなかったあの電話。あれもまた、喉に刺さった棘だ。

この罪は、自分で背負いたい。

説得できなかった絵亜は、はぁっと大きくため息をつく。

少し考え、霞澄の手首をぐっと掴んだ。

「もう、今夜は全部忘れよ。連れ出してやる。騒ぐ!」

絵亜は有無を言わさず霞澄を帝都最大のバーへ連れて行き、若いホストを四人も呼んだ。

霞澄は慣れない空気に落ち着かず、すぐ「トイレ」と席を外した。

鏡の前で髪を整えていると、緒方廷治から電話が鳴った。

「俺に何の用だ」

相変わらず氷みたいに硬い声。

霞澄は思わず背筋を伸ばす。

「あの……新谷明珠さんと、結婚するんですか」

沈黙のあと、嘲るような笑いが返ってきた。

「それを聞いてどうする」

どうする――。

母の望むみたいに、尊厳を捨てて「結婚しないで」と泣きつく?

できない。

結局、震える声で言った。

「……あなたが結婚するなら。私たち、終わりにできますか」

当たり前のはずなのに、廷治は大笑いでも聞いたかのようだった。

「終わり? 松本霞澄、どんな夢見てる」

身体が固まった。

結婚しても終わらせない?

私を、浮気相手のまま飼うつもり?

屈辱は底だと思っていた。けれど彼は、さらに深い穴を掘る。

「……どうしたら、放してくれるんですか」

廷治は冷笑した。

「希実を生き返らせたらな」

通話が切れる。

霞澄は鏡に映る憔悴した自分を見つめ、底なしの絶望に沈んだ。

――死にたい。

そのとき、外から聞き覚えのある声がした。

「いやぁ、ほんと冗談のつもりだったのにさ。まさかみんな本気にするなんて」

「このままだと緒方廷治が別の女と結婚しちゃうじゃん。そしたら私、完全にやらかしたことになるし」

「三年もチャンス与えたのに、あの妹ほんと使えない。男の心ひとつ掴めないんだもん」

「パパもママも最初から知ってたよ。うまく丸めてくれるって。緒方廷治? あんなに私のこと好きなんだから、ちょっと甘えればいいだけ」

「じゃ、トイレ行くから切るね」

全身が氷水に沈んだみたいに震えた。

松本希実――生きている?

最新チャプター

おすすめ 😍

仮面を脱いだ本物の令嬢に、実の兄たちは頭を垂れた

仮面を脱いだ本物の令嬢に、実の兄たちは頭を垂れた

85.4k 閲覧数 · 連載中 · 佐藤製作所
里親の母は私を虐待していたし、義理の姉は最低な女で、よく私をいじめては罪を着せていた。この場所はもう私にとって家じゃなくて、檻になって、生き地獄になっていた!
そんな時、実の両親が私を見つけて、地獄から救い出してくれた。私は彼らがすごく貧しいと思ってたけど、現実は完全にびっくりするものだった!
実の両親は億万長者で、私をすごく可愛がってくれた。私は数十億の財産を持つお姫様になった。それだけでなく、ハンサムでお金持ちのCEOが私に猛烈にアプローチしてきた。
(この小説を軽い気持ちで開くなよ。三日三晩も読み続けちゃうから…)
溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

236.2k 閲覧数 · 連載中 · 朝霧祈
原口家に取り違えられた本物のお嬢様・原田麻友は、ようやく本家の原田家に戻された。
──が、彼女は社交界に背を向け、「配信者」として自由気ままに活動を始める。
江城市の上流社会はこぞって彼女の失敗を待ち構えていた。
だが、待てど暮らせど笑い話は聞こえてこない。
代わりに、次々と大物たちが彼女の配信に押しかけてくるのだった。
「マスター、俺の命を救ってくれ!」──某財閥の若社長
「マスター、厄介な女運を断ち切って!」──人気俳優
「マスター、研究所の風水を見てほしい!」──天才科学者
そして、ひときわ怪しい声が囁く。
「……まゆ、俺の嫁だろ? ギュってさせろ。」
視聴者たち:「なんであの人だけ扱いが違うの!?」
原田麻友:「……私も知りたいわ。」
離婚当日、元夫が復縁を懇願してきた件

