薬代を稼ぐために、元夫に身体を売った

薬代を稼ぐために、元夫に身体を売った

大宮西幸 · 完結 · 18.5k 文字

881
トレンド
905
閲覧数
6
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

私はもうすぐ死ぬ。少しでも長く生きるために、やむを得ず身体を売って薬代を稼ぐしかなかった。
まさか私を買ったのが、元夫の椎名陸だったとは。
彼は私の顔に金を投げつけ、屈辱を与え、ありとあらゆる恥ずかしいことを強要した。
彼が危篤状態の時に私が彼を見捨てたことを、まだ恨んでいるからだ。
でも彼は知らない。今この瞬間、彼の胸の中で鼓動している心臓が、実は私のものだということを。

チャプター 1

 私はもうすぐ死ぬ。

 少しでも長く生き延びるため、私は自分の身体を売って薬代を稼ぐ道を選んだ。

「お金さえいただければ、今夜はあなたの好きにしていいわ」

 厳重な警備をすり抜け、名士たちが集う晩餐会に紛れ込む。長い時間をかけて、ようやく私を買ってくれそうなハゲの男を見つけた。

 彼の汗ばんだ大きな手が、私の腰の曲線に沿って滑っていく。

「金が欲しいなら、それなりの誠意を見せてもらわないとな?」

 私はつま先立ちになり、その脂ぎった口に向かって、目を閉じたまま顔を近づけた。

 このキスさえ我慢すれば、薬代を稼げる。人工心臓があと数日動く。

 唇が触れようとした刹那、うなじに強い衝撃が走った。凄まじい力で、身体ごと後ろに引きずられた。

「ドンッ」という鈍い音と共に、私は硬い胸板に背中から激突した。

 椎名陸だ。

 力強く、落ち着いた心音が耳に届く。

 あれは、私の心臓だ。

 彼の身体の中で、なんと心地よいリズムを刻んでいることか。

「水野千尋……お前には反吐が出る」

 椎名陸の声は、氷を砕いたように冷たかった。汚物でも見るかのような蔑みの眼差し。

 椎名陸と私の関係を察したのか、小林社長は顔面蒼白になり、転がるように群衆の中へ逃げ去っていった。

 手に入りかけた命綱が、飛び去ってしまった。

 胸に埋め込まれた金属の塊が抗議するかのように激しく軋み、激痛に脂汗が滲む。

 私はよろめく身体を支え、喉元まで込み上げた鉄錆の味を飲み下すと、怒りで燃え上がるような椎名陸の瞳を見据えた。

「椎名社長ったら、私のパトロンを追い払っちゃって。この損害、補償していただけるのかしら?」

 椎名陸の瞳に嫌悪の色が濃くなる。私の顎を掴む指に力がこもった。

「椎名家を出てたった一年で、そこまで飢えたか? 男なら誰でもいいのか?」

「ええ、お金に困ってるの」

 私は微笑み、指先で彼の胸板を挑発的に撫で上げた。

「椎名社長が興味あるなら……三年間寝食を共にした仲に免じて、二割引きにしてあげる。どう?」

 椎名陸はまるで汚いものでも触ったかのように、私を乱暴に振り払った。

 よろめいて足元が定まらない私の耳に、甘ったるい声が割り込んでくる。

「お姉ちゃん? どうしてこんなところに……」

 水野奈々がゆっくりと歩み寄ってくる。私を一瞥した瞬間、その目元が赤く染まった。

「お姉ちゃん、こんな自分を貶めるようなことしないで。お父さんとお母さんに謝って、素直になれば、きっと許してくれるわ」

 謝罪? 許すだと?

