貧乏美大生ですが、なぜか超富豪と感覚を共有してしまいました

貧乏美大生ですが、なぜか超富豪と感覚を共有してしまいました

猫又まる · 完結 · 26.9k 文字

799
トレンド
804
閲覧数
239
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

2000円の古着屋の毛布。
それが、私と彼の心を繋いだ、魔法の始まりだった。

私の名前は雨宮千葉。B市で夢を追う、金欠の美術学生。
ある日、手に入れた一枚の毛布にくるまった瞬間、私の頭の中に、知らない男の声が響き始めた。
「――そんなにきつく抱きつくな。息ができないんだが」

それは、M市で最も魅力的な独身男性と噂される、巨大財閥の跡取り息子――千堂早遊の心の声だった。
信じられないことに、私は彼と感覚を共有する「共感覚(シナスタジア)」を手に入れてしまったのだ。

最初はただの好奇心だった。
彼の孤独を、彼の優しさを、彼の誰にも見せない素顔を、私だけが知っていく。
いつしかそれは、抗えない執着に変わり、そして、どうしようもないほどの愛になった。

だが、あまりにも違いすぎる世界。
「彼のために消えろ」と脅され、涙を飲んで彼から離れようとした、その時だった。
彼が、私だけが聞こえる声で、静かに、けれど強く、決意を告げたのは。

「君を守れるなら、すべてを失っても構わない」

これは、一枚の古い毛布から始まった、奇跡の恋の物語。

チャプター 1

 またしても、うんざりするような水曜の午後だった。

 私は撮り終えたばかりの写真課題の作品と、山積みの未完成のスケッチで膨れ上がったバッグを背負い、疲れきった足取りで美術大学の正面玄関から外へ出た。

 B市の秋風が容赦なく体を突き刺し、高校時代から着続けているこのジャケットがとうの昔に引退すべきだったことを思い出させる。

 だが、引退させるにも金がかかる。そして金は、私にとって常に希少な資源だった。

 スマホを取り出して銀行口座の残高を確認すると、見慣れた数字が目に飛び込んできた――2万4千円。今月残りの生活費を差し引くと、自由に使えるのはせいぜい5000円ってとこか。そんな金じゃ、まともな毛布一枚だって買えやしない。

 昨夜は、紙みたいに薄っぺらいシーツにくるまって、一晩中凍えそうだった。黒崎利里はもっと厚いものを買えとしきりに言うが、彼女には分かっていない。私にとって一円一円が重要なのだ。彼女の両親は毎月仕送りをくれるが、うちの母親は自分の生活だけで手一杯なのだから。

「古着屋でも覗いてみるか」

 私は独りごちて、B市の中古品街へと向かった。

「メモリーカプセル」というその店は、寂れたビルが立ち並ぶ一角に挟まれるようにして建っていた。ネオンサインは半分壊れ、「メモリー」の部分だけが頑固に点滅を続けている。小さな店だが、安い家庭用品ならいつでも見つかる場所だった。

 ドアを押し開けると、お馴染みのカビ臭い匂いが鼻をついた。店主の中島洋介さんがカウンターの奥でレシートを整理していたが、こちらにちらりと視線を寄越す。

「よう、また来たな、嬢ちゃん。今日は何探しだ?」

「寝具です」と私は単刀直入に言った。

「安いやつを」

 中島さんは奥の薄暗い一角を指差した。

「あそこに新しいのが入ってるぞ。数日前に持ち主の婆さんが亡くなって、家族が遺品整理で置いていったやつだ。好きに見ていけ」

 私は段ボール箱がいくつか散らばっている薄暗い隅へと歩いていった。ほとんどは時代遅れの服や古風な装飾品だったが、一番底の箱の中に、それを見つけた。

 ベルベットの毛布だった。

 手を伸ばして触れてみると、マジかよ、と声が出そうになった。信じられないような手触りだ。柔らかくて、ずっしりと重い。安っぽい照明の下でもわかる、贅沢な光沢があった。これは間違いなく、ただの古着屋に転がっているような安物じゃない。こんな場所に置いてあるような代物ではなかった。

 値札をひっくり返してみる――2,000円。

『何かの間違いだろ、これ』

 私はその毛布をカウンターまで運んだ。中島さんはそれに一瞥をくれると、肩をすくめた。

「その値段だよ」と彼は言った。

「前の持ち主が死んで、家族が全部さっさと処分したがってるんだ。どっかの金持ちの婆さんの遺品らしい。結構な金持ちだったって話だが、家族はとにかく早く手放したいだけなのさ。欲しけりゃ持っていきな」

