俺様社長とその婚約者——すれ違う愛

俺様社長とその婚約者——すれ違う愛

紗良益子 · 連載中 · 796.6k 文字

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私のバレエダンサーとしてのキャリアが崖っぷちに立たされていたその日、婚約者は別の女と一緒に産婦人科で妊婦健診を受けていた。

問い詰めても、彼は何も答えようとしない。私は決意した——こんな馬鹿げた婚約など、破棄してしまおうと。

その後、私は一千万円を投じて、彼にそっくりな若い男を囲った。

やがて事態は思わぬ方向へと転がり始める。元婚約者との間には、何か重大な誤解が横たわっているようだった。けれど、それが運命のすれ違いなのか、それとも世界が仕組んだ悪戯なのか——私たちはもう、二度と交わることのない道を歩み始めていた。

チャプター 1

「お嬢さん、あなたの外傷性関節炎は極めて深刻です。三ヶ月以内にすべてのダンスレッスンを中止しなければなりません。さもなければ、将来の生活は車椅子に頼ることになる可能性が非常に高いでしょう……」

その瞬間、魂が体から引き抜かれたような感覚に襲われ、私はその場に崩れ落ちそうになった。

バレエを踊り続けて二十年。ようやく国内トップのバレエ団でプリンシパルの座を勝ち取り、国際コンクールへの出場権を手にしたというのに、医師から無情にも「死刑宣告」を下されたのだ。

恐怖と絶望を必死に堪え、私は病院の入り口で婚約者の立花謙一に電話をかけた。

しかし、受話器の向こうから聞こえてきたのは、別の女性の声だった。

『小林さん、私のトウシューズが壊れちゃって。謙一が今、直してくれているの。何か用事なら伝えておくわよ』

周防春香だ。立花謙一の初恋の相手。

心臓が不意に引き裂かれ、全身に痛みが走る。

以前、私が買い物の際に二足のトウシューズを立花謙一に見てもらおうとしたとき、彼は「忙しい」と言って断った。

それなのに今、彼はわざわざ周防春香のために、その手で靴を直しているというのか。

少しの間をおいて、私は震える声を必死に抑え、淡々と言った。

「謙一に代わって」

周防春香はゆったりとした口調で答える。

「小林紗夜、今夜謙一が褒めてくれたのよ。私の踊る姿は、あなたがプリンシパルとして踊ったオープニングよりもずっと輝いているって」

「彼の心にいるのはあなたじゃない。どうしていつまでも彼を独占しようとするの?」

私は唇を強く噛みしめ、弱気を見せないように踏ん張った。

「あなたには関係ないわ。立花謙一に代わって」

周防春香は冷ややかに鼻で笑った。

「強がりね。いつまで持つかしら!」

私は相手にしなかった。

次の瞬間、電話口から立花謙一の声が聞こえてきた。

「こんな時間に練習もしないで、何の用だ?」

私はスマートフォンを握りしめ、震えを止められぬまま言った。

「謙一、今夜帰ってきてくれない? どうしても話したい大事なことがあるの」

「小林紗夜、俺たちはまだ結婚していない。お前に俺の予定を決める資格があるのか?」

立花謙一の声は冷淡だった。

その冷たさが鼓膜を激しく打ちつける。私は呼吸を殺し、懇願した。

「決めてなんかいないわ。ただ今夜だけ、帰ってきてほしいの。お願い」

「だめだ」

彼は躊躇なく拒絶し、冷たい声で警告した。

「俺は独りよがりな女は嫌いだ。俺の忍耐を試すな」

容赦のない口調が、私を深く突き刺す。

私は堪えきれず、思わず問い詰めた。

「私たちの婚約はもう公表されているのよ。誰もが私があなたに嫁ぐことを知っているのに、まだ周防春香と関係を続けて、両家を笑い者にするつもりなの?」

立花謙一は嘲るように言った。

「この結婚、やめてもいいんだぞ」

心が一瞬にして奈落の底へと落ちていく。

大学時代から付き合い始め、互いに支え合い、十年という月日を重ねてきた。

私は自分の最も美しい青春と、最も純粋な感情をすべて彼に捧げた。彼も私と同じようにこの愛を大切にしてくれていると思っていたのに、返ってきたのは心臓を抉るような言葉だった。