 水野家へ戻されてからの三年間が走馬灯のように脳裏を駆け巡り、思わず苦笑が漏れた。

「そんなに私が心配なら、奈々ちゃんが椎名社長にお願いしてくれない? 私の身体を買ってって」

 二人の顔を交互に見やり、挑発的なトーンで続ける。

「それとも、二人まとめて相手してあげようか? 三人でなんてしたことないけど、可愛い妹と一緒なら悪くないわね」

「ただし、別料金よ」

「水野千尋ッ!」

 椎名陸が激昂し、こめかみに青筋を浮かべる。

「金が欲しいんだな? いいだろう、くれてやる!」

 彼は乱暴に財布を取り出すと、分厚い札束を鷲掴みにし、私の顔めがけて全力で叩きつけた。

 茶色い一万円札が宙を舞い、鋭い紙の端が私の目尻を掠める。

 意外と痛いものだ。

 血走った目で、椎名陸は会場の隅にいた給仕の少年を指差した。

「そこまで落ちぶれたか。そこまで恥知らずなのか。なら、今ここで、全員が見ている前で、あの男にしゃぶって見せろ! それができたら、この金は全部くれてやる!」

 宴会場が、水を打ったように静まり返る。

 誰もが驚愕の表情で私の反応を窺っている。

「椎名社長、その言葉に噓はないわよね?」

 この金さえあれば、あと数日は生きられる。

 死を前にして、尊厳など何の意味もない。

 私は大勢の人が見ている中で、その給仕に向かって歩き出した。

 給仕の少年は恐怖でトレイを震わせていたが、逃げようとしたところを椎名陸のボディーガードに取り押さえられた。

 彼の前に立ち、ゆっくりとしゃがみ込む。

 視線の先には、男のスーツのズボン。

「協力して。すぐに終わらせるから」

 恐怖で硬直する少年に微笑みかけ、震える指先で冷たい金属のファスナーに触れた。

「ジーッ――」

 静寂に包まれた広間に、ファスナーが下がる音が鋭く響き渡る。

 彼が私の浅ましい姿を見たいというのなら、望み通りに見せてやるまでだ。

 その瞬間、強烈な力で手首を捻り上げられた。骨が砕けそうなほどの激痛。

 顔を上げると、血が滴りそうなほど充血した椎名陸の瞳があった。

「水野千尋、てめえ……本気でやるつもりか!」

 彼は歯ぎしりし、次の瞬間、傍らにいた水野奈々を突き飛ばすと、死んだ犬でも引きずるように私の腕を引っ張り、大股で上階の客室へと向かい始めた。

「陸くん!」

 背後で水野奈々の泣き叫ぶ声がする。

 椎名陸には届かない。彼の歩調はあまりに速く、私は何度もつまずきかけた。ハイヒールが片方脱げ、冷たい大理石の床が足の裏を刺すように痛い。

 スイートルームのドアが乱暴に蹴り開けられた。

 私はベッドに叩きつけられる。起き上がる間もなく、男の重い身体が覆い被さってきた。嵐のような怒りを纏いながら。

「身体を売りたいんだったな? なら俺が買ってやるよ、望み通りにな!」

最新チャプター

おすすめ 😍

令嬢は離婚を機に大富豪への道を歩む

令嬢は離婚を機に大富豪への道を歩む

814.4k 閲覧数 · 連載中 · 蜜柑
天才陰陽師だった御影星奈は、かつて恋愛脳のどん底に落ち、愛する男のために七年もの間、辱めに耐え続けてきた。しかしついに、ある日はっと我に返る。
「瀬央千弥、離婚して」
周りの連中はこぞって彼女を嘲笑った。あの瀬央様がいなくなったら、御影星奈は惨めな人生を送るに決まっていると。
ところが実際は――
財閥の名家がこぞって彼女を賓客として招き入れ、トップ俳優や女優が熱狂的なファンに。さらに四人の、並々ならぬ経歴を持つ兄弟子たちまで現れて……。
実家の御影家は後悔し、養女を追い出してまで彼女を迎え入れようとする。
そして元夫も、悔恨の表情で彼女を見つめ、「許してくれ」と懇願してきた。
御影星奈は少し眉を上げ、冷笑いを浮かべて言った。
「今の私に、あなたたちが手が届くと思う?」
――もう、私とあなたたちは釣り合わないのよ!
今さら跪く元夫を置き去りに、大富豪の甘い執着愛が始まりました

