あなたが見えない
348 閲覧数 · 完結 · 大宮西幸
私には色が見えない。
赤も緑も、ただ濁った灰茶色にしか見えない。美術学校では、それは永遠に「壊れた人間」の烙印を押されることを意味した。
高田真琴――十五年間、養兄として、守護者として寄り添ってくれた彼は、この世界のすべての色を見ている。
私が黒と白と灰色の牢に閉じ込められている間も。
……あの展示会の夜、彼が彼女といるのを見てしまうまでは。
絵美さん。Ⅼ市から来た建築家。
『コバルトブルーからウルトラマリンへの移ろい』について語る彼女に、真琴の瞳が輝いた。
あの光――私は一度も、彼の目にあんな輝きを灯したことがない。
その瞬間、悟ってしまった。
こんなふうに壊れてしまった自分が、どうして彼の隣に立てるだろう。
だから、誰にも言わずN市の仕事に応募した。
彼が選ばなければならない前に、消えてしまおうと。
……けれど、彼は私の隠し事を見つけてしまった。
「ずっと、出て行くつもり...
赤も緑も、ただ濁った灰茶色にしか見えない。美術学校では、それは永遠に「壊れた人間」の烙印を押されることを意味した。
高田真琴――十五年間、養兄として、守護者として寄り添ってくれた彼は、この世界のすべての色を見ている。
私が黒と白と灰色の牢に閉じ込められている間も。
……あの展示会の夜、彼が彼女といるのを見てしまうまでは。
絵美さん。Ⅼ市から来た建築家。
『コバルトブルーからウルトラマリンへの移ろい』について語る彼女に、真琴の瞳が輝いた。
あの光――私は一度も、彼の目にあんな輝きを灯したことがない。
その瞬間、悟ってしまった。
こんなふうに壊れてしまった自分が、どうして彼の隣に立てるだろう。
だから、誰にも言わずN市の仕事に応募した。
彼が選ばなければならない前に、消えてしまおうと。
……けれど、彼は私の隠し事を見つけてしまった。
「ずっと、出て行くつもり...




