ライブ配信で発覚した婚約者の浮気

ライブ配信で発覚した婚約者の浮気

大宮西幸 · 完結 · 34.5k 文字

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紹介

匿名のリンクをクリックした瞬間、私の世界は崩れ落ちた。そこには完璧だと思っていた婚約者が、ライブ配信で私の親友と絡み合っていた。

彼は私の命を救うために骨髄を提供してくれた英雄だった。それなのに今、最も卑劣な裏切りで私たちの未来の結婚生活を汚していた。これは二人の歪んだゲームだと思っていたが、深く調べるうちに真実が明らかになった。三年前の「運命の」出会いは、すべて計算された嘘だったのだ。

私の救世主、私の運命の人、私の子供の父親……すべてが偽りだった。今、私は夜陰に紛れて姿を消した。彼らが知らない秘密——彼の子供を抱えて。あの小さなショーは始まりに過ぎない。私の復讐?これからが本番だ。

チャプター 1

美咲視点

 ノートパソコンの画面に映し出された、過密な座席表を凝視する。奏介の両親の名前の上で、私の指先は迷い続けていた。高砂の左側に配置すべきか、それとも右側か?

 この問いが、もう三十分も私の頭を悩ませている。天井から床まで続く大きな窓からは、街の深夜の灯りが溢れ出し、キーボードを冷ややかな光で照らしていた。

 十日。あとたった十日で、私は松本奏介の妻になる。

 三年前、骨髄の適合者が見つかったと医師に告げられた時、夢でも見ているのかと思った。二年におよぶ白血病との闘いで、私は希望を捨てかけていたからだ。その匿名のドナーは、私に二度目の命を与えてくれただけではない。一年後の対面を経て、私のかけがえのない人となってくれたのだ。

 ピンッ――

 不意の通知音が、私を我に返らせた。

 メール? こんな時間に?

 眉をひそめつつ、受信トレイを開く。差出人も件名もないメールが、一番上に鎮座していた。

「迷惑メール?」

 そう呟き、削除しようとしたが、何かが私に、それをクリックさせてしまった。

 本文には、たった一行。

「www.room4729.com/live」

「なんなの、一体」

 閉じようとしたその時、不可解な衝動に駆られ、私はリンクをクリックしてしまった。

 ページが読み込まれる。

 黒い背景、飾り気のないレイアウト。そして中央のライブ配信ウィンドウには――

 瞬間、顔から火が出るほど熱くなった。

 薄暗い部屋の中、ベネチアンマスクをつけた男女が、まるで獣のように貪り合っていたのだ。

 信じられない! 男は獣のように女を押し倒し、その手で女の尻を強く鷲掴みにすると、腰を激しく打ち付けている。一突きごとに根元まで深く貫き、女の身体を激しく震わせていた。

 女の両脚は男の腰にしっかりと絡みつき、リズムに合わせて豊かな胸が揺れる。スピーカーからは、深く淫らな喘ぎ声が熱波のように流れ出し、私の鼓膜を、そして……下腹部を直撃した。

 その動きは激しく、切迫していて、濡れた肌が触れ合う音がはっきりと聞こえてくる。いつも優しすぎるほどの奏介とは、まるで別人のようだった。彼はいつも長い時間をかけてキスをし、「いいかい?」と優しく尋ねてくれるのに……。

 閉じるべきだった。だが、指先がトラックパッドの上で凍りついたように動かない。目を逸らすことができなかった。

 画面の中の男が突如、女の喉を掴んだ。優しく、しかし支配的に。腰の動きが加速し、肌と肌がぶつかる音がドラムのビートのように響き渡る。

 女の喘ぎは絶叫へと変わり、激しい息遣いが混じる。まるで、もっと激しくしてくれと懇願しているかのように。

 刺激が強すぎる!

 下腹部を熱い波が駆け抜けた。無意識のうちに太腿を擦り合わせる。下着は瞬く間に濡れそぼった――単なる羞恥心からではない。恐怖と好奇心が入り混じった感覚。初めてこっそりとポルノを見た時のように、怖いのに、もっと知りたいと思ってしまうあの感覚だ。

