隣の美人トレーナーに誘惑されちゃった

隣の美人トレーナーに誘惑されちゃった

拓海86 · 完結 · 26.9k 文字

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紹介

新しい街でジム提携を探していた私のもとに、隣に住む超絶イケメントレーナーからDMが!これって運命?

でも初日の夜、隣の家から聞こえてきたのは……
「うぁあああ!」という苦痛の叫び声
「やめろ!」という怒号
何かを激しく叩く音...

理性では「逃げて!」と叫んでいるのに、あの彫刻のような筋肉美と翠の瞳に心を奪われてしまう私。特に、あの大きくて温かい手でトレーニング指導をされると、ドキドキが止まらなくて...♡

でも、もしかして彼って本当に危険な人なの...?

チャプター 1

 最後の段ボール箱をリビングの床に下ろし、額の汗を拭う。梅田谷に来て三日。ようやく、ここなら本当にうまくやっていけるかもしれない、と感じ始めていた。羅原の部屋と比べるとずいぶん狭いけど、家賃は文字通り半額だ。それに、寝室の窓から見える山の景色は、間違いなくキラーコンテンツになる。

 スマホがインスタグラムの通知で震えた。フォロワーたちはもう新しい場所からの投稿はいつかと聞いてきている。【もうすぐね】と私は返信していた。まずはいいスポットを見つけないと。

 ノートパソコンを開き、近所のジムを調べ始める。チェーン店はどこも退屈で無機質な感じ。そんな中、興味を引くものを見つけた。

 佐藤ファミリーフィットネス。レビューは軒並み星五つなのに、不思議なことに写真はほとんどない。数枚の写真は基本的な器具と、民家のような建物が写っているだけ。あるレビューが目に留まった。【今までで最高のトレーニング。タケアキさんは限界まで追い込んでくるけど、後で絶対に感謝することになる】別のレビューにはこうあった。【美奈子さんの細部へのこだわりは信じられないくらい。死ぬ気でやらないとフォームを完璧に直してもらえないわ】

 死ぬ気で? 大げさだな。でも、このレビューに込められた情熱こそ、私が求めていたものだ。本物で、家族経営で、確かな結果が出る。

 スマホがピンと鳴って、通知が表示された。インスタグラムだ。

@佐藤涼_トレーナー【真優さん、こんにちは! 梅田谷に引っ越して来られたのを見ました。うちの家族経営のジムで、ぜひコラボしませんか】

 スマホを落としそうになった。どうして私がここにいるって、もう知ってるの?

 彼のプロフィールをクリックして、息を呑んだ。この人、イケメンすぎる。本気で。

 ダークブラウンの髪に、カメラ越しにこちらを見透かすような緑色の瞳。そして、フィットネス雑誌から抜け出してきたような身体。プロフィールはシンプルだった。【NASM認定トレーナー|佐藤ファミリーフィットネス|あなたが最強の自分になる手助けをします】

 投稿はすべてプロのトレーニングコンテンツ。上半身裸のセルフィーも、サースト・トラップもない。純粋なフィットネスの知識と、クライアントの変化だけ。腹筋のことしか頭にない羅原のフィットネスインフルエンサーたちと関わってきた後だと、すごく新鮮に感じた。

 でも、何かが引っかかる。完璧すぎる。ルックスが良すぎる。私の経験上、こういう見た目の男はたいてい自覚があるものだ。

 考えすぎよ、真優。これこそ、私がここへ引っ越してきた目的のチャンスじゃない。

 私は返信を打ち込んだ。【こんにちは! ご連絡ありがとうございます。ぜひジムを見学させていただきたいです。いつがご都合よろしいですか?】

 返事はすぐに来た。【明日の午後はいかがでしょう? 3時とか。ジムを案内しますし、提携の可能性についてもお話しできます】

 完璧です。住所を送っていただけますか?

 送られてきた場所は、文字通り隣だった。私のアパートのすぐ隣。どうして今までジムがあるなんて気づかなかったんだろう? グーグルマップを立ち上げる。衛星写真には、大きな裏庭のある普通の家が写っているだけだった。

 よし、ちょっと変だ。でも、自宅を改装したのかもしれない。家族経営ってそういうものだし。それに、コンテンツを撮影するにはすごく便利だろう。

 私は会う約束を確定させ、その夜の残りは荷解きと明日の服装選びに費やした。可愛くて、でもスポーティー。プロフェッショナルだけど、親しみやすい感じ。

 午後十一時になる頃には、ようやくベッドに入る準備ができた。引っ越して以来、純粋なアドレナリンだけで動いてきたから、どっと疲れが押し寄せてきた。歯を磨き、パジャマに着替え、布団に潜り込む。

 その時だった。あの音が聞こえたのは。

「この役立たず! 腕立て二十回だ!」

 私は飛び起きた。声は大きく、怒りに満ちていて、隣の家から聞こえてくる。佐藤家だ。

「痛みを乗り越えろ! 容赦するな!」

 心臓が早鐘を打ち始める。一体、あそこで何が起こっているの?

