紹介
手術室の外、ストレッチャーの上で目を覚ました。出血し、意識は朦朧としていた。夫が私の命を救ってくれていると思っていた。そして扉の向こうから、彼の声が聞こえてきた。
「赤ん坊はもうダメだ。右手も終わりだ――どっちにしろ彼女のキャリアは終わった。今すぐ腎臓を摘出して、理奈に移植しろ」
母が同意した。父は金曜までに私の建築設計案を理奈の名義に変更しろと彼に告げた。
理奈。私が行方不明だった二十年間、両親が育てた妹。身体が衰弱している妹。そして夫が、私と結婚していた間ずっと、本当は愛していた妹。
私はあの手術台で死ぬはずだった。何も聞こえないはずだった。
でも、コートのポケットに入っていた携帯電話。ボイスメモアプリは、ずっと録音を続けていた。
そして今、私には選択肢がある。
チャプター 1
妊娠四ヶ月のときだった。トラックが私の乗る車の側面に突っ込んできたのは。
病院へと向かう途中、意識が遠のいたり戻ったりする中で、頭上から夫の浜田圭太の声が聞こえた。切羽詰まった、震える声だった。「助けてくれ。いくらかかってもいい、妻を助けてくれ」。右手は手首から先の感覚がなくなっていたが、父はすでに電話にかじりつき、この街で最高の外科チームを手配していた。
私は思った――ああ、よかった。みんながついていてくれる。私はきっと大丈夫だ、と。
だが、聞こえてきたのはそれだけではなかった。
半分開いた手術室のドアの向こうから、夫の声が聞こえてきたのだ。
「先生。赤ちゃんはもうダメなんでしょう。彼女の右手も完全に潰れている――もう二度と図面は描けない。どのみち、彼女のキャリアは終わりです」
平坦な声だった。たった今、我が子を失った男の悲哀など微塵も感じられない。
「理奈の腎不全はもう限界です。琴音はまだ麻酔で眠っている。今すぐ彼女の右腎臓を取り出して、理奈に移植してください」
心臓が肋骨を激しく打ち据えた。頭元のモニターがそれに合わせて大きく跳ねる。
この人は、何を言っているの?
我が子を失ったばかりの妻から腎臓を切り取って、妹に差し出せって?
続いて母の声が聞こえた。早口で、どこか苛立っているようだった。「圭太さんの言う通りよ。琴音はどうせもう何も描けないんだから。腎臓を二つ持っていても宝の持ち腐れよ。理奈は私たちが手塩にかけて育てた娘……絶対に死なせるわけにはいかないわ」
「それに、琴音のあの図面だが」父の声は少し潜められていた。「東都中央広場大賞にノミネートされたばかりのやつだ。圭太、金曜日までに署名を理奈の名前に書き換えておきなさい。理奈が助かれば、あの子はこの業界のトップに躍り出ることができる」
モルヒネのせいで頭がおかしくなったのかと思った。
これが私の家族?
これが私が五年間愛し続けた男?
七年。生まれてすぐに私を手放したこの家族に認めてもらおうと、必死にもがいてきた七年間。夜を徹して図面を描き、得られた賞やボーナスはすべて彼らの手に渡してきた。まるで、捨てられないように縋りつく子供のように。必死に頑張れば、いつか彼らも、理奈を愛するように私を愛してくれるのではないかと思っていた。
それなのに今、私は手術室の前のストレッチャーに寝かされ、実の親と夫は廊下で、私をまるで残り物のように切り分けようとしている。私の臓器も、これまでの人生の結晶も、すべてを。
「しかし――そういうわけにはいきません。ご家族の正式な同意記録が必要ですし、何より患者ご本人の……」執刀医は言葉を濁した。
「私は彼女の夫です。私がサインします」圭太が遮った。「何があっても私が責任を取ります。理奈が助かるなら、琴音の健康が少し損なわれるくらい何だと言うんです? 琴音はこれくらい、理奈に報いる義務がある」
報いる義務? 二十年もの間、私の名前と居場所を奪い続けたことに? 圭太が私を少し長く見つめるたびに、仮病を使って倒れたふりをしてきたことに?