 私はためらった。だが、この毛布の品質は……こんなチャンスは二度とないだろう。

「分かりました。これを買います」

 支払いを済ませ、私は毛布を抱きしめるようにして店を出た。

 アパートに戻ると、まだ黒崎利里は帰っていなかった。私たちの住むアパートは1DKで、私の「寝室」はリビングの隅を遮光カーテンで仕切っただけの空間だ。贅沢とは言えないが、ここが私の家だった。

 ベッドに毛布を広げる。深い青色のベルベットが蛍光灯の光を浴びて鈍く輝いた。触れてみると、さらに感動的だった。まるで雲に包まれているようだ。

『これでやっと、ぐっすり眠れる』

 ―――

 午前二時、私は浅い眠りから目を覚ました。

 アパート全体が静まり返り、隣の部屋からかすかにテレビの音が聞こえるだけだった。私は新しいベルベットの毛布にしっかりとくるまり、これまでに感じたことのないほどの暖かさと心地よさを味わっていた。この毛布はまるで私のために作られたかのように、肌の一寸一寸を優しく包み込んでくれる。

 半分眠ったまま寝返りをうち、無意識にそれをきつく抱きしめた。その時、はっきりとした男性の声が、すぐ耳元で聞こえた。

「そんなにきつく抱きつくな。息ができないんだが」

 私は飛び起きた。心臓が胸から逃げ出そうなくらい激しく鼓動している。

 部屋には誰もいない。街灯の光がカーテン越しに差し込み、すべてがいつも通りに見える。私は身を起こして部屋を見渡し、ドアにはまだ鍵がかかっていて、窓もしっかり閉まっていることを確認した。

『幻聴か』

 私は自分に言い聞かせた。

『ストレスが溜まりすぎてるんだ』

 だが、あの声はあまりにもリアルで、はっきりしていた。深くて、人を惹きつけるような、何とも言い表せない響きがあった。夢や幻覚とは明らかに違う。

 私は再び横になり、わざと毛布を強く抱きしめた。ただの気のせいだと証明しようとしたのだ。

「これは……奇妙だが、温かいな」

 今度は確信した。またあの声がしたのだ。私は感電したかのように飛びのき、ベッドの上に座り込んだ。

「なんだってんだよ……」

 誰もいない部屋に向かって、私は震える声で言った。

 あまりにも奇妙すぎる。古着屋で買った毛布が、どうしてそんな……?私はベッドに広がるベルベットを見つめた。それはとても無害で、ごく普通に見える。だが、今起きたことは間違いなく私の想像ではなかった。

 もう一度それに触れようと手を伸ばすと、指が生地に触れた瞬間、私のスマホが鳴り響いた。

 夜の静寂の中、着信音は鼓膜を突き破るほど鋭かった。私は危うく飛び上がるところだった。慌ててスマホを探す。

 画面には知らない番号が表示されている。

 一体誰だ、こんな午前二時に電話してくるなんて。

 私はためらったが、とにかく電話に出た。

「もしもし?」

「こんな夜分に申し訳ありません」

 電話の向こうから、深くて響きのいい声が聞こえてきた。

「奇妙に聞こえるでしょうが……誰かに抱きしめられているような感覚がありまして」

 私はスマホを握る手に力を込めた。落としそうになる。その声は……さっき聞いた声と全く同じだった。

「誰……誰ですか?」

 私は声を平静に保とうと努めた。

「千堂早遊と申します。M市に住んでいます。馬鹿げた話に聞こえるのは承知していますが、先ほどから、誰かに抱きしめられているような非常にリアルな感覚がありまして。とても温かく、心地よいのですが。ストレスによる幻覚かとも思ったのですが……」

 彼は言葉を切った。

「私はおかしくなってしまったのでしょうか?」

 私はベッドの上のベルベットの毛布を見つめた。心臓の鼓動がどんどん速くなっていく。

「いえ、おかしいとは思いません」

 私は慎重に言った。

「その感覚を、説明してもらえますか?」

「何かにとても柔らかく、温かく、心地よく包まれているような感じです。ただ、時々少し……息苦しいというか。誰かが強く抱きしめすぎているような」

 私の呼吸が速くなる。これが偶然のはずがない。

「なぜ私に電話を?」と私は尋ねた。

「どうして私の番号を知っているんですか?」

 電話の向こうで数秒の沈黙があった。

「正直に言うと、分かりません。その抱きしめられる感覚を覚えた時、この番号が頭に浮かんだのです。おかしい話だとは分かっています。でも、ただ……この番号に電話すべきだと、そう思ったんです」

