結婚7年目、夫は私の声にアレルギーがあるみたい

結婚7年目、夫は私の声にアレルギーがあるみたい

渡り雨 · 完結 · 17.0k 文字

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紹介

結婚7年目、私は夫の前で声を出すのが怖い。

ただ、夫が他の誰の声でも聞けるのに、私の声にだけアレルギーがあるからだ。

声を変えるためなら、あらゆる方法を試した。声帯の手術まで受けた。

でも、私がどれだけ努力しても、彼は苦しそうに耳を塞ぐだけだった。

何度も心が張り裂け、彼に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。

そんな日々が続いていた、息子の誕生日までは。

あの日、家の玄関で、息子が笑いながらこう言ったのだ。

「ねぇ、パパ。僕もパパみたいに、声アレルギーのフリをしてもいい?」

チャプター 1

 結婚して七年、私は夫の前で言葉を発したことが一度もない。

 なぜなら、私の夫はあらゆる人間の声を聞き分けられるというのに、私の声だけを聞くと激しい頭痛に襲われるからだ。

 医師はこれを稀有な聴覚過敏症だと診断し、不治の病だと告げた。

 どうにかして声質を変えようと、私はあらゆる手段を講じた。声帯の手術さえ受けたほどだ。

 だが、どれほど足掻こうとも、私が口を開けば彼は耳を塞ぎ、苦悶の表情で顔を歪めるばかりだった。

 申し訳なさで胸が張り裂けそうになり、私は幾度となく泣き崩れた。

 車に跳ね飛ばされ、全身に激痛が走ったあの時でさえ、私は唇を噛み締め、うめき声一つ漏らさなかったのだ。

 今日は息子の川森そらの誕生日だ。そらと夫の川森寛貴がドアを開ける音が聞こえ、私はケーキを手にキッチンの影に身を潜めた。驚かせようと思ったのだ。

 二人が玄関に入った、その直後だった。

 そらが寛貴の耳から補聴器を乱暴に引き抜き、地面に叩きつけたのだ。

「ねえパパ、僕もパパみたいに『声アレルギー』のふりしていい?」

 息子の声は、残酷なほど澄み渡っていた。

「そうすれば美恵子ママとは話せるし、あの鬱陶しいのと話さなくて済むじゃん」

 私は手にしたケーキを取り落としそうになった。

 寛貴は優しく諭すような口調で言った。

「万が一、ママにバレたらどうするんだ。高校に上がるまで、あと数年は我慢しなさい。その時になって、『急に僕も声がダメになった』と言えばいい」

「まさか。あいつ、頭悪いもん。僕が仮病だなんて気づくわけないよ」

 息子は悪びれもせず、屈託のない笑い声を上げた。

「まあ、それもそうか。うまくやるんだぞ」と寛貴が渋々認める。

 心臓を素手で鷲掴みにされたような衝撃だった。

 この数年、寛貴の「体質」が遺伝することを恐れ、私は毎年息子を聴力検査に連れて行っていたのだ。

 医師が「正常です」と言うたびに、人知れず安堵していた。

 今にして思えば──真の愚か者は、私だったということだ。

 二人が部屋に姿を消した後、私は床に転がっていた「補聴器」を拾い上げ、自分の耳に押し込んだ。

 軽快なポップソングが流れてくる。

 耳障りなほど、クリアな音質で。

 私は、底なしの絶望を味わった。

 その夜、予約していたレストランでの食事中。

 息子が突然、頭を押さえる仕草を見せた。

「ママ、なんだか耳が痛いよ。病院に連れて行ってくれない?」

 真実を知った今、白々しい手話を使う気にはなれなかった。

 私は寛貴の前で、七年目にして初めて口を開いた。

「わかったわ」

 喉から絞り出したその声は、砂利のようにひどくしゃがれていて、自分でも他人のもののように感じられた。

 息子は眉をひそめた。私の反応があまりに淡白で、気に入らないらしい。

 真実を知らなければ、私は今頃泣き叫んで息子を抱きかかえ、病院へ走っていただろう。

 だが今は、ただ吐き気がするだけだ。

「ママ、どうして喋るのさ!」

 息子が声を荒らげる。

「パパがまた頭痛くなっちゃうだろ? 空気読んでよ。それにさ、すっごく変な声だって自覚ある?」

 彼は一呼吸置き、さらに不満を募らせた。

「それに今のママ、僕のこと全然心配してないじゃん。以前は僕の耳や体のこと、あんなに心配するふりしてたくせに。全部嘘だったんだ! ママのせいでご飯が不味くなったよ」

 私は息子を見つめた。今日という日に、ようやくこの子の本性を見た気がする。

「私の声が聞き苦しいのは、あなたのパパに合わせるためだったのよ。それに、病院ならお祝いが終わった後にパパが連れて行ってくれるわ。私は忙しいから」

 全ては、川森寛貴が私の声に過敏だからだ。

 私は声を押し殺し、日々自分を律してきた。

 寛貴が頭痛に苦しむ姿を見るだけで胸が痛み、一時は自責の念から声帯切除さえ本気で考えたほどだ。

 大学時代、合唱部の部員として歌っていた私が、今ではこんな無様な声しか出せない。

 寛貴が弾かれたように顔を上げ、苦悶の表情で耳を塞いだ。

 額に手を当て、呻くように言う。

「すまない……君の声を聞くと、また発作が……。全部僕が悪いんだ、君をこんなに不快にさせてしまって。でも、そらも僕の病気が遺伝したのかもしれない。もし将来、あいつも僕と同じようになったとしても、どうか怒らないでやってほしい」

 息子はその言葉に感動したかのように、寛貴の腕にすがりついた。

「パパ、僕のためにかばってくれてありがとう……」

 父子によるこの茶番劇を眺めながら、私はふと、乾いた笑いが込み上げてくるのを感じた。

「怒ったりしないわ」

 私は淡々と言い放つ。

「ただ、結婚して七年経っても私の声に慣れないのなら、私たちは元々不釣り合いだったのよ」

「だから、もう終わりにしましょう。離婚よ」

 川森寛貴は呆気にとられていたが、息子の川森そらは違った。突然、狂喜乱舞して手足をバタつかせたのだ。

「パパ! このいいニュース、すぐに美恵子ママに教えようよ! きっと喜ぶって!」

 その時だった。

 義理の妹である山田美恵子が、プレゼントを手に歩み寄ってきたのは。

 川森そらは衝動を抑えきれず、彼女に飛びついた。

「ママ!」

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