 もう、私は何をしているの? こんな映像に、身体が反応しているなんて。

 その時、画面が暗転した。配信終了。

 下部に赤い文字が浮かび上がる。「次回の配信、明日午後9時」

 私は現実に引き戻され、慌ててノートパソコンを閉じた。心臓が早鐘を打ち、胸から飛び出しそうだ。

「……悪趣味なサイト」

 私は荒い息をつきながら吐き捨てた。なんとか自分を落ち着かせようと努める。

 だが、あの数字――4729――と、奇妙な渇望感は、どちらも脳裏に焼き付いて離れなかった。

 私はかぶりを振り、無理やり意識を切り替えた。奏介の従姉妹を、元カレと同じテーブルにしていいの? だめ、配置を変えなきゃ……。

 翌晩、午後八時五十五分。

 私は寝室に一人座り、スマートフォンの画面を見つめていた。奏介からのメッセージが表示されている。

「美咲、合併の件であと二時間はかかりそうだ。先に寝ていてくれ」

 溜息をつき、化粧を落とすためにドレッサーへと向かう。鏡の中の女は健康そのもので、死にかけた痕跡など微塵もない。

 午後九時、ちょうど。

 昨夜のあの奇妙な熱が、蘇ってきた。ただの好奇心だ、と自分に言い聞かせる。ただ知りたいだけ……。

 指が勝手に動き、ノートパソコンを開いてあのURLを打ち込んでいた。

「ちょっと見るだけ」

 私は自分に言い訳をする。

「あんなに……乱れたことをする人たちが、どんな顔をしているのか見るだけよ」

 ページが読み込まれ、ライブ配信のウィンドウが明るくなった。

 同じ薄暗い部屋、同じキングサイズのベッド。男は仮面の女を背後から犯している。その動きは相変わらず激しい。

 私は下唇を噛み締め、再び身体の奥で熱が疼くのを感じた。――その時までは。

 男が寝返りを打った瞬間、私は完全に凍りついた。

 彼の腰――三角形に並んだ、三つの丸い傷跡。

 嘘。

 手の震えが止まらない。あれは……骨髄採取の痕だ。奏介がドナーになった時、医師が言っていた。そのような傷が残るのだと。

「偶然よ。偶然に決まってる」

 震える自分の声が聞こえた。

 画面の中では、男が仮面の女を押さえつけ、情事はさらに激しさを増していた。あの体型、肩幅、そしてふとした仕草までもが……。

 違う、違う、違う。骨髄移植をした人なんて大勢いる。彼のはずがない。

 二十分が経過した。私は画面に釘付けになり、あれが奏介ではないという証拠を必死で探し続けた。

 やがて男が横を向いた時、薄暗い光の中に、コーヒー色の痣がかすかに浮かび上がった。

 スマートフォンが手から滑り落ち、鈍い音を立てて床にぶつかる。

 あの痣に、私は数え切れないほどキスをしてきた。楓の葉のような形をしている。奏介はそれを、神様がつけてくれた印だと言っていた。

 私はバスルームへ駆け込み、便器の前に膝をついてえずいた。胃がひっくり返るような感覚に襲われ、涙が止まらないほど溢れ出してくる。

「彼じゃない、彼じゃない……」

 何度も繰り返したが、その声はあまりに掠れていて、自分のものとは思えなかった。

 それからの数時間は、悪夢のような曖昧な記憶しかない。奏介に七回電話をかけたが、すべてコール三回で切断された。メッセージには既読がついたが、返信はない。

 リビングとバスルームを往復し、胃液しか出なくなるまで吐き続けた。

 午前二時。私はリビングのソファで毛布にくるまり、体を丸めていた。目は胡桃のように腫れ上がっている。

 カチャリ、と鍵が回る音がした。

 奏介が入ってくる。紺色のスーツはパリッとしたままで、ネクタイも乱れていない。

「美咲? まだ起きていたのか?」

 彼は駆け寄ってきた。その端正な顔には、心配の色が浮かんでいる。

「私……」

 言葉が喉に張り付き、出てこない。

 彼は隣に座り、私の額にキスをした。鼻孔を突いたのは、知らない香水の匂いだった――バニラとムスクが混じったような、胃が痙攣するほど甘ったるい女の香り。絶対に彼が使うコロンではない。

「遅くなってごめん。永井さんとの合併話が思いのほか難航してね」

 彼の手が私の長い髪を撫でる。

「大丈夫? 顔色がひどいよ」

「たぶん……マリッジブルーかも」

 自分の口から、そんな言葉が出た。

 奏介は私を抱き寄せ、頭の上に顎を乗せた。

「馬鹿だなあ、何を不安になることがあるんだ? あと十日で君は俺の妻になる。俺たちは永遠に幸せになるんだ。約束するよ」

 彼の体温も、心臓の鼓動も、すべてが慣れ親しんだものだった。

 私は目を閉じ、暗闇の中で必死に呪文のように唱えた。

 骨髄移植の手術を受けた人は大勢いる……痣だって似ているだけかもしれない……あのサイトは悪質なサイトだ……奏介は私を愛している、私の命だって救ってくれた……。

「疲れているなら休みなさい」奏介は私のつむじにキスをした。「明日はドレスの試着があるだろう」

「うん」

 私はなんとか声を絞り出した。

 その日の深夜、私は奏介の横に横たわり、彼の規則正しい寝息に耳を澄ませていた。その穏やかな呼吸の一つ一つが、まるでナイフのように私の心を切り刻んでいく。

 あの三つの傷跡と、楓の形の痣が、悪意ある呪いのように交互に脳裏に浮かび、私の理性を引き裂いていく。

 見間違いだ。

 見間違いに決まっている。

 でも、左肩にまったく同じ楓の形の痣がある人間が、この世に何人いるというの?

 黙って。偶然よ。偶然に決まってるわ。

 カーテンの隙間から夜明けの光が差し込んでもなお、私は乾いた目を見開いたまま、自分自身を説得し続けていた。

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「君は、これまで誰も本気で愛したことなどない」

彼は私にそう言った。

反論しようとして、しかし私は何も言えなかった。

なぜなら、ふと心に浮かんだからだ。夫に対して抱いていたもの——それは愛だったのか、それともただの慣れだったのか。そして、私と過去との間に立ちはだかったこの男に抱き始めているこの感情は……一体、何なのか。