一夜限りのつもりが、冷徹な億万長者に執着されています

一夜限りのつもりが、冷徹な億万長者に執着されています

もりかわ みおな · 連載中 · 491.0k 文字

800
トレンド
77.1k
閲覧数
1.3k
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

「本当に、私でいいんだな?」

媚薬の熱に浮かされ、理性を失った私が下した、人生で最も無謀な決断。
それは、行きずりの男を「一夜の特効薬」として買い取ることだった。
唯の素性の知れない男だと思っていた。……なのに翌朝、隣で眠っていたのは、この街の頂点に君臨する、あの禁欲的で冷徹な億万長者、結城朔夜のだ――。

私、渡辺瑚夏は、渡辺家の「望まれぬ養女」。
本物の令嬢が戻ってきた瞬間、家族は私に濡れ衣を着せ、裏切り、ゴミのように切り捨てた。

だけど、彼らは大きな勘違いをしている。私はもう、悲劇のヒロインを演じるつもりなんてない。
――最凶の『椎名家』の後ろ盾と、私だけの秘密の武器。これさえあれば、奪われたものはすべて奪い返せる。

仇敵どもを一人ずつ地獄へ叩き落としていく私。けれどその裏で、私は結城朔夜が仕掛けた危険な罠に囚われつつあった。
「俺たちは、ただの従兄妹同士だろう?」
言葉とは裏腹に、彼の独占欲に満ちた唇と、熱い指先が私を容赦なく狂わせていく。

彼は私を救う神様なのか、それとも、最も甘美で危険な罠なのか――?

チャプター 1

「……本当に、するの?」

N市屈指の高級ホテル。最上階のスイートで、男は金縁の眼鏡を外した。彫刻みたいに深い輪郭――獲物を射抜くような、あまりにも攻撃的な顔。

渡辺瑚夏は目尻を赤く染め、つま先立ちになる。男のシャツの襟を引き寄せ、赤い唇で喉仏に噛みついた。

するに決まってる。

媚薬を盛られた身体が熱くてたまらない。今すぐ乱暴に引き裂かれたい、そう思ってしまうほどに。

「……っ、」

びりっ。

布が裂ける音。胸元を冷たい空気が撫で、背中がベッドに触れた瞬間――男の熱い唇が胸に噛みついた。

「ん……」

瑚夏は背を反らし、もっと、と身体を押しつける。白い指先が男の下へ滑り込んで――。

――昨夜。

外出する瑚夏に、渡辺家がようやく取り戻した“本物の令嬢”渡辺芽衣が「ついでに乗せて」と言った。

そして目を覚ましたとき、瑚夏はホテルのベッドの上にいた。身体は異様に熱く、媚薬を盛られた兆候がはっきり出ている。

K市で悪名高い、最低最悪の二人組。

そいつらが目の前でズボンを下ろしはじめた。

瑚夏は二人の股間を、それぞれ一発ずつ蹴り上げた。

それから親友に電話して、解毒のためのホストを呼ばせた――こいつを。

男の大きな手が肌を這う。指が通ったところが、火種を落としたみたいに熱を残す。

瑚夏は彼にしがみつき、もっと、もっとと求めてしまう。

――翌朝。

スマホの電源を入れた瞬間、親友から電話が来た。

『昨夜のホスト、どうだった? 気持ちよかった?』

相変わらず口が悪い。

瑚夏は隣で眠る男を見下ろす。

「顔は悪くない。テクは普通。手はきれい……でも、ちょっと年いってる」

『20歳で“年いってる”って何それ!』

向こうの声はやけに楽しそうだった。

20歳?