そうか。結婚を待ち望んでいたのは、私だけだったのか。

「わかったわ。やめましょう」

電話の向こうが急に静まり返った。

背筋に音もなく寒気が走る。

「ずっと俺にそう言わせるのを待っていたのか? あの佐川とかいう男の胸に、心置きなく飛び込むために」

立花謙一の声は皮肉に満ちていた。

私は胸が締め付けられる思いだった。

彼が言っているのは、海外のバレエ団の団長のことだ。一年前、海外公演に行った際、私は食事会に連れ出されて酒を強要され、あわや佐川団長の毒牙にかかるところだった。

その出来事は私に深いトラウマを残している。

彼はそれを知っているはずなのに、あえてその傷をえぐってくるのだ。

「でたらめを……」

歯を食いしばって反論しようとしたが、彼に遮られた。

「でたらめかどうかは、お前自身がよくわかっているはずだ。だが小林紗夜、覚えておけ。婚約破棄はお前から言い出したんだ。祖父の前で泣きついて、俺が悪者になるような真似はするなよ」

「それから、俺は誰かに借りを作るのが嫌いだ。どちらが悪いかは別として、お前は俺と付き合ったんだ。別れるにしても、手切れ金はきっちり払ってやる」

私が何か言う隙も与えず、電話は一方的に切られた。

もう耐えられなかった。私は声を上げて泣いた。

神様はなんて残酷なのだろう。

同じ日に、人生で最も愛した二つのものを奪うなんて。

この痛みは、意識が鮮明であればあるほど辛い。

私はバーへ行き、酒に溺れるしかなかった。

幼い頃から私は規律を守り、両親の期待通りに生きてきた。

立花謙一と出会ってからも、彼や彼の家に迷惑をかけないよう、細心の注意を払ってきた。

泥酔するのは、これが初めてだった。

喉から胸へと広がる焼けるような感覚。

確かに少しは楽になった気がする。

だが、視界はどんどんぼやけていく。

「お嬢ちゃん、酒ってのはそうやって飲むもんじゃないよ。ほら、お兄さんが飲ませてあげるから。そのほうが美味いぞ」

シャツのボタンを開け、下卑た笑みを浮かべた男が近づいてきて、自分が口をつけたグラスを私の唇に押し付けてきた。

「失せなさいよ、近寄らないで」

吐き気がして、私は男を突き飛ばそうとした。

男は強引に私の顎を掴み、無理やり酒を流し込んでくる。

冷たい液体が首を伝って胸元に染み込み、あまりの冷たさに身震いした。

「放して!」

必死に抵抗し、逃げようとする。

しかし、男にカウンターへと叩きつけられた。

揉み合いの中で襟元が破れ、白くなめらかな肌が露わになる。

男の目が瞬時にギラついた。

「いい体してやがる。お兄さんが満足させてやるよ」

飢えた狼のように男が覆いかぶさってくる。

私は恐怖で身動きが取れなくなった。

だが次の瞬間、男は私の頭上を越えて吹き飛んでいった。

カウンターのシャンパングラスをなぎ倒し、床に激しく叩きつけられる。

何が起きたのか理解する間もなく、私は強い力で誰かの胸に抱き寄せられた。

「小林紗夜、どれだけ飢えてるんだ? こんなところで男を漁るなんて!」

意識が遠のき始め、私を罵倒しているのが誰なのかよく見えなかった。

ただ、反射的に弁解する。

「違うの、あの人が乱暴しようとして……」

突然、足が宙に浮いた。

抱き上げられたのだと気づく。

その人は何か言っていたけれど、一言も聞き取れなかった。

朦朧とする中、ベッドに寝かされた感覚があった。

体が寒い。

私は温かい手を掴み、自分の胸元に強く押し当てて抱きしめた。

「行かないで、寒いの」

その人は一瞬固まったようだったが、無理やり私の瞼をこじ開けた。

「小林紗夜、俺が誰かよく見ろ」

冷たい風が目に染みて痛い。私は慌てて顔を背け、彼の首筋に顔を埋めた。

「苦しいの。頭も痛いし、胸も痛い。そばにいて、お願い」

その人は拒絶し、私を強く引き剥がそうとする。

「放せ!」

ふと、立花謙一の匂いがした。

感情の堤防が決壊した。

「立花謙一の馬鹿野郎、初恋の人とよりを戻したのよ。悔しい。私の初恋は彼だったのに、彼みたいに初恋の人と復縁なんてできない……」

錯覚かもしれないけれど、相手から立花謙一の匂いがする気がした。

「あなたが私の初恋になってよ」

「あいつらは私を捨てたけど、あなたは私を必要としてくれる?」

相手が黙り込んでいるのを見て、私は悲しみと怒りが入り混じった。

立花謙一に捨てられたのは仕方ないとしても、この身代わりまで私を拒むなんて!

私は意を決して相手の首に腕を絡ませ、そのまま唇を重ねた。

何度か口づけを交わすと、相手は私の首の後ろを掴み、受け身から攻勢へと転じ、身を翻して私をベッドに押し倒した。

「小林紗夜、これはお前が望んだことだぞ」

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「名門の継母なんてそう簡単になれるものじゃないわ。一ヶ月後には家から追い出されるに違いないわ!」

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