 すると、別の声が響いた。女性の声だが、同じくらい激しい。「止まるな! 燃え尽きるのを感じろ! 完璧なフォームで! もっと深く!」

 スマホを掴んで時間を確認する。午後十一時七分。誰がこんなに遅くにトレーニングするの? そして、どうしてこんなに……暴力的に聞こえるの?

 声はさらに数分続き、やがて静かになった。私がようやくリラックスし始めた時、新たな音が始まった。

 ドンッ。ドンッ。ドンッ。

 何かを殴る音。誰かが何かを、あるいは誰かを殴っているような。

 そして最悪の部分が訪れた。男の苦痛に満ちたうめき声、それに続いて、本物の苦悶としか思えない音が聞こえた。

「反撃しろ! もっと強く殴ってこい!」

 なんてこと。

 ベッドの上で凍りついたまま、誰かが殴られているとしか思えない音を聞いていた。うめき声はどんどんひどくなる。もっと必死に。もっと痛々しく。

 これって、ファイトクラブか何か? 地下ボクシング?

 頭が混乱し始める。あの完璧で、話がうますぎる涼は、私が引っ越してきてすぐにメッセージを送ってきた。彼は私がどこに住んでいるか正確に知っていた。そして明日、彼の「ファミリージム」に来てほしいと言っている。それはどうやら、真夜中に人が殴られているただの家のことらしい。

 音はさらに二十分続いた。殴る音、うめき声、叫び声。時には複数の声が一度に聞こえることもあった。

 これは絶対に普通のトレーニングの音じゃない。

 110番に電話しようとスマホを握りしめた。でも、ためらった。なんて言えばいい? 「こんにちは、お隣さんがうるさいんです」? 実際に何が起きているかを見たわけじゃない。もしかしたら、彼らはただすごく熱心な夜型人間なのかもしれない。

 でも、あのうめき声はとてもリアルだった。とても痛そうだった。

 スマホが通知で光った。

@佐藤涼_トレーナー【順調に落ち着いているといいですね。明日、うちの場所をお見せするのが待ちきれません。良い夢を😊】

 私はメッセージを凝視した。このタイミングは、今となっては不吉に感じる。隣で何かが起こっている真っ最中に、彼はこれを送ってきたのだ。

 良い夢を。これって、何かの脅し?

 私はメッセージをスクリーンショットし、彼のプロフィールをもう一度スクロールして、見逃していた危険信号を探した。でも、すべてがまだ普通に見える。プロフェッショナルで、クリーンだ。

 隣からの音は、真夜中頃にようやく止んだ。私はその後一時間、小さな物音にいちいち飛びつきながら、目を覚ましていた。

 もしかしたら、考えすぎなのかもしれない。彼らは本当に、ちょっと問題のあるメソッドを使う夜のトレーナーなだけかもしれない。真剣なアスリートの多くは遅い時間にトレーニングする。それに、あのレビューにも激しいコーチングのことは書いてあった。

 でも、私の直感が、これは型破りなトレーニング方法以上の何かだと告げていた。

 羅原にいる親友とのテキストのやりとりを開く。

 私【ねえ、私のイケメンな隣人、地下ファイトクラブをやってるかもしれないんだけど】

 咲紀【wwwwww、何それ? まだ三日しか経ってないのに、もうドラマ見つけてるの?】

 私【本気だって。隣で人が殴られてるの聞いたんだから。で、明日、そこの『ジム』を見学することになってるの】

 咲紀【真優…。普通の人みたいに、実録犯罪ポッドキャストでも聴いてたら? 自分でその中に入っていくんじゃなくてさ】

 彼女の言う通りかもしれない。私には想像力を暴走させる癖があった。クリエイティブな仕事の性だ。

 でも、あの音は本物だった。そして、涼からの完璧なタイミングのメッセージは、偶然にしては出来すぎているように感じた。

 スマホを置き、目を閉じようと試みる。明日になれば、佐藤ファミリーフィットネスが本当は何なのかわかるだろう。

 願わくは、その物語を語るために、私がまだ生きていますように。

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