冷たい涙が頬を伝い、傷口に染みた。焼けつくように痛かった。
その時、コートのポケットの中でスマートフォンが震えるのを感じた。
画面は放射状にひび割れていたが、電源はまだ入っていた。今朝、東都中央広場の現場で環境音を録音していたのだ。ボイスメモは一度も止まっていなかった――衝突の瞬間も、救急車の中も、そして今、この廊下でも。
彼らが口にした言葉は、一言残らず、すべて録音されていた。
私が目を覚ましたのは、三日後だった。
目を開ける前から、右脇腹の痛みがすべてを物語っていた。そこにあったはずの何かが欠落している。彼らが奪い去ったのだ。
圭太はベッドの傍らで私の左手を握っていた。その目は赤く充血していた。
「琴音。ああ、よかった。気がついたんだね」まるで図ったかのように、彼の声は震えていた。「本当にごめん。君を守れなかった。赤ちゃんを、救えなかった」
彼は手首の裏で顔を拭った。
「事故は、現場で聞いたよりもずっと酷かったんだ。衝撃で君の右の腎臓が破裂してしまってね。医者もどうしようもなかったんだよ。そうしなければ、君の命が危なかった」
私は彼を見上げた。五年間愛し続けた、この顔を。
なんて美しい嘘だろう。
もしあのドア越しに彼の言葉を聞いていなかったら、私はこの嘘をすべて信じ込んでいただろう。手を伸ばし、彼の涙を拭ってあげたはずだ。
「大丈夫よ」私は瞳の奥の感情を悟られないよう、伏し目がちに言った。「私は生きている。それが一番大事なことだもの」
彼は私の額にキスをした。私は何も感じなかった。
毛布の下で、再びスマートフォンが震えた。新着メッセージだ。
「私のオファー、まだ考えてくれていますか?」
黒澤宗介。二年前、国際最高会議のコンペで私に敗れた際、部屋の誰よりも早く立ち上がって拍手を送ってくれた男だ。それ以来、彼は父の会社から私を引き抜こうとずっと声をかけてきていた。
私はこれまで四回、それを断ってきた。
私は画面を見つめ、そして右手の親指で文字を打ち込んだ。
「お受けします」
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三兄:「新薬の開発が遅々として進まないのはなぜだ?」――彼女が治験をしなくなったからだ。
四兄:「どうしてこんなにつまらない脚本しか上がってこない?」――彼女がもう執筆しないからだ。
五兄:「この義肢は、なぜこんなに出来が悪いんだ?」――彼女が製作をやめたからだ。
六兄:「なぜチームが負けた?」――彼女が脱退したからだ。
兄たちは地に膝をついて許しを請うた。「戻ってきてくれ。俺たちこそが、血を分けた本当の家族じゃないか」
彼女は絶縁状を兄たちの顔に叩きつけ、冷ややかに笑った。
「車が壁にぶつかってから、ようやくハンドルを切ることを覚えたのね。株が上がってから、ようやく買うことを覚え、罪を犯して判決が下ってから、ようやく悔い改めることを覚えた。残念だけど、私は――許さない!」
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育ての親の一家に家を追い出されたあの日、私は微笑みを浮かべながら、奴らが施しとしてよこした金をゴミ箱へと投げ捨てた。
誰も想像すらできないだろう。この私が、数々の名門貴族や権力者たちが大金を積んで列をなし、首を長くして診察を待つ伝説の名医——【暁】だなんて。
私が時価総額数十億ドルのファッション帝国を裏で支配していることも、ウォール街の株価をたった一回の取引で大暴落させられることも、誰も知らない。私はその正体を、この平凡で冴えない素顔の裏にすべて隠し持っていた。
さらに劇的なことに、私の実の親はこの街で頂点に君臨する最高峰の大富豪だった。
そして私の婚約者——すでに顔を合わせているにもかかわらず、その正体を知らなかったあの男こそ、この街の誰もが名前を聞くだけで震え上がる、ビジネス界の冷酷な死神:梅原晴琉だったのだ。
ある日、彼は私の手を執り、ゆっくりと距離を詰めると、耳元で低く囁いた。
「俺のこの鼓動、今なら感じられるか?」
私は至って真面目な顔で彼の胸に手を当て、大真面目にこう返した。
「心拍数は確かに少し高めですが、非常に健康的です。心配ありませんよ」
彼は一瞬呆気にとられ、それからふっと吹き出した。その瞬間の彼の笑顔に、私の心臓もなぜかドクンと跳ねた。それは、自分自身でも説明のつかない初めての衝動だった。
だが、彼が私の真実に一歩ずつ近づくにつれ……私の心は揺らぎ始めている。自分の最後の秘密を、あとどれくらい隠し通せるのだろうか。
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原田麻友:「……私も知りたいわ。」