今さら跪く元夫を置き去りに、大富豪の甘い執着愛が始まりました

10.9k 閲覧数 · 連載中 · 桜井 ゆい​
夫は私を、別の男のベッドへ差し出した。
あの男にとって、私は自分の出世や欲望のために利用する「モノ」でしかなかったのだ。

だが、あの男は夢にも思っていなかった。
自分がゴミのように投げ捨てた贈り物が、この国で最も恐れられ、最も力を持つ男の「かけがえのない愛する人」になるなんて。

やがて絶望を知り、私の前に跪いて許しを乞う元夫。
その惨めな姿を見下ろす私を、最高峰の男が背後から抱き寄せ、耳元で低く甘く唸った。

「俺の子供を身ごもっておきながら、一体どこへ行こうというんだ?」

――捨てられた妻の反撃と、逃げられない絶対的な愛が、ここから始まる。
離婚後、奥さんのマスクが外れた

離婚後、奥さんのマスクが外れた

331k 閲覧数 · 連載中 · 来世こそは猫
結婚して2年後、佐藤悟は突然離婚を申し立てた。
彼は言った。「彼女が戻ってきた。離婚しよう。君が欲しいものは何でもあげる。」
結婚して2年後、彼女はもはや彼が自分を愛していない現実を無視できなくなり、過去の関係が感情的な苦痛を引き起こすと、現在の関係に影響を与えることが明らかになった。

山本希は口論を避け、このカップルを祝福することを選び、自分の条件を提示した。
「あなたの最も高価な限定版スポーツカーが欲しい。」
「いいよ。」
「郊外の別荘も。」
「わかった。」
「結婚してからの2年間に得た数十億ドルを分け合うこと。」
「?」
追放された偽物の娘、その正体は最強でした

追放された偽物の娘、その正体は最強でした

822.8k 閲覧数 · 連載中 · ゲゲゲ
「本物の娘が見つかった。お前はもう用済みだ」
あの子が現れたその日、私は『偽物の娘』として家を追い出された。
渡されたのは、わずかな小銭と地方行きの片道切符だけ。
さらに婚約者は私をゴミのように捨て、その日のうちに『本物』であるあの子にプロポーズした。

……上等じゃない。せいぜい勝った気でいればいいわ。
だって彼らは、私の【本当の顔】を何一つ知らないのだから。

名門病院が見放した命を救う『天才外科医』。
オークションで数億円の値を叩き出す『伝説の画家』。
裏社会の闘技場で無敗を誇る『影の女王』。
そして――彼らの全財産すら小銭に思えるほどの『真の巨大財閥の後継者』であることを。

今さら元婚約者が土下座で許しを請おうと、本物の娘が嫉妬で狂いそうになろうと、もう遅い。
かつて私に婚約破棄の書類を叩きつけた冷酷で傲慢なCEOでさえ、今や何かに取り憑かれたように私を追い回し、「もう一度だけチャンスをくれ」とすがりついてくる始末。

私を捨てて、自分たちの人生を『アップグレード』したつもり?
笑わせないで。最初から、圧倒的に上の存在だったのは私のほうよ。
死に戻り真令嬢の復讐 ~偽りの家族も血の兄も要りません

死に戻り真令嬢の復讐 ~偽りの家族も血の兄も要りません

24.4k 閲覧数 · 連載中 ·
前世の橘結衣は、兄たちに尽くし続けた。どんな理不尽にも耐え、健気に笑顔を向け続けた結衣を待っていたのは――お披露目パーティーでの無残な死だった。

破滅を経て死に戻った結衣は、人が変わったように冷徹になる。もう二度と、あの愚かな兄たちのために心を痛めたりはしない。

しかし、冷遇し始めた途端、兄たちの態度が一変する。

「いい加減、そんな冷たい態度を取るな」と迫る社長の長男。

「俺の誤解だったんだ……」と苦悩する医師の次男。

「頼む、やり直させてくれ!」とプライドを捨てて乞うトップスターの三男。

「俺の妹はお前だけだ!」と泣きじゃくる不良の四男。

だが、結衣の答えはひとつだけ。

「みんな、失せて」

復讐と無関心を胸に、彼女は一人の男性の手を取った。

「宮本景太。今日からあなただけが、私のたった一人の『お兄ちゃん』よ」

――しかし、彼女の本当の身分が明かされた時、今度は血縁関係のある「実の兄たち」が押しかけてきて――!?