 私は毛布を凝視し、自分の理解を超えた何かが起きているのかもしれないと悟り始めた。

「今はどう感じますか?」と私は尋ねた。

「不思議と……落ち着いています。さっきまでの緊張感がすっと消えたような。あなたはどうです?何か感じていますか?」

 私はスマホの画面に表示された時間を見た。午前2時7分。

「私は……」

 私はためらった。どう説明すればいいのか分からない。

「私たち、話す必要があるかもしれません。でも今じゃない、電話でもない」

「そうですね」

 千堂早遊の声は安堵したように聞こえた。

「明日では?私なら……」

「待ってください」

 私は遮った。

「M市に住んでいると言いましたよね?」

「ええ、金融街の近くです。外資系の投資銀行で働いています」

 やっぱりか。投資銀行、M市、千堂早遊――いかにもお坊ちゃんっぽい響きの名前だ。そうだろうと思った。

「私はB市に住んでます」

 私は言った。なぜか説明のつかない不安を感じていた。

「私たちは……違いすぎる」

「距離なんて問題になりません」

 彼の声には、私には読み取れない決意がこもっていた。

「あなたが会う気なら」

「分かりました」

 私はついに言った。

「明日、話しましょう」

 電話を切った後、私はベッドの端に座り、すべてを変えてしまったこの毛布をただ見つめていた。

最新チャプター

おすすめ 😍

転生して絶縁したら、元家族は破滅に

転生して絶縁したら、元家族は破滅に

32.8k 閲覧数 · 連載中 · ワニノコ
名門古川家の生まれの娘・古川朱那は、前世、父・古川邦夫と三人の兄(礼和、礼希、礼人)が養妹・周防天華を無条件に贔屓し、天華の陰険な陥れに遭い、理不尽に死んだ。
22 歳、天華に陥れられた日に生まれ変わった朱那は、過去の卑屈さを捨て、天華の悪事を暴き、偏心な家族に毅然と立ち向かう。芸能界で演技の才能を開花させ、自らの人生を切り開くため、全力で逆襲する。
不倫夫を捨て、私は大富豪の妻になる

不倫夫を捨て、私は大富豪の妻になる

350.3k 閲覧数 · 連載中 · 七海
人生最良の日になるはずだった、結婚式当日。
新郎の車から出てきたのは、見知らぬ女の派手なレースの下着だった。

しかも、その布切れにはまだ。生々しい情事の痕跡が残されていた。

吐き気がするほどの裏切り。
幸せの絶頂から地獄へと突き落とされた私。

けれど、泣き寝入りなんてしてやらない。
私はその場でウェディングドレスの裾を翻し、決意した。

「こんな汚らわしい男は捨ててやる」

私が選んだ次の相手は、彼など足元にも及ばない世界的な億万長者で?
お払い箱の杖は、夜に咲く

お払い箱の杖は、夜に咲く

5.9k 閲覧数 · 連載中 · 森川澪
「目が見えるようになった途端、手すりの杖を捨てるのね」

事故で盲目かつ失聴した夫を5年間、溢れる愛で献身的に支え続けた主人公。しかし、五感が戻った夫が最初に抱きしめたのは、かつて彼が愛した初恋の女だった。

家族からも夫からも裏切られた彼女は、未练を一切捨てて離婚を決意。

離婚の理由に「夫の夜の体力不足」という最大の屈辱を書き残し、結婚指輪を捨ててあっさりと家を出る。

夫の好みに合わせてこれまで隠していた「息をのむほど明艶な美貌」を解放し、夜の街へと繰り出した彼女は、一瞬で全場の視線を独占する。

バーのVIP席からその圧倒的な美女を凝視し、なぜか目が離せなくなっている元夫は、まだ気づいていない。それが、自分が「地味で退屈な女」だと見下していた元妻の真の姿だということに……
空気のようだった妻が消えた日、俺の空っぽな日常が剥がれ落ちる

空気のようだった妻が消えた日、俺の空っぽな日常が剥がれ落ちる

36.6k 閲覧数 · 連載中 · わたあめ
妻の存在は、いつだって当たり前で、ただそこにあるだけのものだと思っていた。
だが、帰宅した俺を迎えたのは、もぬけの殻になったクローゼットと、机の上に置かれた離婚届だけだった。
三年間、彼女は何を思い、何に耐えていたのか。
初めて向き合った彼女の不在は、何よりも鋭く俺の心臓を抉る。
失って初めて気づく、俺を誰よりも愛していたはずのその手。
タイムリミットが迫る中、俺は彼女という「唯一の場所」を取り戻すために奔走する。
——もう遅いのか、それともこれはやり直すための罰なのか。
監禁から1年、捨てられた令嬢は元婚約者の叔父を娶る

