マフィア王に再び撃たれて

マフィア王に再び撃たれて

大宮西幸 · 完結 · 27.7k 文字

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紹介

前世で、私はコルレオーネ一・ファミリーの跡継ぎ、ビアンカだった。政略結婚のためのガラパーティーで、私はサントロ・ファミリーの跡継ぎリカルドに一目惚れした。それは運命だと信じ、運命の相手を見つけたと思った私は、すべてを投げ打って彼と結婚した。

しかし三年間の結婚生活で、私は残酷な真実を思い知らされた。リカルドは冷酷で無慈悲、私をただの玩具としか扱わなかった。私は反抗しようとし、逃げようとし、FBIにまで助けを求めた。この悪夢のような結婚から必死に逃れようとして。

しかし私は、彼がどれほど恐ろしいことができる男なのかを甘く見すぎていた。

二十五歳の誕生日に、リカルドは私の「裏切り」を知った。彼は私を書斎に引きずり込み、冷たく銃を構え、銃口を私の額に押し当てた。

「お前はファミリーを裏切った、ビアンカ。これがお前の報いだ」

銃声が響き、血が辺り一面に飛び散った。かつて私を魅了したあの鋭い瞳は、今は氷のような冷たい裁きの光しか宿していなかった。自分を弁護したかった、叫びたかった。しかし喉からは金属的な甘い血の味がする血しか溢れ出なかった。

闇がすべてを飲み込んだ。

それなのに再び目を開けた時、私はなぜか三年前に戻っていた。すべてを変えた運命の政略結婚ガラパーティーの夜に...

チャプター 1

 死の感触が、まだ全身にまとわりついていた。

 喉の奥で押し殺した悲鳴と共に、私は弾かれたように目を覚ました。まるで溺れかけた者のように、貪るように空気を吸い込む。心臓が破裂しそうなほど激しく鼓動し、瞬く間に全身から冷や汗が噴き出した。

 私は死んだのか? それとも、まだ生きているのか?

 私は狂ったように額をまさぐり、そこにあるはずの弾痕を探した。リカルドの銃が刻み込んだ、あの痕跡を!

 前世の夫。サントロ一族の跡取り。かつてはあんなにも優しく「愛している」と囁きながら、最後には冷徹なまでの正確さで引き金を引いた、あの男。

 だが、指先に触れたのは無傷の肌だけだった。温かい、生きた肌の感触。

「そんな、嘘よ、嘘……」

 震えながら上体を起こし、両手で必死に自身の体を確かめる。

「血はどこ? 傷は? 私はあんなにも鮮明に覚えているというのに……」

 鼓膜にはまだ銃声が響いている。命がこぼれ落ちていくあの圧倒的な絶望感は、つい昨日のことのように生々しい。口の中に広がる鉄錆のような血の味さえ思い出せる。意識が遠のく瞬間の、あの凍てつくような虚無感さえも。

 だというのに、なぜ私は思考できる? なぜ鼓動を感じるの?

