紹介
「あと六か月よ、翔太。そうすれば拓海がやっとお父さんって呼べるようになる」
拓海。彼女が面倒を見ている男の子。灰色の瞳をした小さな子――私の婚約者と同じ色の。
三年間の交際。一年間かけた完璧な結婚式の準備。その間ずっと、長谷川翔太は私の知らないところで姉と家族を築いていた。
すべてをキャンセルすることもできる。泣いて、叫んで、被害者を演じることも。
でも私はウェディングプランナー。
私は結婚式を企画する。
そして時には、終わりも企画する。
チャプター 1
センターピースが本来の位置から一センチ強ずれて置かれていた。
個室に入った瞬間、それに気づいてしまった。八年間ウェディングプランナーをしてきたせいで、私の脳は自動的に欠点を探し出すようにできているのだ――歪んだリボン、しおれかけた花びら、一列に整列していない椅子。これはもはや呪いのようなものだ。スイッチを切ることができない。自分の結婚式前の顔合わせ食事会でさえも。
特に、自分自身のときは尚更だ。
「歩美、落ち着いて」
私のアシスタントであり親友でもある佐藤真理子が、シャンパングラスを二つ手に持って私の横に現れた。
「今夜のあなたは花嫁なのよ? 覚えてる? プランナーじゃないんだから」
「両方よ」私はシャンパンを受け取ったが、口はつけなかった。「それに、あのテーブルが――」
「一センチずれてるんでしょ。わかってる。私が直しておくから」彼女は呆れたように目を回してみせたが、その表情には愛情が込められていた。「ほら、愛の語らいでも何でもしてきなさいよ。旦那様がお待ちかねよ」
部屋の向こうを見ると、長谷川翔太が私を見つめていた。私の婚約者。ああ、その響きだけで、まだ胸が高鳴る。彼は背が高く、誰もが振り返るような自然体のハンサムさを備えている。彼が微笑むと、私は自分が世界で一番幸運な女だと感じられた。
明日、私はこの人と結婚するんだ。
翔太の方へ歩き出そうとしたその時、金色の閃光が視界を遮った。
「いたいた! 主役の花嫁さん!」
姉の玲奈だ。彼女は私を抱きしめ、香水の匂いと鋭角的な体のラインを押し付けてきた。三つ年上の姉は、いつだって美しく、いつだって注目の的だった。今夜彼女が着ている赤いドレスは、私の家賃一ヶ月分よりも高いだろう。「妹が私より先に結婚するなんて、まだ信じられないわ」
彼女の声には棘があった。いつものことだ。
「花嫁付き添い人を引き受けてくれてありがとう、玲奈」本心だった。私たちは決して仲が良かったわけではないけれど、私は努力していたのだ。
「当然じゃない、可愛い妹のためだもの。家族でしょ?」彼女は私の腕を少し強く掴みすぎたあと、ふらりとテーブルの方へ去っていった。
その背中を見送りながら、胃のあたりにお馴染みのしこりが生まれるのを感じた。子供の頃、玲奈はすべてを奪っていった。おもちゃも、服も、彼女が「もっと必要だから」という理由で私の大学の学費さえも。両親はいつだって彼女の味方だった。「あの子は苦労してるのよ、歩美。あなたは強い子でしょ」
私は古い恨みを振り払った。今夜は過去を振り返る夜じゃない。
「歩美」
年季の入った手が私の手を握った。祖母だ。おばあちゃんは私を引き寄せ、ぎゅっと抱きしめてくれた。八十三歳になっても、この部屋の誰よりも鋭い人だ。「綺麗だよ。でも、疲れているね」
「大丈夫よ、おばあちゃん」
彼女はすべてを見透かすような目つきで私を観察した。「ふむ。まあ、様子を見ていましょうかね」
顔合わせ食事会は乾杯と笑い声の中で瞬く間に過ぎていった。母は泣き、父は恥ずかしい昔話を話していた。テーブルの下で翔太の手が私の手に重なる。温かくて、力強い。すべてが完璧だった。
ほとんど、完璧だった。
細かいことが気になって仕方なかった。ワインを注ぎ足すとき、玲奈が翔太に近づきすぎていること。翔太の視線が部屋の向こうの彼女を追っていること。私がふと目を向けると、二人が慌てて視線を逸らすこと。
やめなさい。私は自分に言い聞かせた。考えすぎよ。
しかし、私は細かいことに気づくのが得意で、それでキャリアを築いてきた。何かがおかしい。
デザートの途中で、私は席を立った。喧騒とシャンパン、そして背筋を這い上がる奇妙な感覚から逃れて、一人になる時間が必要だったのだ。
廊下は静かだった。化粧室のドアを押し開け、中に入る。
その時、玲奈の声が聞こえた。
一番奥の個室からだ。乾杯の間に抜け出したに違いない。声をかけようとした瞬間、彼女の言葉に私は凍りついた。
「わかってる、わかってるわよ。私だって会いたいわ」間があり、くすくすという笑い声。「もちろん気をつけてるわよ。あの子、何も疑ってないもの」
ドアにかけた私の手が止まった。
「明日は完璧な日になるわ。そう、私たちにとってはね」玲奈が声を潜めて、艶めかしく笑う。「結婚式が終われば、すべてが変わる。彼がそう約束してくれたの」
立ち去るべきだった。何も聞かなかったふりをして出て行くべきだった。だが、足が動かなかった。
「半年よ。彼、そう言ったわ。半年間幸せな夫婦を演じて、それから離婚届を出すって」彼女の声のトーンが落ち、愛おしむような響きを帯びる。「そうすれば、やっと一緒になれる。今度こそ、本当に」
彼? 彼って誰?
心臓が早鐘を打ち、その音が耳の中で鳴り響いていた。
「歩美のことなら心配ないわ。あの子、鈍感だから。正直、あそこまで彼を信用してるなんて哀れなくらいよ」玲奈の声色が変わり、冷ややかなものになる。「でも、それはあの子の問題でしょ。あの子はずっと世間知らずだったもの」
胸の中に冷たいものが広がっていった。
「もう行かなくちゃ。食事会ももうすぐ終わるし……ほら、妹を祝ってあげないと」彼女はまた笑った。「わかってる。私も愛してるわ。拓海にチューしといて」
拓海。
玲奈が里親として預かっている子供。昨年彼女のもとに来た三歳の男の子。時々家族の食事会に連れてくる子だ。黒髪と灰色の瞳を持ち、その笑顔が見覚えのある――誰かに似ていると思いながらも思い出せなかった――あの子。
灰色の瞳。翔太とまったく同じ。
玲奈の声が、猫が喉を鳴らすような甘い響きに変わる。「半年よ、あと半年で、やっと拓海も翔太をお父さんって呼べるようになるわ」
私は息をするのを忘れた。
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四兄:「どうしてこんなにつまらない脚本しか上がってこない?」――彼女がもう執筆しないからだ。
五兄:「この義肢は、なぜこんなに出来が悪いんだ?」――彼女が製作をやめたからだ。
六兄:「なぜチームが負けた?」――彼女が脱退したからだ。
兄たちは地に膝をついて許しを請うた。「戻ってきてくれ。俺たちこそが、血を分けた本当の家族じゃないか」
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