「『唯一の兄』だと……? じゃあ、俺たちはお前の何なんだ!?」
社長の可愛い若妻

社長の可愛い若妻

19k 閲覧数 · 連載中 · 月島 ことね
丸5年もの間、私はすべてを捧げて林翔太を深く愛してきた。しかし、私たちの記念パーティーの夜、彼が新入りの秘書とキスしている現場を目撃してしまう。その瞬間、私の恋の魔法は完全に解けた。

愛に絶望した私は、お互いの利益のための「契約結婚」に同意する。てっきり、悪名高いプレイボーイの蒼井翼と結婚するものだと思っていた。ところが、書類にサインする瞬間、婚姻届に書かれていた名前は――蒼井沢言。誰もがその名を聞くだけで震え上がり、「地獄の帝王」と恐れられる冷酷な巨大財閥のトップだった。

彼は私に数々の価値連根のジュエリーを贈り、私の敵をすべて排除し、世のあらゆる嵐から守ってくれた。けれど、「愛している」という言葉だけは、一度も口にしなかった。

しかしある夜、彼は私を壁に押し付け、熱い吐息を肌に吹きかけながら、低く掠れた声で囁いた。
「音羽、俺をいつまで待たせるつもりだ?」

――この結婚は、決して偶然などではなかった。最初からすべて、彼が仕組んだ「執念の計画」だったのだ。
全能令嬢の帰還、家族が倒産?

全能令嬢の帰還、家族が倒産?

41k 閲覧数 · 連載中 · きりゅう りんか
万能の女神・夏川紅蓮が実家に戻ると、一家は何者かの手で破滅に追いやられた後だった。
父は冤罪で獄中にあり、母は病に伏せっている。
六人の兄たちも、ある者は身体に障がいを負い、ある者は無気力に沈んでいた。
そんな折、家に潜り込んでいた偽令嬢は状況を見るや否や一家を見捨てて姿を消し、さらに屋敷までも奪い取ろうとしていた。
世間は夏川家を「落ち目の負け犬」と嘲笑い、皆がこぞって踏みにじる。

紅蓮が静かに一声を発すれば、暗部より無数の異能の士たちが姿を現し、形勢は一瞬にして逆転する。
父は無実のまま出所し、母は健康を取り戻し、廃人同然だった長兄は再び己の足で歩き出し、残る五人の兄たちもまた紅蓮の導きによって各々の才覚を花開かせ、やがて各界を牽引する大物へと成り上がっていく。

しかし、そんな彼女を指さして嘲る者がいる。
「夏川紅蓮は地味で野暮ったい田舎者だ」と。

何を隠そう、彼女は無数の隠された顔を持つ存在。
神医の令嬢も彼女なら、国画の大家も彼女。
伝説のハッカーも彼女なら、正体不明の謎の女優も彼女。
そして、暗部を統べる首領さえも——彼女なのだ。

そんな折、頂点に君臨する名門の若様が、彼女をそっと腕のなかに抱き寄せた。

「誰が彼女を田舎くさい地味女だと言った? 彼女こそ、俺・諏訪淳行の婚約者だ」

紅蓮が流し目をひとつ送る。

「婚約、破棄しなくていいの?」

「しない」

彼が長いあいだ追い求めてきた決して手の届かない高嶺の花こそが、いま腕のなかにいる婚約者なのだ。
解消などありえない——この婚約は、死んでも解消しない。
監禁から1年、捨てられた令嬢は元婚約者の叔父を娶る

