別人として再会した元夫に、なぜか二度目の熱い誓いを迫られています

別人として再会した元夫に、なぜか二度目の熱い誓いを迫られています

^野田恵^ · 連載中 · 190.1k 文字

390
トレンド
4.2k
閲覧数
156
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

顔も知らぬ夫との、跡継ぎを残すためだけの冷酷な「契約結婚」。
3年間、一度も交わることのなかった夫婦関係の中で、夏目千尋は亡き母の遺品を取り戻すため、ある危険な賭けに出る。

会員制クラブで泥酔した男、神崎雅臣。
目的のため、彼をベッドへと誘い、一夜の情熱を共にした。千尋にとっては、それきりの割り切った取引のはずだった。……その男が、実は「自分の夫」であるとも知らずに。

その後、彼女は偽名「アンナ」を名乗り、有能なビジネスパートナーとして彼の前に再び現れる。
大胆で挑発的、自分の思い通りにならない彼女に、雅臣はいつしか狂おしいほどに惹かれ、その心を囚われていく。目の前で自分を翻弄する不敵な美女が、まさか自宅に放置している「自分の妻」だとは夢にも思わずに。

冷え切った関係に終止符を打つべく、テーブルに置かれた離婚届。
しかし、予期せぬ「妊娠」が、二人の隠された関係をすべてひっくり返す。

始まりは、冷徹な利害の契約だった。
裏切りと欺瞞のゲームの果てに、先に愛の底へ堕ちたのは、一体どちらなのか――。

チャプター 1

「神崎雅臣が戻ってきた。今夜は光朝クラブにいる。行って顔を出して、少しは情でも繋いでこい」

書斎で父の言葉を聞いた夏目千尋は、鼻で笑った。

三年逃げた夫が、ようやく帰ってくる気になったってわけ?

「……それで?」

夏目博夫が顔を上げる。

「なるべく早く神崎家の子を身籠もれ。子どもさえいれば、お前の立場は固まる。両家の関係も盤石になる」

夏目千尋の瞳が沈む。

夫の顔すら知らないのに、どうやって子どもを作れっていうの?

何年も前、両家の先代同士が、子ども同士の婚約を取り決めた。

当初、夏目博夫は乗り気ではなかった。神崎家が金持ちだろうと、夏目家だって負けていない。もっと良い縁を選べるはずだった。

だが神崎家の勢いは増す一方で、表も裏も押さえ、J市を片手で覆うほどの権勢を得た。

その途端、夏目博夫の態度は変わり、三年前、神崎家に頭を下げて婚約の履行を迫ったのだ。

結婚式当日、神崎雅臣は最後まで姿を見せなかった。

ろくに客もいない式場で、ひとりで儀式を終えたのは千尋だ。あの日以来、彼女は皆の笑い者になった。

後で知った。

神崎雅臣はとっくに海外へ出ていたのだと。

「行かない」

思い出した途端、胸の奥が詰まる。

「私が生きようが死のうが放っておいたくせに、今さら孫が欲しいの?」

夏目博夫の顔色が落ちる。怒りの前触れ。

「千尋。お前の父さんも、お前のためを思って――」

継母の岩崎明依が茶を運びながら入ってきた。柔らかな笑みを浮かべて。

「女はね、子どもがいないと心細いのよ。神崎家でどうやって立っていくの? あなたのお母さまが生きていたら、きっと同じことを言ったはず」

明依は飾り棚へ向かい、玉の腕輪を取り出す。

「ほら、この腕輪。ずっとあなたのために大事に預かっていたの」岩崎明依は穏やかに言った。「お母さまは生前、あなたをいちばん可愛がっていた。あなたが幸せであることを望んでるに決まってるわ」