瑚夏の視線が男の顎に落ちる。朝の薄い青髭が、妙に濃い。

20歳でこのヒゲ? 30歳級の勢いじゃない。

……でも、色気はある。

瑚夏は裸のまま、床に落ちていた白いものをひょいと拾い、男の目の上にかぶせた。素早く服を着て部屋を出る。

腰が痛い。脚がふらふら。

最近のホスト、働きすぎじゃない? やめてって言っても、何度も何度も必死に――。

「で、あの二人のクズはどうなった?」

『瑚夏ちゃん、昨日のキック、ちょい甘かったっぽい。あいつらの“モノ”、治せば使えるってさ』

薬が回り始めてたんだ。狙いが正確なほうがおかしい。

相手が別の女だったら、あの二人の性癖なら壊されて終わりだ。

「ホテルの痕跡、消した?」

『私の仕事、信用しないの?』

「切る」

電話を切った瑚夏の瞳は澄んでいるのに、どこか冷えていた。

瑚夏はずっと慎重だった。昨日も外出前に、五歳の姪が運んできたフルーツジュースを飲んだ。

芽衣は、その子どもを使って薬を盛ったのだ。許せるはずがない。

警察に通報しなかったのは、兄が海外で治療中だから。

通報すれば三つの家が絡み、噂は必ず兄の耳に届く。治療に障る。

あの二人も権力と金を持つボンボンだ。急所を蹴られて黙って引き下がるはずがない。

だが証拠がない以上――恨みは恨みに、借りは借り主に。芽衣に返すだけ。

芽衣がどう捌くかなんて、彼女の問題だ。

『待って。芽衣って腹黒、昨夜ほかにも何やったか知りたくない?』

『昨夜、芽衣はバーで酔わされてさ。渡辺のお母さんが駆けつけて通報しようとしたんだけど、相手が「瑚夏が金払ってやらせた」って言ったって』

……は。

瑚夏は冷たく笑った。

「自作自演で、濡れ衣まで? 芽衣、遊び方うまいじゃない」

「昨夜の連中、警察に自首させて。金、上乗せで」

芽衣が戻ってから何度も自分を“清純で可哀想な子”に仕立て上げ、渡辺家の夫婦は「瑚夏が芽衣を受け入れない」と決めつけた。

ちょうどいい。目の曇ったあの夫婦に、芽衣の素顔を見せてやる。

『ははっ。もう警察が“あの子たち”の調書取ってるよ。私も一緒に渡辺家行って迎えに行こっか?』

「見物したいだけでしょ。いらない」

『じゃあK市で待ってるね……』

「うん」

切ったあと、瑚夏の澄んだ瞳に、ふっと寂しさが滲んだ。

本当は兄が帰ってくるまで――待ってから離れたかったのに。

……

スイートルーム。

瑚夏が出ていくと、ベッドの男は目を覆っていた白いものを外した。

綿100%。真っ白。

――自分の下着だった。

男の顔色が一瞬で沈む。青髭と同じ色に。

スマホを掴み、電話をかける。

「女を一人、調べろ……!」

年寄り扱いだと?

俺は、まだ30だ。

受話器の向こうでは誰かが慌ただしく声を上げていた。

――速報。禁欲で有名な結城社長、ついに童貞卒業。

『……はい、結城社長!』

……

渡辺邸。

瑚夏が門をくぐり、最初の段を上がった瞬間。

「どんっ!」

赤いスーツケースが屋内から投げ出された。

「出ていきなさい!」

玄関口に立つ小林美子が、仇を見る目で瑚夏を睨みつける。

「孤児院上がりの分際で、うちでお嬢様をやってたくせに! 実の娘の芽衣は外で苦労して……やっと見つかったのに! あんた、芽衣を汚すような真似までさせて、人間なの!?」

瑚夏は、どこか他人事のように淡々としていた。余計な感情も、言い訳もない。

渡辺家が孤児院から彼女を引き取ったのは祖母の決断だった。

美子夫婦は虐げはしなかったが、関心も薄かった。

誕生日も、成績も、休みに何をしているかも――二人は知らない。

芽衣が戻ってから、美子は瑚夏に何人もの政略結婚相手を押しつけた。

家柄は一流。だが顔が、どれも好みに合わない。

「お母さん、怒らないで。唐沢家が“姉さんを刑務所にぶち込む”って言ってるの。姉さん、もう十分かわいそう」

芽衣が美子の腕に絡みつき、甘ったるい善人の声を出す。

唐沢家――昨日、瑚夏に急所を蹴られた、あのクズの片割れの家だ。

芽衣は唐沢家からの強硬な電話を思い出し、口元に残酷な弧を描いた。

瑚夏が玩具にされ損ねたなら、ミシン踏みの刑務所生活でも悪くない。

渡辺家は柏木家と縁談がある。芽衣が戻った以上、その席は本来“本物の令嬢”である芽衣のもの。

なのに柏木家の祖母は、瑚夏に少し未練があるらしい。

孤児のくせに、婚約を奪う?

孤児のくせに、あんな高級な顔を持つ?

