心理学少女の逆襲~マフィア監獄からの奇跡の脱出~

心理学少女の逆襲~マフィア監獄からの奇跡の脱出~

猫又まる · 完結 · 30.0k 文字

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紹介

心理学を専攻していた新井紬。
人身売買の被害者を救うはずだった――自分がその被害者になるまでは。

「色仕組み」として働かされることになった彼女。
心理学の知識を悪用して金持ちを誘惑し、破産に追い込む日々。

三週間の完璧な計画で記録破りの2000万円をゲット!
――標的の男が銃を持ってカジノに乗り込んでくるまでは。

「誰がお前に、他の男を誘惑する方法を教えた!?」

衝撃の真実――彼はマフィアのボス・伊藤翔の息子だった!

父と息子の血で血を洗う抗争が勃発。
ソフィアは意図せず「親子戦争」の引き金に。

完全密室の監獄。出口なんてどこにもない。
死を覚悟したその時――
最大の逆転劇が始まる!

チャプター 1

 新井紬視点

 頭上のクリスタルシャンデリアが目も眩むほどの光を放ち、このクズ共をまるで天使のように照らし出している。

 クソッ、なんて皮肉な光景だろう。

 E市の最もイカした地下カジノのVIPルーム、午前二時。誰もが私に視線を注いでいた。この感覚は嫌いだったが、楽しんでいるフリをしなければならなかった。

「新井紬に!我々の金のなる木に感謝を!」

 伊藤翔がシャンパンを掲げた。

「一晩で2000万――新記録だ!」

 着飾った犯罪者の一団と飾り物のような女たちが拍手を始めた。私は無理やり偽りの笑みを浮かべ、顔の筋肉がこわばるのを感じた。

 この野郎ども、無理やりやらされてるんじゃなかったら、誰がお前らなんかとこんな芝居をするもんか。

「ありがとうございます」

 私はシャンパンを受け取ったが、指先がかすかに震えていた。千泉大学の心理学教授たちが今の私を見たら、きっと怒りで憤死するだろう。

 伊藤翔がごつい手を私の肩に置いた。彼のコロンは吐き気がするほど強烈だった。

「天才さん」

 彼は言った。言葉の訛りが一層濃くなっている。

「心理学は銃弾よりもたちが悪い凶器になるってことの、生きた証拠だな」

 私は頷き、演技を続けた。

「人は常に弱みをさらけ出すものです。ただ、それをどう聞くかを知っていればいいだけ」

 その部分は、実は本当のことだった。千泉大学で最初に学んだこと。私の人生が完全に地獄に落ちる前――人間から金儲けの道具に成り下がる前の話だ。今や私はその知識を使って、金持ちの男たちの弱点を探り、私に夢中にさせ、自ら進んで財布を空にさせている。

「2000万!女王の再来だ!」

 誰かがグラスを掲げて叫んだ。

 隅にいる木村航平に目をやった。この男は石のようだった――決して笑わず、私を気に入っているフリさえしない。伊藤翔のボディガードとして、彼は私をまるで死人のように見ていた。あの黒いスーツの下は筋肉しかなく、その黒い瞳は肌が粟立つような感覚にさせた。

 クソッ、私はすぐに視線を逸らした。木村航平はいつも、私のすべてを、心の奥底の恐怖までも見透かしているような気がしてならなかった。

「スピーチ!スピーチ!」

 群衆が囃し立て始めた。

 私はかすかに微笑み、グラスを掲げた。

「人間の弱さに。そして偉大なる伊藤家に!」

 この馬鹿どもは腹を抱えて笑っている。今私が言った言葉に、自分たちも含まれているとは露ほども知らずに。

 伊藤翔の指が、痛いほど私の肩に食い込んだ。

「こんなに若くて、こんなに賢い」彼は言った。

「だからお前は俺の――」

 突然、音楽が止んだ。

 一瞬の静寂が空気を凍りつかせた。誰もが一時停止ボタンでも押されたかのように動きを止め、グラスは宙に浮き、笑みは顔に張り付いたままだった。

 バァン!

 重い両開きのドアが乱暴に押し開けられ、壁に激突する轟音で鼓膜が痛んだ。

 一人の男が激昂した獣のように飛び込んできた。長身で黒髪、伊藤翔と同じ氷のような青い瞳をしているが、その瞳は激しい怒りに燃えていた。

 そして、銃が見えた。

 黒い銃口が、まっすぐ私の心臓に向けられていた。

「誰も動くんじゃねえ!」

 彼は吼え、その声でグラスが震えた。警備員たちが即座に銃を抜き、部屋全体が殺伐とした睨み合いの場と化した。

「一ミリでも動いてみろ、この女の頭を吹っ飛ばしてやる!」

 伊藤翔の手が、私の肩から滑り落ちた。

「伊藤裕太?気でも狂ったか?」

 私の血は、瞬時に凍りついた。

 伊藤裕太?この三週間、私が誘惑してきた映画監督?あの優しくて、思慮深い金持ちの坊ちゃんが?