監禁から1年、捨てられた令嬢は元婚約者の叔父を娶る

131.9k 閲覧数 · 連載中 · 鈴木楓花
監禁から1年。ようやく帰宅した今井心晴を待っていたのは、変わり果てた日常だった。
家族は心晴を探そうともせず、あろうことか姉の今井優奈のために盛大な誕生日パーティーを開いていた。
しかも、その横には心晴の元婚約者の姿が……二人は婚約していたのだ。
しかし、心晴はただの被害者ではなかった。
彼女は人知れず巨額の資産と強大なコネクションを築き上げていたのだ。
真実を知った心晴は、復讐の狼煙を上げる。
彼女が選んだ新たなパートナーは、なんと元婚約者の叔父だった。
「これからは私のことを『おばさん』と呼ぶのよ、優奈!」
極品の入り婿

極品の入り婿

2k 閲覧数 · 連載中 · 佐藤製作所
彼が財産を相続して戻ってきた時、かつて彼を見下していた人々は彼の前にひざまずくしかなかった。
終末世界で異空間チート!無限備蓄で兵王様を攻略します

終末世界で異空間チート!無限備蓄で兵王様を攻略します

25.8k 閲覧数 · 連載中 · 夜明けのソラ
渡辺千咲は大学卒業後、人生のどん底に落ち、みじめな思いで故郷に戻った。ところが、幼い頃に覚醒した役立たずの空間が突然見知らぬ男に結び付けられた。

男の方は食料不足、渡辺千咲の方は金欠で、二人は意気投合して互いに協力することになった。

「俺のいる場所では、金やダイヤモンドが地面に落ちていても誰も拾わない」

渡辺千咲はそれを聞いて目を輝かせた。男のいる時空では終末が訪れ、動植物が変異し、土地は耕作不能、水源は汚染され、さらに人類の安全を脅かすゾンビがいるのだった。

中島暁は終末世界で一年間苦しみながらも生き抜き、弾薬も食料も尽きて重傷を負いながらも、最後まで信念を貫き、仲間を見捨てることを拒んだ。

「唐揚げ、肉まん、きれいな水、あなたが欲しい物資なら何でも調達してやる!」

渡辺千咲はもはやみじめではなくなった。クリスタルのエネルギーで肌が白くなり体質が改善され、眼鏡も外せるようになり、金や骨董品が手に入り続けた。

中島暁が終末世界から持ち込んだ書籍、詞曲、漫画……によって、渡辺千咲は一躍文学芸術の大家となった。

祖母や、偽善的で貪欲な親戚たちが泣きながら彼女に許しを求めた。

数年後、記者が渡辺千咲の願いを尋ねた――

「世界平和を願っています」

大げさだと思う人もいたが、後になって戦乱を平定したのも彼女、経済を発展させたのも彼女、薬剤を発明したのも彼女の部下のチーム、ウイルス爆発を救ったのも彼女だったことが分かった。

終末世界で彼女は最後の人類を率い、ゾンビに勝利し、赤い月の終末災害を乗り越えた。

彼女の願いは実現したのだった。
地獄から帰った私を、頂点の男が甘やかすなんて聞いてない

地獄から帰った私を、頂点の男が甘やかすなんて聞いてない

6.9k 閲覧数 · 連載中 · 三日月プリン
「救うのは妹の方だ。お前は強いから、生き残れるだろう」
十八年間、空気のように扱われ、誘拐事件の際にも迷わず切り捨てられた私。
「強さ」という名の言い訳で死の淵に追いやられた私は、地獄の果てで生き延びた。
そして今、全国民が見守る超人気リアリティショーの舞台に、私は「かつての復讐者」として舞い戻る。
家族が偽りの善人面を振りまく中、彼らの仮面を一枚ずつ剥ぎ取っていく最高のショウタイム。
そんな私を面白がり、盤面をひっくり返す男がいた。冷徹なるF1チャンピオン。彼だけは、私の冷酷な正義を肯定し、その権力で私を囲い込む。
さあ、復讐劇の始まりよ。私を「可哀想な犠牲者」だと思っていた報い、その身に刻ませてあげる。