「かわいそうですって?」美子はさらに怒りを増した。「唐沢家も菊池家も、どっちも相手にしたら終わりよ。あんた、二人の坊ちゃんを病院送りにして……渡辺家に恨みを集めて潰す気でしょう!」

「渡辺瑚夏。芽衣を傷つけた件、通報しないのは私たちの最大の慈悲。出ていけ。今後、お前のすべては渡辺家と無関係だ」

渡辺明山がいつの間にか出てきていた。冷たい顔、失望の色。

十八年育ててやった。政略結婚で渡辺家に利益をもたらせばいいのに、何度も邪魔をする。

挙げ句、二大名家を敵に回し、実の娘まで害した。

孤児院から引き取ったことを後悔する。

「この20万で家賃でも払え。孤児院にいた頃は福田姓だったろ。姓も戻せ」

明山が札束を差し出す。乞食に恵むような冷淡さ。

瑚夏は金には目もくれず、十八年「父」と呼んだ男を見て笑った。

澄んだ瞳が弓なりに細まり――美しい。だが口元には嘲りが薄く浮かぶ。

明山が眉をひそめた。

「慈悲なんていらない。私が通報する」

瑚夏は淡々とスマホを取り出し、通報する素振りを見せる。

本当は親友に、警察がいつ到着するか確認しようとしていただけだ。

その瞬間、芽衣が段を駆け下り、瑚夏のスマホを持つ手を掴む。

「姉さん、バカなの? 通報したら罪が重くなるってわからないの?」

瑚夏は冷笑する。

「なんでそんなに慌ててるの? やましいの?」

芽衣の表情が一瞬固まった。

瑚夏は唐沢家と菊池家を敵に回したのに、どうして平然としていられる?

その余裕はどこから?

「無駄口はいい。荷物持って出ていきなさい。警察が渡辺家に来て連行なんて、縁起でもない」

美子が苛立って催促する。

昨夜のバーの件、彼女は薄々違和感を掴んでいた。

だが、だから何だ。

芽衣が戻った今、柏木家との縁談を保つために瑚夏は不要だ。

別の縁談も断り続け、芽衣をいじめてばかり。残す理由がない。

この口実で追い出せば、誰も渡辺家を責められない。

「旦那様、奥様、警察の方が……」

瑚夏が振り返ると、制服姿の警官が数人、庭に入ってきた。

瑚夏は目尻を上げる。

――ちょうどいい。

美子と明山は同時に眉をひそめた。

最初から門をくぐらせなければよかった。みっともないし不吉だ。

芽衣だけは違った。

警官を見た瞬間、胸の奥から興奮が湧き上がる。

唐沢家、やっぱりやるじゃない。

瑚夏が今出ていけば、逮捕される惨めな姿が見られないと残念に思っていたのに――。

「姉さん……」

芽衣は心配そうな顔を作る。

「怖がらないで。私、よく面会に行くから。お父さんにも頼んで、あなたが中で……」

言い終える前に、警官の朗々たる声が響いた。

「渡辺芽衣さんは、どちらですか?」

最新チャプター

おすすめ 😍

舐めるつもり?なら、思い知らせてあげる

舐めるつもり?なら、思い知らせてあげる

59.2k 閲覧数 · 連載中 · 桜井 ゆい​
18年間、自分が実の娘でないとは知らずに生きてきた。ある日、荷物をすべて玄関の外に放り出され、街角に立ち尽くす私の前に現れたのは、噂では極貧だという「生家」から迎えに来た、見たこともない「兄」。

ところが、その兄が乗ってきたのはトラクターだった。

ガタガタと揺れるトラクターがたどり着いた先は、まるで古城のような大邸宅。そこで私は思い知る。本当の家族のもとに引き取られた私は、貧しくなるどころか、前よりずっと裕福になっていたのだ。

……だが、ちょっと待ってほしい。なぜ私には突然、婚約者というものが存在するのか。しかもその相手は、私の大学の教授だという。誰か、説明してくれないだろうか。
離婚した妻の激しいつわり――彼女は妊娠を隠したまま、去っていった