 彼の目は私を捉え、その憎悪は私を溺れさせる毒のようだった。

「お前のその完璧な『兵器』ちゃんに聞いてみな」

 彼は嘲るように言った。

「この三週間、彼女がどんなゲームをしていたのかをな」

 いや。こんなこと、ありえない。

 彼の苗字を知らなかった。彼が、まさか――

「一度に複数の男を誘惑するなんて、誰に教わった?」

 一言一言が、弾丸のように私を撃ち抜く。

「この年寄りのクソ野郎にでも教わったのか?」

 世界がぐらぐらと揺れ始めた。胃の中のものがせり上がってくるのを感じた。

「わ、私は……知らなかった……」

 私はどもった。

「何を知らなかったって?」

 伊藤裕太が顔に青筋を立てて怒鳴った。

「俺が伊藤翔の息子だってことを知らなかったとでも言うのか?」

 部屋中に息を呑む音が響き渡った。伊藤翔が一歩前に出たが、その顔は灰のように青ざめていた。

「なんてことだ……お前が彼女の目標だったのか?」

 伊藤裕太は、ついにその殺意に満ちた視線を私から父親へと移した。

「驚いたか!」伊藤裕太は唸った。「お前の心理兵器ちゃんは何週間も俺を操っていたんだぞ。何が欲しかったんだ?金か?それともただ俺に恥をかかせたかっただけか?」

 伊藤翔は伊藤裕太に向かって歩み寄り、手を差し伸べた。

「銃を下ろせ、裕太。これは本当に誤解なんだ」

「誤解?」

 伊藤裕太は乾いた笑い声を上げた。

「お前のクソみたいな犯罪帝国が誤解だっていうのか?彼女が俺に何て言ったか知ってるか?トラウマを負った被害者について論文を書いてるんだと。なんて皮肉な話だ!」

 私はそこに立ち尽くし、完全に凍りついていた。心臓が胸に激しく打ちつけられ、一拍ごとに爆発しそうだった。

 伊藤翔の顔が険しくなった。

「伊藤裕太、お前は状況を理解していない」

「完璧に理解してるさ!」

 伊藤裕太は叫び、引き金にかかった指に力を込めた。

「お前は一体何人の人間を、こんな汚い手口で破滅させてきたんだ?今度は自分の後継者さえも容赦しないのか?」

 空気は刃物で切り裂けそうなほど張り詰めていた。私は、父と息子がゲームテーブル越しに睨み合うのを見ていた。

 私が反応するより先に、背後で風が巻き起こるのを感じた。木村航平の手が鋼の罠のように私の二の腕を掴み、無表情のまま私を後ろへ引きずった。

「親分」

 木村航平は冷たく言った。

「ご命令を」

 伊藤翔は私を見なかった。彼の意識は完全に伊藤裕太に向いていた。

「彼女を奥へ連れて行け。この……家族の問題は俺が片付ける」

 突然、足の力が抜け、私は床に崩れ落ちた。

「お願いです!」

 私は伊藤翔のズボンの裾を掴み、涙が瞬時に顔を伝った。

「本当に知らなかったんです!彼があなたの後継者だなんて、知りませんでした!」

 伊藤翔は私を見下ろし、その目はまるでゴミを見るかのように冷たかった。

「離せ」

 私は伊藤裕太の方を向き、必死に懇願するような目で彼を見た。床にひざまずく私を見て、彼は完全に凍りついた。

 怒り?憎しみ?それとも……痛み?

「待て!」

 伊藤裕太が突然叫び、再び銃を上げたが、今度は私ではなく、伊藤翔に向けられていた。

「親父、やめろ!」

 伊藤翔は振り返り、その目に危険な光が宿った。

「伊藤裕太、口を出すな」

「クソッ、彼女も被害者だ!これは彼女のせいじゃない!」

「彼女は欠陥品だ」

 伊藤翔は冷たく言った。

「処分されるべきだ」

「彼女は道具じゃない!人間だ!」

 伊藤裕太は一歩前に踏み出した。

「本当に俺を想うなら、彼女を解放しろ!」

 伊藤翔の顔が恐ろしいほどに暗くなった。彼は警備員たちに合図した。

「もういい」

 即座に、四人の男たちが異なる方向から伊藤裕太に襲いかかった。伊藤裕太は銃を上げたが、一人でこれだけの訓練されたボディガードを相手にできるはずもなかった。

「彼女を解放しろ!」

 伊藤裕太は抵抗しながら叫んだ。

「新井紬、すまなかった!」

 一人の警備員が彼を背後から捕まえ、もう一人が彼の銃を奪い取った。伊藤裕太は必死にもがき、その目は私から離れなかった。

「彼女にそんなことをするな!彼女は何も悪いことしてない!」

 伊藤翔が彼の顔を平手打ちした。その音は部屋中に響き渡るほど大きかった。

「我々の一族の名を汚しおって!」

「お前みたいな化け物になるくらいなら、汚名を着る方がマシだ!」

 伊藤裕太はもがき、吼えた。

「こいつをここから連れ出せ!」

 伊藤翔は怒鳴った。

「閉じ込めておけ!」

 警備員たちが伊藤裕太をドアの方へ引きずり始めた。彼は最後まで抵抗し、決して私から目を離さなかった。

「新井紬!必ず方法を見つける!」

 彼の声が遠ざかっていく。

「必ずだ!」

 ドアがバタンと閉まった。部屋は死のような静寂に戻った。

 伊藤翔は私を見下ろした。

「さて、もう誰もお前を救えない」

 木村航平が私の髪を掴み、無理やり立たせた。鋭い痛みに私は悲鳴を上げた。

「やめて!やめて!」

 私は必死にもがき、爪が床を引っ掻いて鋭い音を立てた。

 だが、伊藤翔はすでに背を向け、まるで私がもはや存在しないかのように他の者たちと話し始めていた。

 木村航平は、まるで死んだ犬を引きずるように、私が最も恐れていたあのドアに向かって引きずっていった。

 いや!神様、助けて!

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