母の形見。

探しても探しても見つからなかったものが、こんなところに――。

夏目千尋は腕輪を凝視し、爪を掌へ深く食い込ませた。

夏目博夫が続ける。

「千尋、お前は賢い子だ。神崎家は伝統を重んじる。子どもができれば、お前の言葉にも重みが出る。まあ、どうしても嫌なら無理にとは言わんがな」

彼は腕輪を手に取り、わざとらしく眺める。

「ただな。こんなもの、俺のところに置いても安全とは言えん。万が一、うっかり落として割ったりでもしたら……」

「行く!」

夏目千尋は奥歯を噛みしめた。

「でも条件がある」

夏目博夫が目を細める。

「孫を産む。神崎家との関係も固めてあげる。だけど子どもを産んだら、私に五億――それと、その腕輪も返して。それから私を自由にして。ここから出して」

書斎の空気が、数秒、凍りついた。

「五億だと?」夏目博夫の目が陰る。「ふざけるな。図に乗るなよ」

「断ってもいいですよ」

夏目千尋は踵を返し、扉へ向かう。

「腕輪、割りたいなら割れば? その代わり私も、もう駒みたいに扱われなくて済む」

「待て」

夏目博夫は深く息を吸い、歯の間から絞り出すように言った。

「……分かった。認めてやる。だが子どもは必ず神崎家の子だ。ここだけは誤魔化すな」

夏目千尋は扉を開けて出た。

その瞬間、胸の奥に溜まっていた酸っぱいものが、どうしても堪えきれなくなる。

母は千尋が十代の頃に亡くなった。

夏目博夫に追い詰められ――そう、あれは怒りと絶望で殺されたようなものだ。まだ七日も過ぎていないのに、夏目博夫は不倫相手と隠し子を家へ連れてきた。

最初は、娘と息子を公平に扱うそぶりもあった。

けれど結局、娘は息子に勝てない。

息子は家業を継ぐ道具で、娘は家業を守る道具。

夏目千尋は喉の奥の苦しさを押し殺し、涙を拭った。

もういい。

子どもさえ産めば、金を持ってこの家から逃げられる。

……

光朝クラブ。

夏目千尋は給仕の制服を着て、廊下の角の陰に立っていた。

遠目にも分かる、酔った長身の男。

すっと伸びた姿勢、彫りの深い顔立ち、高い眉骨。濃い灰色のシャツの袖を肘まで捲り、滑らかな線の前腕を見せている。

歩くだけで、生まれつきの高貴さと距離感が漂った。

神崎雅臣。

結婚して三年――今日が初めて、その顔をはっきり見る夫。

夏目千尋は影へさらに身を縮めた。

男が横を通り過ぎる。ふわりと漂う酒気に、ほのかな甘い香り。

これから自分が何をするのか分かっているせいで、胸が落ち着かない。男が個室へ入ったのを見届けてから、千尋は深く息を吸い、酔い覚ましのスープを盆に乗せて向かった。

酔い覚ましのスープは事前に用意した。中には効き目が強いと聞いたものを混ぜてある。

名乗って取引を持ちかけることも考えなかったわけじゃない。

でもすぐに、その考えを押し込めた。

取引できるだけの武器が、彼女にはない。

それに、結婚式から逃げて海外へ行った男が、彼女と子どもを作るはずがない。

個室の前でノックする。

「神崎様、ご注文の酔い覚ましのスープをお持ちしました」

中から足音。

扉が開き、男が片手で枠に寄りかかる。見下ろされるだけで息が詰まる。

「中へお持ちします」

夏目千尋は顔を伏せたまま入った。

部屋は灯りがなく、厚いカーテンが外のネオンを遮っている。

神崎雅臣はソファに腰を下ろした。微酔でも、容易に近寄れない圧がある。

平静を装い、器を差し出す。

「これを飲めば、楽になります」

神崎雅臣は受け取ると、一息に飲み干した。

夏目千尋は脇に立ち、心臓が鼓のように鳴る。

器がテーブルに置かれ、彼女が帰らないのを見て、神崎雅臣の眉が僅かに寄った。目つきが危険な色に変わる。

「……まだいるのか?」

夏目千尋は息を吸い、いきなりスカート脇のファスナーを引いた。

黒いワンピースが床へ落ちる。

神崎雅臣の目が鋭くなる。酔いが半分以上醒めた。

「何を――」

次の瞬間、女はそのまま跨り、強引に押し倒した。

柔らかな唇が押し付けられる。

神崎雅臣の身体が硬直する。体内の火が、一気に燃え上がった。

あの酔い覚ましのスープ――何か入ってる!

