不倫夫を捨て、私は大富豪の妻になる

不倫夫を捨て、私は大富豪の妻になる

七海 · 連載中 · 742.5k 文字

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紹介

人生最良の日になるはずだった、結婚式当日。
新郎の車から出てきたのは、見知らぬ女の派手なレースの下着だった。

しかも、その布切れにはまだ。生々しい情事の痕跡が残されていた。

吐き気がするほどの裏切り。
幸せの絶頂から地獄へと突き落とされた私。

けれど、泣き寝入りなんてしてやらない。
私はその場でウェディングドレスの裾を翻し、決意した。

「こんな汚らわしい男は捨ててやる」

私が選んだ次の相手は、彼など足元にも及ばない世界的な億万長者で?

チャプター 1

第1章

新婚の当日、彼女は八年間愛し続けた恋人の裏切りを知った。

藤咲花音は静かに新居の寝室に座っていた。

本来なら結婚式の主役であるはずなのに、外の喧騒はまるで他人事のように遠く感じられる。

今朝早く、彼女は夫となったばかりの男の車の中に、一枚のレースのブラジャーを見つけた。そこには、不審な白濁した液体がこびりついていたのだ。

彼女はあえて推測することを恐れ、一日中、ただ彼の説明を待ち続けていた。

どれほどの時間が過ぎただろうか。外の騒がしさがようやく引いていく。

酒の臭いを漂わせ、桐島翔太がドアを押し開けて入ってきた。

オーダーメイドのスーツが高身長の彼をより引き立てている。丁寧にセットされた髪は一日中動き回ったせいで少し乱れていたが、それがかえって彼の意気揚々とした様子を際立たせていた。

「花音」

ベッドに座り、ウェディングドレスを身にまとったままの藤咲花音を見て、桐島翔太の黒い瞳が輝く。彼は歩み寄り、申し訳なさそうに彼女を抱きしめた。

「あいつら、本当に騒がしくて参ったよ。待たせてごめん」

「残りの時間は、すべて僕たちのものだ」

そう言うと、彼は視線を落とし、熱っぽい眼差しで藤咲花音の紅潮した唇を見つめ、覆いかぶさるようにキスをしようとした。

唇が触れ合う寸前、藤咲花音は顔を背けた。

桐島翔太のキスは彼女の頬をかすめる。男は不可解そうに眉をひそめた。

「私に何か言うことはないの?」

藤咲花音の声は淡々としていた。

桐島翔太は一瞬呆気にとられたが、数秒後、ゆっくりと笑みを浮かべた。

「愛してるってこと? そんなの言うまでもないだろう。この数年、俺がどれだけお前を想ってきたか、まだ分からないのか?」

藤咲花音は失望に目を伏せた。

桐島翔太は彼女がそれで満足したと思い込み、甘い言葉を囁き続けながら、その掌を彼女のドレスの裾から滑り込ませ、欲望も露わに奥へと探ろうとする。

藤咲花音は手を上げ、彼の手首を押さえた。

長年待ち続け、ようやく彼女を手に入れられるというのに、腕の中の藤咲花音は何度も身をかわす。桐島翔太は不満を募らせた。

「またかよ、どうしたんだ?」

藤咲花音は目の前の男を見つめた。

八年もの間愛し合ったはずのその顔が、急に他人のように見知らぬものに感じられる。

「お酒の臭いがきつすぎるわ。私、嫌いなの。シャワーを浴びてきて」

桐島翔太の瞳の不満は溺愛の色へと変わった。彼は彼女の顔を包み込み、軽くキスをする。

「なんだ、そんなことで機嫌を損ねてたのか。すぐに洗ってくるから、待っててくれよ!」

藤咲花音は無理やり笑みを作り、彼が浴室へと入っていくのを見送った。

あのブラジャーのこと、桐島翔太は結局、自ら言い出すことはなかった。

浴室から水音が聞こえてくる。

藤咲花音の脳裏に、二人の過去が走馬灯のように浮かんだ。

彼女の家は平凡だが、桐島翔太は選ばれしエリートだ。

最初はただの遊びだと思っていた。しかし桐島翔太のアプローチは三年も続き、彼女のためなら何でもした。

付き合い始めてからも、彼は彼女を掌中の珠のように大切にし、世界中に愛を叫ばんばかりだった。

丸八年、桐島翔太は彼女に対してきつい言葉一つ言ったことがない。

彼ほど優秀な人間が自分に何を求めているのか分からず、ただ愛されているからだと信じるしかなかった。

あれほど愛してくれた桐島翔太が、浮気などするだろうか?