監禁から1年、捨てられた令嬢は元婚約者の叔父を娶る

129.5k 閲覧数 · 連載中 · 鈴木楓花
監禁から1年。ようやく帰宅した今井心晴を待っていたのは、変わり果てた日常だった。
家族は心晴を探そうともせず、あろうことか姉の今井優奈のために盛大な誕生日パーティーを開いていた。
しかも、その横には心晴の元婚約者の姿が……二人は婚約していたのだ。
しかし、心晴はただの被害者ではなかった。
彼女は人知れず巨額の資産と強大なコネクションを築き上げていたのだ。
真実を知った心晴は、復讐の狼煙を上げる。
彼女が選んだ新たなパートナーは、なんと元婚約者の叔父だった。
「これからは私のことを『おばさん』と呼ぶのよ、優奈!」
二度目はない 動じず咲く

二度目はない 動じず咲く

165.4k 閲覧数 · 完結 · Gloria Fox
結婚式の一ヶ月前、私は一年かけて自らの手で縫い上げたウェディングドレスを燃やした。

婚約者は身ごもった愛人を腕に抱き寄せたままそこに立ち、私を鼻で笑っていた。「俺がいなきゃ、お前なんて何の価値もない」

私はきびすを返し、この街で最も裕福な男の扉を叩いた。「ロック氏、政略結婚にご興味はおありですか? 千億ドル相当の株式――それに加え、未来のビジネス帝国も無料でお付けいたしますわ」
転生して、家族全員に跪いて懺悔させる

転生して、家族全員に跪いて懺悔させる

338.4k 閲覧数 · 連載中 · 青凪
婚約者が浮気していたなんて、しかもその相手が私の実の妹だったなんて!
婚約者にも妹にも裏切られた私。
さらに悲惨なことに、二人は私の手足を切り落とし、舌を抜き、目の前で体を重ね、そして私を残酷に殺したのです!
骨の髄まで憎い...
しかし幸いなことに、運命の糸が絡み合い、私は蘇ったのです!
二度目の人生、今度は自分のために生き、芸能界の女王になってみせる!
復讐を果たす!
かつて私をいじめ、傷つけた者たちには、十倍の報いを受けさせてやる...
不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

3.4m 閲覧数 · 連載中 · 七海
初恋から結婚まで、片時も離れなかった私たち。
しかし結婚7年目、夫は秘書との不倫に溺れた。

私の誕生日に愛人と旅行に行き、結婚記念日にはあろうことか、私たちの寝室で彼女を抱いた夫。
心が壊れた私は、彼を騙して離婚届にサインをさせた。

「どうせ俺から離れられないだろう」
そう高をくくっていた夫の顔に、受理された離婚届を叩きつける。

「今この瞬間から、私の人生から消え失せて!」

初めて焦燥に駆られ、すがりついてくる夫。
その夜、鳴り止まない私のスマホに出たのは、新しい恋人の彼だった。

「知らないのか?」
受話器の向こうで、彼は低く笑った。
「良き元カレというのは、死人のように静かなものだよ?」

「彼女を出せ!」と激昂する元夫に、彼は冷たく言い放つ。

「それは無理だね」
私の寝顔に優しくキスを落としながら、彼は勝ち誇ったように告げた。
「彼女はクタクタになって、さっき眠ってしまったから」
マフィア姫の帰還

マフィア姫の帰還

55.9k 閲覧数 · 完結 · Tonje Unosen
タリアは何年ものあいだ、母と義理の妹、そして継父と暮らしてきた。だがある日、ついにそこから逃げ出すことに成功する。

ところがその直後、自分にはまだ外に家族がいるのだと知る。そして本当に自分を愛してくれる人たちが大勢いることも――そんなものは今まで感じたことがなかった。少なくとも、彼女の記憶にあるかぎりでは。

タリアは人を信じることを学ばなければならない。新しくできた兄たちにも、ありのままの自分を受け入れてもらわなければならないのだ。
死に戻り真令嬢の復讐 ~偽りの家族も血の兄も要りません