離婚した妻の激しいつわり――彼女は妊娠を隠したまま、去っていった

12.2k 閲覧数 · 連載中 · ユイ
夫から離婚届を突きつけられたその時、私は妊娠を知った。

彼は冷酷極まりない目で私を見下ろし、「お前なんか、俺にふさわしくない。子供を堕ろして、さっさと出て行け!」と言い放ったのだ。

そして――彼が「運命の女」と盛大な結婚式を挙げたその夜、私は凄惨な交通事故に遭い、命を落とした。

私の死亡診断書を手にした時になって初めて、彼は気づいたのだ。私への愛が、すでに自分の魂にまで深く刻み込まれていたことに。

数年後。私は別の人間として、双子の我が子を連れて戻ってきた。しかし、あの狂気に満ちた男に再び追い詰められてしまう。

「あなたのことは存じ上げません。身の程をわきまえてください」
私は冷たく突き放した。

彼は私を壁に押しつけ、声を震わせながらこう言った。
「……そうか? なら教えてくれ。なぜその子供たちに、俺の血が流れているんだ?」
南から北へ、届かなかった想い

南から北へ、届かなかった想い

16.5k 閲覧数 · 連載中 · 蜜柑
結婚して二年、天樹夢子は「任務」を遂行することばかり考えていた——子供を産むこと。しかし夫の陸川北斗は冷たくこう言い放った。「俺に子供を産むだと?お前にはその資格すらない」

怒りに震え、彼女は離婚届を起草。これで全て終わりにしようとしたその時、携帯にメッセージが届いた。

「奥様、ご主人様が今夜お泊まりになります」
マフィア姫の帰還

マフィア姫の帰還

59.8k 閲覧数 · 完結 · Tonje Unosen
タリアは何年ものあいだ、母と義理の妹、そして継父と暮らしてきた。だがある日、ついにそこから逃げ出すことに成功する。

ところがその直後、自分にはまだ外に家族がいるのだと知る。そして本当に自分を愛してくれる人たちが大勢いることも――そんなものは今まで感じたことがなかった。少なくとも、彼女の記憶にあるかぎりでは。

タリアは人を信じることを学ばなければならない。新しくできた兄たちにも、ありのままの自分を受け入れてもらわなければならないのだ。
私が囲っている億万長者

私が囲っている億万長者

13.5k 閲覧数 · 連載中 · ほしの ちなつ
私はただ、心の痛みを紛らわせたかっただけ。

彼は息を呑むほど美しく、落ちぶれていた。夫の裏切りがもたらした傷が完全に癒えるまで、彼をそばに置いておくつもりだった。

お金で彼の付き添いを買い、すべてのルールを私が決め、すべてを完全に掌握しているつもりだった。

けれど、私の隣で横たわるこの男の正体は、彼が語ったものとはまるで違っていた。

魅惑的な笑顔と抗いがたい容姿の下に隠されていたのは、仇敵から身を隠す億万長者の素顔だった。

今や彼は、私の生活に、私のベッドに、そして私の心に――完全に絡みついている。

身を引くことは、彼のそばにいることよりも、もっと危険かもしれない。
藤原社長の華麗な元妻

藤原社長の華麗な元妻

46.6k 閲覧数 · 連載中 · 文机硯
実は離婚も悪いことばかりではありません。
私のように、離婚後に実家に帰って億万の財産を相続できるのですから!
そして、まさにその億万の財産を相続しようとしたとき、厚かましい前夫がまた現れて、土下座して復縁を懇願してきたのです…
転生して絶縁したら、元家族は破滅に

転生して絶縁したら、元家族は破滅に

40.2k 閲覧数 · 連載中 · ワニノコ
名門古川家の生まれの娘・古川朱那は、前世、父・古川邦夫と三人の兄(礼和、礼希、礼人)が養妹・周防天華を無条件に贔屓し、天華の陰険な陥れに遭い、理不尽に死んだ。
22 歳、天華に陥れられた日に生まれ変わった朱那は、過去の卑屈さを捨て、天華の悪事を暴き、偏心な家族に毅然と立ち向かう。芸能界で演技の才能を開花させ、自らの人生を切り開くため、全力で逆襲する。
妻が去り、妊娠を知った俺は、ただ泣き崩れるしかなかった

妻が去り、妊娠を知った俺は、ただ泣き崩れるしかなかった

556.1k 閲覧数 · 連載中 · 蛙坂下道
鈴木七海は、中村健に好きな人がいることをずっと知っていた。それでも、彼との結婚を選んだ。
しかし、結婚して5年後、彼は離婚を切り出した。その時初めて、彼の想い人が私の父の隠し子(私の異母兄弟)だと知った。
離婚を決意した七海だったが、その時にまさかの妊娠が判明した。
彼はかつて私を打ちのめした、今度は私が彼を打ちのめす番だ

