紹介
それからの毎日は、想像をはるかに超える波乱万丈なものだった。
「社長、奥様が校長を殴ってしまいました」
「……奥さんの手は大丈夫?」
チャプター 1
「藍原華月、もう少し自然に。そう、その姿勢をキープして」
藍原華月はオフホワイトのブライズメイドドレスを身に纏い、廊下でカメラマンの指示に従ってポーズを取り続けていた。動くたびに、スカートの裾にあしらわれた繊細なレースがふわりと揺れる。
生徒会の親友に頼まれ、急遽ウェディングドレス姿のモデル役として駆り出されたのだ。
藍原華月が角度を調整したその時、背後のドアが「バンッ」と激しい音を立てて開いた。
振り返る間もなく、抗いがたい力で手首を掴まれる。世界が回転したかと思うと、彼女はすでに誰かの肩に担ぎ上げられていた。
「悪くない」
頭上から低い男の声が降ってくる。少し気だるげで、ハスキーな響きだ。
「今日は群がる女どもの相手をする気がないと知っていて、こんな花嫁の誘惑まで用意するとはな」
藍原華月は混乱した。必死に顔を上げても、見えるのは男の鋭利な顎のラインと、口元に浮かぶ邪悪で魅惑的な笑みだけだ。
「誰よ! 降ろして!」
藍原華月は男の体から逃れようと暴れる。
だが男は彼女を無視し、落ち着いた足取りで廊下の突き当たりにあるスイートルームへと入っていった。
ドアが背手で乱暴に閉められた瞬間、藍原華月は大きなベッドに放り投げられた。
慌てて身を起こし、ようやく目の前の人物をはっきりと捉える。
透き通るような白い肌、冷ややかな光沢を帯びた漆黒のショートヘア。その瞳は深い泉のように幽玄で、見る者を引きずり込むようだ。
男は熱に浮かされたようにシャツのボタンを二つ外し、くっきりとした鎖骨を露わにする。その瞳はまるで火が灯ったように深く、灼けつくような侵略性を帯びていた。
欲望に満ちたその視線に、藍原華月は完全にパニックに陥った。
風祭鈴奈はスポンサーのことを、五十代の脂ぎったバーコード頭の中年親父だと言っていたはずだ。古狸のセクハラ親父だから近づくなと。
しかし目の前の男は、顔立ちもスタイルも芸能界のトップスター並みだ。どう見ても「脂ぎった親父」とは結びつかない。
それに、これは台本にある展開でもない。
一体どうなっているの?
「あなた……」
藍原華月が誰なのか問い詰めようとした瞬間、男はすでに覆いかぶさっていた。強烈なフェロモンが瞬く間に彼女を包み込む。
「んっ……」
男のキスは拒絶を許さない侵略的なもので、本能的な渇望を帯びていた。彼女の言葉はすべて封じ込められる。
ドレスが引き裂かれる音が響き、藍原華月の心臓が激しく跳ねた。すぐに彼を突き飛ばそうとするが、彼女の力など男の前では無に等しい。身につけていたものは瞬く間に剥ぎ取られてしまった。
男は彼女の抵抗や泣き叫ぶ声など意に介さず、両足の間に割り込むと、腰を沈め、乱暴に彼女の体へと侵入した。
引き裂かれるような痛みに、藍原華月の目から涙が溢れ出す。男の肩を力一杯叩くが、その抵抗はむしろ彼にとっての起爆剤となり、さらに興奮を煽るだけだった。
やがて、裸で絡み合う二人の影が床の窓に映し出される。
碧井天川は欲情に染まった目で、目の前で揺れる豊かな胸を見つめ、ひたすらに抽送を繰り返した。一突きごとに女を貫こうとするかのように。
単調な体位では満足できず、碧井天川は藍原華月を裏返し、ベッドに這いつくばらせて背後から再び突き入れた。
藍原華月の秘所は満たされ、男の抽送によって愛液が溢れ出し、嬌声と男の荒い息遣いが交互に響く。
絶頂の収縮で肉棒が締め付けられると、碧井天川の腰に強烈な痺れが走った。次の瞬間、彼は堪えきれずにスパートをかけ、最奥まで激しく突き入れ、ついに欲望を解き放った。
その夜、藍原華月はどれほど弄ばれたか分からない。二人が疲れ果てて昏睡するように眠りに落ちるまで、それは続いた。
どれくらいの時間が経っただろうか。藍原華月はようやく目を覚ました。
部屋は薄暗く、空気には情事の後の退廃的な匂いが漂っている。
体を動かそうとすると全身が痛み、特に秘所の不快感に目頭が熱くなった。
視線を下に移し、彼女は息を呑んだ。
ブライズメイドドレスは無惨にも引き裂かれ、床に散乱している。ダイヤモンドと真珠が散らばっていた。
この特注のドレスは、風祭鈴奈が高額でレンタルしたものだ。こんな状態にしてしまって、どうやって弁償すればいいの?
怒りが瞬時に込み上げ、藍原華月は隣でまだ眠っている男を睨みつけた。
今の彼は先ほどの邪悪さや侵略性を消し去り、まるで玉の彫刻のように静かに横たわっている。
だが藍原華月は、彼がどれほど乱暴に自分を扱ったか忘れてはいなかった!