離婚当日、元夫が復縁を懇願してきた件

93.3k 閲覧数 · 連載中 · 鯨井
彼女は代理結婚を強いられたが、運命のいたずらか、昔から密かに想い続けていた人の妻となった。

五年間の結婚生活の末に待っていたのは、離婚と愛人契約だけだった。

お腹の子供のことは誰にも告げず、我が子を豪門の争いに巻き込まないよう、離婚後は二度と会わないと誓った。

彼は、またしても彼女の駆け引きだと思っていた。

しかし、離婚が成立した途端、彼女は跡形もなく姿を消した。

彼は狂ったように、彼女が行きそうな場所を片っ端から探し回ったが、どこにも彼女の痕跡は見つからなかった。

数年後、空港で彼は彼女と再会する。彼女の腕の中には、まるで自分を小さくしたような男の子が。

「この子は...俺の子供なのか?」震える声で彼は問いかけた。

彼女はサングラスを上げ、冷ややかな微笑みを浮かべながら、
「ふぅん、あなた誰?」
氷の君と太陽の私

氷の君と太陽の私

36.3k 閲覧数 · 完結 · 鍋部奈
裏切られ、後悔に溺れながら死んだ私は、恐れられ冷酷な婚約者が私を救おうと身を投げる姿を見た。

運命が私を引き戻した——薬を盛られた結婚初夜、彼の腕の中で生まれ変わったのだ。これは私の二度目のチャンス。

かつて逃げ出した男こそが私の運命。彼の狂おしい愛こそが、私の最強の武器。世界が恐れる男を受け入れ、彼の姫となろう。共に、私たちを破滅させた裏切り者どもを灰燼に帰すのだ。

しかし私の突然の献身は、彼に疑念を抱かせる。心を砕いてしまった男に愛を証明するには、どうすればいいのだろう……彼の最も暗い欲望が、私を永遠に縛り付けることだと知りながら。
令嬢の私、婚約破棄からやり直します

令嬢の私、婚約破棄からやり直します

90.6k 閲覧数 · 連載中 · 青凪
皆が知っていた。北野紗良は長谷川冬馬の犬のように卑しい存在で、誰もが蔑むことができる下賤な女だと。

婚約まで二年、そして結婚まで更に二年を費やした。

だが長谷川冬馬の心の中で、彼女は幼馴染の市川美咲には永遠に及ばない存在だった。

結婚式の当日、誘拐された彼女は犯される中、長谷川冬馬と市川美咲が愛を誓い合い結婚したという知らせを受け取った。

三日三晩の拷問の末、彼女の遺体は海水で腐敗していた。

そして婚約式の日に転生した彼女は、幼馴染の自傷行為に駆けつけた長谷川冬馬に一人で式に向かわされ——今度は違った。北野紗良は自分を貶めることはしない。衆人の前で婚約破棄を宣言し、爆弾発言を放った。「長谷川冬馬は性的不能です」と。

都は騒然となった。かつて彼女を見下していた長谷川冬馬は、彼女を壁に追い詰め、こう言い放った。

「北野紗良、駆け引きは止めろ」
氷の社長が溶かされていく。ストイックな彼の、灼熱の恋

氷の社長が溶かされていく。ストイックな彼の、灼熱の恋

33.6k 閲覧数 · 連載中 ·
彼女が中村良太郎の娘であるというのか。
人の行き交う喫茶店で、少女の白い顔に重い平手打ちが叩き込まれた。
真っ赤に腫れた右頬を押さえ、彼女の瞳は虚ろで、反撃する気など微塵も感じさせない。
周りの人々は、侮蔑と嘲笑の入り混じった視線を彼女に向け、嘲笑うばかりで、誰一人として彼女を庇う者はいなかった。
自業自得だからだ。
誰のせいで、彼女が中村良太郎の娘であるというのか
父、中村良太郎は建築家として、自身が設計した建物で事故が起きたため、有罪判決を受けて刑務所に入ることになった。
母も心労で入院している今となってはなおさらだ。
黒田謙志。中村奈々の現在のスポンサーであり、今朝、会社で彼女と肌を重ねたばかりの黒田家の長男。
今、彼は、自分の婚約者に跪いて謝罪しろと彼女に命じている。
社長、突然の三つ子ができました!

社長、突然の三つ子ができました!

96.2k 閲覧数 · 連載中 · キノコ屋
五年前、私は継姉に薬を盛られた。学費に迫られ、私は全てを飲み込んだ。彼の熱い息が耳元に触れ、荒い指先が腿を撫でるたび、震えるような快感が走った。

あの忌まわしい夜から逃げるように去った私だったが、ほどなくして三つ子を妊娠していることに気付く。

五年後、医療界の新星として戻ってきた私は、継母、継姉、実の父へ全ての仕返しを誓う。

その時、彼が現れた。三人の小さな自分そっくりの顔をじっと見つめながら、優しく「パパ」と呼ぶよう子供たちを誘う彼。

ふとシャツのボタンを外し、悪戯っぽく笑って言った――

「どうだい、あの夜の熱をもう一度味わってみないか?」
跡継ぎ問題に悩む御曹司様、私がお世継ぎを産んで差し上げます~十代続いた一人っ子家系に、まさかの四つ子が大誕生!~