 私は何度も瞬きをし、涙が滲むほど強く自分の腕をつねった。その痛みはあまりに現実的で、泣き出したくなるほどだった。

「生きてる……私は、生きている!」

 でも、どうして? あの銃声を、リカルドの無感情な瞳を、心臓が止まる感覚を、私ははっきりと覚えているのに……。

 よろめきながら鏡の前へ歩み寄ると、そこには蒼白で、怯え、混乱した自分が映し出されていた。だが、この顔は……この幼い顔は……。

「二十二歳……?」

 震える声で呟く。

「でも、私は二十五歳だったはず……私はもう……」

 その時、ナイトテーブルの上のスマートフォンが光った。2019年10月15日、午後七時半。

 その日付を見た瞬間、雷に打たれたような衝撃が走った。

 三年前。

 婚約披露宴の夜。

 すべてが崩れ落ち始めた、あの夜だ。

 私はその場に泣き崩れ、頭を抱えて激しく身を震わせた。死に戻り? そんな馬鹿げた話があるはずがない! だが、それ以外に説明がつかなかった。

「お嬢様、大丈夫ですか?」

 ドアの外から、メイドの心配そうな声が聞こえた。

「コルレオーネ一様が階下でお待ちです。宴は八時に始まりますので」

 全身の血が凍りついた。思い出した。今夜、お父様は私をサントロ家の跡取りに紹介するのだ。やがて私を殺すことになる、あの男に。

「……すぐに行くわ」

 私は辛うじて声を絞り出した。自分でも聞き分けられないほど、掠れた声だった。

「ドレス選びをお手伝いしましょうか? 今夜はコルレオーネ一族にとって、非常に重要な夜ですから」

 重要? 笑わせないで。今夜は私の人生における悲劇の序章、死の淵へと続く最初の一歩だというのに。

 足音が遠ざかると、私は化粧台の椅子に力なく沈み込んだ。

 これが夢なのか、幻覚なのか、それとも神の慈悲なのかは分からない。だが、決してあの過ちは繰り返さない。二度と、あの冷酷な殺人鬼に心を許したりはしない。

 すべてを変えなければ。

 けれどまずは、今夜を生き延びなくては。

 深呼吸をして、無理やり心を落ち着かせる。この夜に戻ってきた以上、向き合うしかない。だが今度は、無垢な子羊のように屠殺場に引かれていくつもりはない。

「お嬢様、コルレオーネ一様が再度お呼びです」

 メイドが明らかに焦った様子で声をかけてきた。

 私は鏡の中の自分を見つめ、素早く表情を整えた。今夜は演じきるのだ。誰もが信じて疑わない、従順なコルレオーネ一の愛娘を。

 三十分後、コルレオーネ一邸の大広間は煌々とした光に包まれていた。

 クリスタルのシャンデリアが温かな黄金色の光を投げかけ、弦楽四重奏団が優雅なワルツを奏でている。着飾った招待客たちはシャンパンを片手に、上品な会話に花を咲かせていた。すべてが前世の記憶通りだった。完璧で、そして徹底的に虚偽に満ちていた。

「ビアンカ、こっちへ来なさい。紹介したい人がいるんだ」

 お父様は商人特有の張り付けたような笑みを浮かべていたが、私の肩に置かれた手には、拒絶を許さない絶対的な威圧感が込められていた。私は人波の中心へと導かれた。そこには、一人の長身の影が待ち構えていた。

 黒のオーダーメイドスーツ。完璧なプロポーション。彫刻のように整った顔立ち。その男がゆっくりと振り返った瞬間、私の呼吸は止まりかけた。

 リカルド・サントロ。

 二十八歳。男としての全盛期にあり、生まれながらの支配者としてのオーラと、危険なカリスマ性を纏っている。その瞳が私を捉えた瞬間、前世での死の記憶が津波のように押し寄せた――。

「裏切ったな、ビアンカ」

 銃口の冷たさ。

 炸裂音。

 溢れ出す鮮血。

「いやっ!」

 私は反射的に後ずさり、顔色は瞬時に蒼白になった。

 くそっ! 自制できると思っていたのに、彼を前にした途端、すべてが吹き飛んでしまった!

 ダンスホールが静まり返り、すべての視線が私に集まる。お父様の表情が瞬時に曇り、その瞳に警告の光が宿った。

「コルレオーネ一嬢?」

 リカルドが眉を顰める。低く、磁力のある声だった。

「気分でも優れないのかな?」

 彼は一歩踏み出し、私を支えようと手を伸ばしてきた。私の命を奪ったのと同じ手が、そこにある。私は悲鳴を上げそうになるのを堪え、激しく身を震わせた。

「急に、吐き気が……。お手洗いに失礼します」

 私は早口でまくし立てた。声の震えが隠せない。

「騒がせて申し訳ありません」

 誰の返事も待たず、私は背を向け、なりふり構わずその場から逃げ出した。背後の囁き声や、お父様の怒号も無視して。

 会場の外の廊下は薄暗く、冷え冷えとしていた。壁のブラケットライトが頼りない光を落としているだけだ。私は壁に寄りかかり、荒い息をつきながら、心臓のパニックを鎮めようと必死だった。

 やった。あの男から逃げた。前世の「一目惚れ」という罠から逃げ延びたのだ。

 彼を避け続け、この政略結婚を拒み続ければ、あるいは運命を変えられるかもしれない。

 その時、背後で柔らかな足音が響いた。

 心臓が口から飛び出しそうになりながら振り返る。廊下の向こう端に、幽霊のようにリカルドの姿があった。その長身のシルエットは、闇の中で一際恐ろしく見えた。

「なぜ、ついて来たのですか?」

 後ずさりながら問う。声に滲む恐怖は隠しようもなかった。

「会場での君の反応が……奇妙だったからだ」

 リカルドはゆっくりと言葉を紡ぎながら近づいてくる。その瞳は底なしの渦のように深かった。

 一歩近づかれるたびに、心臓が早鐘を打つ。私は冷たい壁に背中を押し付け、必死に平静を装った。

「ただ気分が悪いだけです。それ以上の意味はありません」

「そうかな?」

 彼は一メートルの距離で立ち止まり、わずかに小首を傾げて私を射抜くように見つめた。

「だが、君の反応は……ある感覚を思い出させた。既視感のようなものを」

 その言葉は、雷のように私を打った。私は愕然として彼を見つめ返した。

「何を……おっしゃっているのですか?」

 努めて冷静な声を装ったが、震える声が内面の動揺を裏切っていた。

 リカルドは答えず、ただ静かに私を観察していた。その瞳の奥で、読めない何かが揺らめいている。耳をつんざくような沈黙の中、互いの荒い呼吸音だけが響いた。

 永遠とも思える時間の後、彼は一歩下がってスーツの襟を正した。

「私の考えすぎかもしれないな」

 彼の口調は礼儀正しい、他人行儀なものに戻っていた。だが、その視線は私を捉えて離さない。

「しかし、コルレオーネ一嬢。両家が今夜の会合を設けた以上……我々はまた会うことになるだろう」

 それだけ言い残し、彼は踵を返して去っていった。私を一人、震えるまま廊下に残して。

 今の言葉は、どういう意味だったの?

 私は爪が掌に食い込むほど拳を握りしめた。両家が何を画策していようと、二度とあの男の生け贄にはならない。

 今生こそ、結末を完全に書き換えてみせる。

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