「ちょっと! 起きてよ!」
碧井天川はゆっくりと目を開けた。視線が藍原華月の体についたキスマークをなぞり、口元に邪悪な笑みを浮かべる。
「なんだ、まだ食い足りないのか? もう一回やりたいのか?」
その言葉に藍原華月の顔は真っ赤になった。彼女は歯を食いしばり、床のドレスを指差す。
「あなたがやったことを見てよ! このドレス、四十万もするのよ。絶対に弁償して!」
碧井天川は無惨なドレスの残骸に目をやり、ゆったりと身を起こすと、ジャケットから財布を取り出し、金を藍原華月の手に押し付けた。
数枚の紙幣と小銭。目測でも一万を超えない。
藍原華月はその小銭を見て、怒りで震えた。
「乞食に恵んでるつもり? このドレスは四十万だって言ってるでしょ!」
碧井天川は怒りで頬を染める彼女を見つめ、意味深な口調で言った。
「ドレスが四十万。それに……見たところ初めてだったようだな? それに追加で二十万、合計六十万だ」
彼は言葉を切り、玩ぶような視線を向けた。
「今、手持ちの現金が足りないんだ。それとも……体で払うか?」
そう言いながら、男は彼女を押し倒そうとする。
彼女の味は、彼を夢中にさせた。
昨晩の接待で薬を盛られ、小林が適当な女をあてがったのだと思っていたが、まさかこれほど彼女の体に溺れるとは思わなかった。
「恥知らず!」
藍原華月は怒りで全身を震わせ、ベッドの上の金を掴んで彼の顔に投げつけた。
視線が、男がサイドテーブルに置いた財布に止まる。
彼女は財布を奪い取ると、中に入っていたすべてのキャッシュカードやクレジットカードを抜き出し、自分のポケットに突っ込んだ。
男は彼女の一連の流れるような動作を見て、眉を上げたが止めはしなかった。ただ面白そうに彼女を見つめている。
藍原華月は彼のジャケットを羽織ると、財布からしわくちゃの千円札を二枚抜き出し、「パンッ」と男の胸に叩きつけた。
「これはバス代よ」
彼女は嫌悪感を露わにして彼を睨みつけた。
「あなたのジャケットとカードは、借金の形にさせてもらうわ!」
そう言い捨てると、彼女は着られなくなったドレスの残骸を掴み、振り返りもせずに部屋を飛び出した。「バンッ」とドアが閉まる。
碧井天川はその二枚の紙幣を指で弄び、再びあの邪悪な笑みを浮かべた。なかなか面白い女だ。
小林も、どこからこんな面白い女を見つけてきたのやら。
急な着信音が鳴り響き、碧井天川はスマホを手に取り通話ボタンをスライドさせた。
小林の焦った声が聞こえてくる。
「社長、どこにいらっしゃるんですか?」
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彼女は兄たちのためにすべてを捧げたというのに、家を追い出され、無残に死んだ。
生まれ変わった今、彼女は人助けの精神などかなぐり捨てた。許さない、和解しない。あなたたちはあなたたちで固まっていればいい。私は一人、輝くだけ。
兄たちは皆、彼女がただ意地を張っているだけだと思っていた。三日もすれば泣きついて戻ってくるだろうと高を括っていたのだ。
だが三日経ち、また三日経っても彼女は戻らない。兄たちは次第に焦り始めた。
長兄:「なぜ最近、こんなに体調が悪いんだ?」――彼女がもう滋養強壮剤を届けてくれないからだ。
次兄:「会社のファイアウォールは、なぜこうも問題ばかり起こす?」――彼女がメンテナンスに来なくなったからだ。
三兄:「新薬の開発が遅々として進まないのはなぜだ?」――彼女が治験をしなくなったからだ。
四兄:「どうしてこんなにつまらない脚本しか上がってこない?」――彼女がもう執筆しないからだ。
五兄:「この義肢は、なぜこんなに出来が悪いんだ?」――彼女が製作をやめたからだ。
六兄:「なぜチームが負けた?」――彼女が脱退したからだ。
兄たちは地に膝をついて許しを請うた。「戻ってきてくれ。俺たちこそが、血を分けた本当の家族じゃないか」
彼女は絶縁状を兄たちの顔に叩きつけ、冷ややかに笑った。
「車が壁にぶつかってから、ようやくハンドルを切ることを覚えたのね。株が上がってから、ようやく買うことを覚え、罪を犯して判決が下ってから、ようやく悔い改めることを覚えた。残念だけど、私は――許さない!」
令嬢の私、婚約破棄からやり直します
婚約まで二年、そして結婚まで更に二年を費やした。
だが長谷川冬馬の心の中で、彼女は幼馴染の市川美咲には永遠に及ばない存在だった。
結婚式の当日、誘拐された彼女は犯される中、長谷川冬馬と市川美咲が愛を誓い合い結婚したという知らせを受け取った。
三日三晩の拷問の末、彼女の遺体は海水で腐敗していた。
そして婚約式の日に転生した彼女は、幼馴染の自傷行為に駆けつけた長谷川冬馬に一人で式に向かわされ——今度は違った。北野紗良は自分を貶めることはしない。衆人の前で婚約破棄を宣言し、爆弾発言を放った。「長谷川冬馬は性的不能です」と。
都は騒然となった。かつて彼女を見下していた長谷川冬馬は、彼女を壁に追い詰め、こう言い放った。
「北野紗良、駆け引きは止めろ」













