紹介
そんな私を、夫はライブ配信で自慢げに語る。
「女ってのは、これくらいの自覚を持つべきだよな」
すると、あるコメントが彼の目に飛び込んできた。
【逃げろ、早く!夜中に化粧するのは怨霊だけだ。その時間帯が最も怨念が強く、化粧ノリも良くなるからな!】
私は顔を覆い、妖しく笑う。
あらやだ、コンシーラーで隠し忘れてた。死斑が浮き出てきちゃったじゃない。
チャプター 1
私の夫はレイプ犯だ。だが、私はそんなこと、これっぽっちも気にしていない。
「俺を熱湯で殺す気か? これぐらいの湯加減も調整できないのか。さっさとカメラの前に行って土下座しろ!」
私の夫、佐藤友明は、VTuberの配信ルームで一万人以上の視聴者を前にしてそう命じた。
理由はただ一つ。私が差し出したお茶が少し熱すぎて、彼の大切な唇を焼いてしまったからだ。
私は何の弁解もせず、従順に湯呑みを置き、配信カメラの前へ歩み寄ると、ゆっくりと膝をついた。
「申し訳ございません、友明くん。私が至らないばかりに、湯加減を見誤ってしまいました」
その瞬間、コメント欄が沸き立った。画面いっぱいに、私の気概のなさを罵り、その不幸を哀れみつつも、抵抗しないことへの怒りが流れていく。
『高学歴美人なのにDV男と結婚して、結納金まで自分から払うとか、今の若者はどうなってんの?』
『閲覧数稼ぎのために、真冬に妻へ浴衣を着せて雪の中で茶道をさせるとか、マジで鬼畜の所業だろ』
『もう言うなよ。前に弁護士が連絡とって離婚訴訟を勧めようとしたらしいけど、本人が拒否したんだと。あの男にゾッコンらしいぜ』
佐藤友明の配信は、主に私が彼ら一家三人に奉仕し、世話をする日常を映すものだ。私を公然と凌辱することで閲覧数を稼いでいるのだ。
彼が立ち上がることを許した時、膝のファンデーションが一部剥がれ落ち、その下から青紫色の死斑が覗いていた。
あら。私は慌ててスカートの裾でそれを隠した。
生身の人間用のファンデーションは、やっぱり持ちが悪すぎる。
夏場になるとすぐに落ちてしまうのが難点だ。幸い、配信カメラには映らなかったようだ。私は平然として、膝下まで隠れるロングスカートに着替えた。
カメラの前の私は、化粧も完璧で、スタイルも抜群。何より、逆らうことを知らず、文句一つ言わない。これには男性視聴者たちが興奮し、佐藤友明に「妻の調教法」の秘訣を乞うコメントが殺到していた。
佐藤友明は得意げに、自身の『妻操縦術』を語り始めた。
「女の扱いってのはな、甘やかさないことが肝心なんだよ」
彼は鼻高々に続ける。
「俺が綺麗な女が好きだと言ったら、こいつは俺の前ですっぴんを見せるのを怖がるようになった。いつも俺が寝た後に化粧を落とし、起きる前に化粧をするんだ」
「妻として、夫の視覚的欲求を満たすのは最低限の務め、女の徳ってやつだろ」
その時、ある特殊なコメントが佐藤友明の注意を引いた。
『お前の嫁、怨霊体質じゃないか? 死人だけが真夜中に化粧をするんだ』
佐藤友明はそのコメントを指差すと、腹を抱えて大笑いした。
「なに寝言言ってんだ、こいつは?」
『奥さん、午前二時から三時頃に化粧してないか? その時間は陰気が最も強く、化粧のノリが一番いいからだ!』
佐藤友明の笑顔が凍りついた。
確かに、彼は私の素顔を見たことがない。それに目が覚めるたび、私はいつも完璧な化粧をして枕元に立っているからだ。
『結婚して三年になるだろ?』
『そろそろ怨霊体の限界期に近いな。怨霊体は生気を吸う必要がある。彼女、いつもお前に付きまとってこないか? 夜の営みの後、熱が出たり風邪を引いたりしないか?』
佐藤友明は結婚後の体調の変化を思い返した。以前は頑丈で、病気などほとんどしなかったのに、私と結婚してからは原因不明の発熱や、説明のつかない疲労感に襲われることが増えていた。
『怨霊に涙はない。彼女が泣いたところを見たことあるか?』
佐藤友明は、これには少し狼狽した。
三年間、彼がどれほど罵倒し、恥をかかせようとも、私は一滴の涙も流したことがなかったからだ。
『私は陰陽師だ。もし信じるなら、今夜、彼女のメイク落としに神社の御幣の粉末を混ぜてみろ』
『怨霊体がそれを使えば、顔が腐り落ちる。人間か怨霊か、試せばすぐに分かるはずだ』
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こうして、元囚人の彼女と植物状態の夫との、予期せぬ愛の物語が幕を開ける。
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今、ようやく彼から離れる機会を得たというのに、どうして手放せようか。