藤咲花音は信じたくなかった。心の中で必死に言い訳を探す。あのブラジャーは自分へのプレゼントで、うっかり忘れていただけかもしれない、と。

ハンガーから服が落ちる音で、彼女の思考は中断された。

桐島翔太が先ほど慌てて掛けた上着が、滑り落ちたのだ。

藤咲花音は立ち上がり、それを拾いに行く。

スーツを持ち上げた瞬間、ポケットから一本の口紅が転がり落ちた。

藤咲花音は凍りついた。スーツを握る指に力がこもる。

深呼吸をして、床に落ちた口紅を拾い上げ、キャップを開けてみる。使用済みの痕跡があった。

このスーツは今日の結婚式のために桐島翔太が特注したもので、今日初めて袖を通したものだ。

つまり……この口紅は、今日入れられたということになる。

心臓を鷲掴みにされたような痛みが走り、目の前が眩む。先ほど必死に築き上げた自己防衛の慰めが、音を立てて崩れ去った。

数秒後、ようやく我に返った彼女は、震える手で口紅を元の場所に戻した。

桐島翔太が浴室から出てきたとき、彼女はすでにベッドに横たわっていた。

「花音?」

藤咲花音は反応しない。

桐島翔太は彼女がここ数日、結婚式の準備で疲れていたのを見ていたため、仕方なさそうに溜息をついた。

「待っててくれって言ったのに」

桐島翔太は一言不満を漏らしたが、彼女を起こすのは忍びなかった。

彼は携帯に届いたメッセージを一瞥し、瞳の奥に葛藤を滲ませたが、結局上着を手に取り、忍び足で部屋を出て行った。

ドアが開閉する音が聞こえ、藤咲花音は目を開けた。その瞳は冴え渡っていた。

数秒待ち、彼女は起き上がって後を追った。

廊下に出ると、一人の女が桐島翔太に絡みつきながら、廊下の突き当たりにある客室へと入っていくのが見えた。

その部屋の主は、桐島翔太と共に育った幼馴染であり、如月家の令嬢、如月奈々だ。

如月奈々はずっと桐島翔太に執着していたが、桐島翔太はあくまで妹として接していると説明していた。藤咲花音は彼を信じていたし、心にわだかまりはあっても、口に出したことはなかった。

まさか、こんなことになっているとは……。

藤咲花音はドアの隙間から、如月奈々が背伸びをして桐島翔太にキスしようとするのを見た。桐島翔太は容赦なく如月奈々を突き放し、警告を含んだ声で言った。

「今日は俺の新婚初夜だ。大人しくしていろ、さもないと……」

如月奈々は少し悔しそうに言った。

「翔太兄さん、今日の控室ではあんなに情熱的だったじゃない。時間が足りなかったからって……」

桐島翔太の冷ややかな視線に言葉を飲み込み、彼女は挑発するように手を動かしながら、従順に床に跪き、胸の谷間を晒した。

「奥さんってひどいのね、新婚の夜に旦那様を追い出すなんて。ずっと我慢してたんでしょう? 私がしてあげる……」

桐島翔太は床で媚態を晒して誘惑する女を、軽蔑の眼差しで見下ろした。

ただ余計なことを言うなと釘を刺し、ついでに欲望を鎮めようと思っただけだったが、如月奈々がこれほど大胆だとは予想外だった。

今まさに新居で眠っている愛しい妻を思い、桐島翔太は表情を凍らせる。

拒絶の言葉が喉まで出かかったが、如月奈々はすでにファスナーを下ろし、慣れた手つきで彼自身を口に含んでいた。

彼女はどうすれば彼が喜ぶかを知り尽くしていた。刺激と快楽が広がり、桐島翔太の喉仏が動く。理性が情欲に飲み込まれていく。

結局、彼は自身の欲望に屈することを選んだ。

目を閉じ、今まさにフェラチオをしている相手を藤咲花音だと妄想する。まるで自分自身を慰めるかのように――。

ただ道具を使って欲望を処理しているだけだ、心から愛しているのは妻だけだ、と。

卑猥で激しい水音が響く。藤咲花音からは桐島翔太の顔は見えないが、如月奈々が男の股間で陶酔したように頭を上下させている姿と、桐島翔太が女の髪を乱暴に掴み、腰を突き上げる動作が見えた。彼は快楽に満ちた低い唸り声を上げている。

怒り、嫌悪、そして吐き気!

今にも嘔吐しそうになるのをこらえ、藤咲花音は踵を返してその場を離れた。

部屋に戻る道のりは、今までになく足取りが重かった。

八年間の交際、三千日近い日々の中で、彼女の知らない間に桐島翔太は何度裏切っていたのだろう? 何度寝たのか、いつから始まったのか?

過去の甘い記憶が脳裏に浮かぶ。かつて幸福だと感じた瞬間さえ、今となっては疑念しか残らない。

桐島翔太が彼女を家に送った後、なかなか帰ろうとしなかったのは、その後で如月奈々に会いに行っていたからなのか?

病気の時に献身的に看病してくれたのも、別の女で練習した成果だったのか?

……。

彼女はあまりに純粋すぎた。桐島翔太が紡ぎ出す純愛と深情けに溺れ、「君を尊重するから婚前交渉はしない」という言葉を信じ、彼が男であることを忘れていたのだ。

男が、情欲を我慢できるはずがない。

口先でどれほど忠誠を誓おうと、身体は正直なのだ。

八年間彼女を愛した桐島翔太は浮気をしていた。今かもしれないし、もっと前からかもしれない。

藤咲花音はついにこの吐き気を催す現実を受け入れた。いつの間にか涙が頬を伝い、視界が滲む。

自分の部屋に戻ったつもりで、藤咲花音は疲労困憊のままドアを開けた。

次の瞬間、彼女の手首が熱を帯びた大きな手に掴まれた。

反応する間もなく、身体ごと男の硬く熱い胸板に押し付けられる。強烈な男性ホルモンの香りが鼻腔を満たした。

部屋を間違えた?!

藤咲花音に残されたわずかな理性が、遅れて事態を認識させる。

「んっ……」

顔を上げて説明しようとしたが、もう遅かった。男の熱い唇が重なり、彼女の言葉をすべて封じ込めた。

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