彼はかつて私を打ちのめした、今度は私が彼を打ちのめす番だ

3.2k 閲覧数 · 連載中 · 桐島遥希
彼らが最初に奪ったのは、私の子供だった。

次に、私の両親。

三番目に、私の自由、私の両目、そして生きる理由のすべて。

結婚記念日の日、夫は私を三人の男たちに差し出した。彼は私を犬小屋に閉じ込め、彼の愛人はそばで嘲笑っていた。彼は私に自分の息子の遺骨を食べさせ、それを「慈悲」と呼んだ。

彼は私が汚れていると言った。私は当然の報いを受けているのだと。

しかし、彼が固く信じていたDNA鑑定の結果は嘘だった。あの動画は捏造されたものだった。そして、彼がこれから娶ろうとしている女こそが、私たち全員を破滅させた元凶だった。

私は自殺を試みた。四度。

今は、もう試みない。

彼らは死んだ女を土の中に埋めた。だが間もなく気づくだろう——彼女が地獄をも連れ戻したことに。
今さら跪く元夫を置き去りに、大富豪の甘い執着愛が始まりました

今さら跪く元夫を置き去りに、大富豪の甘い執着愛が始まりました

21k 閲覧数 · 連載中 · 桜井 ゆい​
夫は私を、別の男のベッドへ差し出した。
あの男にとって、私は自分の出世や欲望のために利用する「モノ」でしかなかったのだ。

だが、あの男は夢にも思っていなかった。
自分がゴミのように投げ捨てた贈り物が、この国で最も恐れられ、最も力を持つ男の「かけがえのない愛する人」になるなんて。

やがて絶望を知り、私の前に跪いて許しを乞う元夫。
その惨めな姿を見下ろす私を、最高峰の男が背後から抱き寄せ、耳元で低く甘く唸った。

「俺の子供を身ごもっておきながら、一体どこへ行こうというんだ?」

――捨てられた妻の反撃と、逃げられない絶対的な愛が、ここから始まる。
あの野郎が浮気した

あの野郎が浮気した

13.9k 閲覧数 · 連載中 · 水無瀬
夫の浮気を目撃した瞬間、私は泣きもしなければ叫びもしなかった。冷えたままの手つきで離婚届を偽の業務委託契約書に紛れ込ませ、彼に判を押させただけだ。あと三十日もすれば、彼は私を失う——ただ静かに、その時を待つ。

その足で、私は新たな職へと向かった。無愛想で、他人を一切寄せ付けないことで知られる男の、個人秘書として雇われたのだ。元夫が私を無理やり連れ戻そうとするたび、新しい雇い主は私の前に立ち塞がり、そして——私自身すら見えていなかった何かを見つめるような目で、私を見た。

「君は、これまで誰も本気で愛したことなどない」

彼は私にそう言った。

反論しようとして、しかし私は何も言えなかった。

なぜなら、ふと心に浮かんだからだ。夫に対して抱いていたもの——それは愛だったのか、それともただの慣れだったのか。そして、私と過去との間に立ちはだかったこの男に抱き始めているこの感情は……一体、何なのか。
追放された偽物の娘、その正体は最強でした

追放された偽物の娘、その正体は最強でした

888.9k 閲覧数 · 連載中 · ゲゲゲ
「本物の娘が見つかった。お前はもう用済みだ」
あの子が現れたその日、私は『偽物の娘』として家を追い出された。
渡されたのは、わずかな小銭と地方行きの片道切符だけ。
さらに婚約者は私をゴミのように捨て、その日のうちに『本物』であるあの子にプロポーズした。

……上等じゃない。せいぜい勝った気でいればいいわ。
だって彼らは、私の【本当の顔】を何一つ知らないのだから。

名門病院が見放した命を救う『天才外科医』。
オークションで数億円の値を叩き出す『伝説の画家』。
裏社会の闘技場で無敗を誇る『影の女王』。
そして――彼らの全財産すら小銭に思えるほどの『真の巨大財閥の後継者』であることを。

今さら元婚約者が土下座で許しを請おうと、本物の娘が嫉妬で狂いそうになろうと、もう遅い。
かつて私に婚約破棄の書類を叩きつけた冷酷で傲慢なCEOでさえ、今や何かに取り憑かれたように私を追い回し、「もう一度だけチャンスをくれ」とすがりついてくる始末。

私を捨てて、自分たちの人生を『アップグレード』したつもり?
笑わせないで。最初から、圧倒的に上の存在だったのは私のほうよ。