死に戻り真令嬢の復讐 ~偽りの家族も血の兄も要りません

22.7k 閲覧数 · 連載中 ·
前世の橘結衣は、兄たちに尽くし続けた。どんな理不尽にも耐え、健気に笑顔を向け続けた結衣を待っていたのは――お披露目パーティーでの無残な死だった。

破滅を経て死に戻った結衣は、人が変わったように冷徹になる。もう二度と、あの愚かな兄たちのために心を痛めたりはしない。

しかし、冷遇し始めた途端、兄たちの態度が一変する。

「いい加減、そんな冷たい態度を取るな」と迫る社長の長男。

「俺の誤解だったんだ……」と苦悩する医師の次男。

「頼む、やり直させてくれ!」とプライドを捨てて乞うトップスターの三男。

「俺の妹はお前だけだ!」と泣きじゃくる不良の四男。

だが、結衣の答えはひとつだけ。

「みんな、失せて」

復讐と無関心を胸に、彼女は一人の男性の手を取った。

「宮本景太。今日からあなただけが、私のたった一人の『お兄ちゃん』よ」

――しかし、彼女の本当の身分が明かされた時、今度は血縁関係のある「実の兄たち」が押しかけてきて――!?

「『唯一の兄』だと……? じゃあ、俺たちはお前の何なんだ!?」
本物の令嬢は、もう誰にも媚びない ~裏切られた私の、二度目の人生

本物の令嬢は、もう誰にも媚びない ~裏切られた私の、二度目の人生

9.2k 閲覧数 · 連載中 · 神楽
前世の私は、有岡家で最も虐げられた「落ちこぼれお嬢様」だった。
執事の娘・西川安菜を哀れんで手を差し伸べた結果は、地獄。
兄たちの愛を奪われ、文字通り血を吸い尽くされ、体重は40キロを切った。
追い詰められた私は、絶望のまま窓から身を投げた。
死に際の一言は……「で? これから安菜の輸血はどうするの?」という皮肉。
……のはずだったのに。
目を覚ますと、私は三年前——安菜が泣きつかれてきた「あの日」に戻っていた。
可哀想なフリをする彼女を見つめ、私は笑った。
もう二度と、優しさなんて見せない。媚びもしない。
“親切”に立ち振る舞い、彼女を使用人部屋へ追いやって自立させてあげることにした。
彼女ばかり庇うお兄様たちの機嫌取りも、もう終わりだ。
かつて尽くしまくった元婚約者・石野星紀なんて、視界に入れる価値すらない。
勘違いしないで。
今の私は、ただの「有岡家のお嬢様」じゃないんだから——。
全能令嬢の帰還、家族が倒産?

全能令嬢の帰還、家族が倒産?

37.6k 閲覧数 · 連載中 · きりゅう りんか
万能の女神・夏川紅蓮が実家に戻ると、一家は何者かの手で破滅に追いやられた後だった。
父は冤罪で獄中にあり、母は病に伏せっている。
六人の兄たちも、ある者は身体に障がいを負い、ある者は無気力に沈んでいた。
そんな折、家に潜り込んでいた偽令嬢は状況を見るや否や一家を見捨てて姿を消し、さらに屋敷までも奪い取ろうとしていた。
世間は夏川家を「落ち目の負け犬」と嘲笑い、皆がこぞって踏みにじる。

紅蓮が静かに一声を発すれば、暗部より無数の異能の士たちが姿を現し、形勢は一瞬にして逆転する。
父は無実のまま出所し、母は健康を取り戻し、廃人同然だった長兄は再び己の足で歩き出し、残る五人の兄たちもまた紅蓮の導きによって各々の才覚を花開かせ、やがて各界を牽引する大物へと成り上がっていく。

しかし、そんな彼女を指さして嘲る者がいる。
「夏川紅蓮は地味で野暮ったい田舎者だ」と。

何を隠そう、彼女は無数の隠された顔を持つ存在。
神医の令嬢も彼女なら、国画の大家も彼女。
伝説のハッカーも彼女なら、正体不明の謎の女優も彼女。
そして、暗部を統べる首領さえも——彼女なのだ。

そんな折、頂点に君臨する名門の若様が、彼女をそっと腕のなかに抱き寄せた。

「誰が彼女を田舎くさい地味女だと言った? 彼女こそ、俺・諏訪淳行の婚約者だ」

紅蓮が流し目をひとつ送る。

「婚約、破棄しなくていいの?」

「しない」

彼が長いあいだ追い求めてきた決して手の届かない高嶺の花こそが、いま腕のなかにいる婚約者なのだ。
解消などありえない——この婚約は、死んでも解消しない。