跡継ぎ問題に悩む御曹司様、私がお世継ぎを産んで差し上げます~十代続いた一人っ子家系に、まさかの四つ子が大誕生!~

154k 閲覧数 · 連載中 · 蜜柑
六年前、藤堂光瑠は身覚えのない一夜を過ごした。夫の薄井宴は「貞操観念が足りない」と激怒し、離婚届を突きつけて家から追い出した。
それから六年後——光瑠が子どもたちを連れて帰ってきた。その中に、幼い頃の自分にそっくりの少年の顔を見た瞬間、宴はすべてを悟る。あの夜の“よこしまな男”は、まさに自分自身だったのだ!
後悔と狂喜に押し流され、クールだった社長の仮面は剥がれ落ちた。今や彼は妻の元へ戻るため、ストーカーのようにまとわりつき、「今夜こそは……」とベッドの隙間をうかがう毎日。
しかし、彼女が他人と再婚すると知った時、宴の我慢は限界を超えた。式場に殴り込み、ガシャーン!と宴の席をめちゃくちゃに破壊し、宴の手を握りしめて歯ぎしりしながら咆哮する。「おい、俺という夫が、まだ生きているっていうのに……!」
周りの人々は仰天、「ええっ?!あの薄井さんが!?」
最強ベビーと難攻不落のママ

最強ベビーと難攻不落のママ

19.5k 閲覧数 · 連載中 · 彩月遥
母親が再婚したため、田中春奈はずっと自分が家の中で異質な存在だと感じており、義父や姉との関係も良くなかった。
しかし、思いもよらない策略による一夜の過ちで、田中春奈は家を追い出され、故郷を離れて海外で学業を続けることになった。
その間、彼女はあの正体不明の男性の子を妊娠していることに気づく。
迷った末、彼女は子どもを産むことを決意した。
5年後、故郷に戻った彼女は江口匠海と出会い、次第に彼に惹かれていく。
しかし、ある事故をきっかけに、あのときの男性が彼であったことを知るのだった。
裏切られた後に億万長者に甘やかされて

裏切られた後に億万長者に甘やかされて

719.9k 閲覧数 · 連載中 · FancyZ
結婚四年目、エミリーには子供がいなかった。病院での診断が彼女の人生を地獄に突き落とした。妊娠できないだって?でも、この四年間夫はほとんど家にいなかったのに、どうやって妊娠できるというの?

エミリーと億万長者の夫との結婚は契約結婚だった。彼女は努力して夫の愛を勝ち取りたいと願っていた。しかし、夫が妊婦を連れて現れた時、彼女は絶望した。家を追い出された後、路頭に迷うエミリーを謎の億万長者が拾い上げた。彼は一体誰なのか?なぜエミリーのことを知っていたのか?そしてさらに重要なことに、エミリーは妊娠していた。
不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

565.5k 閲覧数 · 連載中 · 七海
初恋から結婚まで、片時も離れなかった私たち。
しかし結婚7年目、夫は秘書との不倫に溺れた。

私の誕生日に愛人と旅行に行き、結婚記念日にはあろうことか、私たちの寝室で彼女を抱いた夫。
心が壊れた私は、彼を騙して離婚届にサインをさせた。

「どうせ俺から離れられないだろう」
そう高をくくっていた夫の顔に、受理された離婚届を叩きつける。

「今この瞬間から、私の人生から消え失せて!」

初めて焦燥に駆られ、すがりついてくる夫。
その夜、鳴り止まない私のスマホに出たのは、新しい恋人の彼だった。

「知らないのか?」
受話器の向こうで、彼は低く笑った。
「良き元カレというのは、死人のように静かなものだよ?」

「彼女を出せ!」と激昂する元夫に、彼は冷たく言い放つ。

「それは無理だね」
私の寝顔に優しくキスを落としながら、彼は勝ち誇ったように告げた。
「彼女はクタクタになって、さっき眠ってしまったから」
離婚カウントダウン ~クズ夫の世話なんて、誰がするか!

離婚カウントダウン ~クズ夫の世話なんて、誰がするか!

12.2k 閲覧数 · 連載中 · 水瀬結
あいつらは、私がただの『無力な盲目の妻』だと思っている。……とんだ勘違いだ。

奇跡的に視力を取り戻した私が最初に目にしたもの。それは、愛人と絡み合う『献身的な夫』の姿だった。彼の『揺るぎない愛』など真っ赤な嘘。すべては私の莫大な財産を奪うための策略に過ぎなかったのだ。

今度は私が騙す番だ。証拠を徹底的に集め、彼からすべてを奪い取ってやる。

だが、私の復讐劇は予期せぬ展開を迎える。街で最も強大な権力を持ち、冷徹と噂される大富豪が現れたのだ。彼は私の秘密――目が見えていること――を知っていた。そして、悪魔のような取引を持ちかける。
『俺の個人秘書になって借金を返せ。あの夫への制裁……俺も手を貸してやろう』

愚かな夫は、盲目の私を弱者だと信じ込んでいる。だが彼は間もなく思い知ることになるだろう。
視力を取り戻した資産家の妻ほど、危険な存在はないということを。