男は体勢を返し、女を押さえ込む。眼差しは氷のように冷たい。

「言え。誰に遣わされた」

夏目千尋は長い脚を彼の引き締まった腰に絡め、指先を喉仏から滑らせた。

「そんなの、どうでもいい。大事なのは……今、あなたの熱を冷ませるのは、私だけってこと」

指がベルトの中へ潜り、強く握る。

男が低く呻き、彼女の手首を掴む手に青筋が浮いた。

「考え直せ」

顎を持ち上げ、荒い息を吐く。

「今ならまだ――引ける」

夏目千尋は笑い、下唇を噛み、指先で弄ぶ。

――ぶつん。

神崎雅臣の最後の理性が切れ、低く唸って彼女の唇を奪った。

ざらりとした掌が乱暴に衣服を引き裂き、柔らかな膨らみが暗闇に弾ける。

荒く揉まれ、部屋に残るのは重い息と絡む体温だけ。

どれほど経ったのか。

男が猛然と貫き、夏目千尋は悲鳴を上げ、痛みに背を弓なりに反らせた。

男の動きが止まり、嘲るような笑いが漏れる。

「……処女か。送り込んだ奴、随分と金をかけたな」

夏目千尋は唇を噛み、目尻が熱くなるほど痛いのに、引かなかった。

闇の中の深い瞳を睨み返す。

「……結局、できないの? ぐずぐずして」

神崎雅臣は呆れたように笑い、掠れた声がいやに色っぽい。

「見せてやる。俺ができるかどうか」

身体を沈め、さっきより深く、強く。

夏目千尋は震え、爪が彼の肌に食い込む。

痛みの奥から、別の羞恥と渇きが込み上げてきた。

汗で濡れた肌同士が張り付き、息が乱れる。

やがて、ようやく静まった。

男の呼吸が徐々に落ち着き、薬の反動か、そのまま眠りに落ちた。

夏目千尋はそっと押しのけ、起き上がる。

痛い。全身が、骨の芯まで痛い。

暗闇で服を探し、一枚ずつ身につける。

出ようとした瞬間、テーブルのスマホがふっと光った。

神崎雅臣の携帯だ。

画面に、メッセージが表示される。

【神崎社長、例の女は見つかりました。処理しますか?】

夏目千尋はその一行を見つめ、頭の中がぐわんと鳴った。

例の女――私?

処理って、何……?

帰国して真っ先に、私を消すつもりだった……?

その考えが浮かんだ途端、血の気が引いた。

さっきまでの大胆さが、急に恐ろしくなる。

もう一秒もいられない。

夏目千尋は息を殺し、逃げるように部屋を出た。

家まで走り、扉を閉めて、肺が痛くなるほど息をした。

知られてはいけない。

絶対に。暗かったし、灯りもなかった。顔なんて分からないはず――。

そう言い聞かせ、心拍が落ち着いた頃、風呂へ行こうとしてスマホが震えた。

LIMEの友だち追加の申請。

【俺だ。神崎雅臣】

指が震え、スマホを落としそうになる。

最新チャプター

おすすめ 😍

監禁から1年、捨てられた令嬢は元婚約者の叔父を娶る

監禁から1年、捨てられた令嬢は元婚約者の叔父を娶る

62.7k 閲覧数 · 連載中 · 鈴木楓花
監禁から1年。ようやく帰宅した今井心晴を待っていたのは、変わり果てた日常だった。
家族は心晴を探そうともせず、あろうことか姉の今井優奈のために盛大な誕生日パーティーを開いていた。
しかも、その横には心晴の元婚約者の姿が……二人は婚約していたのだ。
しかし、心晴はただの被害者ではなかった。
彼女は人知れず巨額の資産と強大なコネクションを築き上げていたのだ。
真実を知った心晴は、復讐の狼煙を上げる。
彼女が選んだ新たなパートナーは、なんと元婚約者の叔父だった。
「これからは私のことを『おばさん』と呼ぶのよ、優奈!」
家族の縁を切った日、兄たちはすべてを失った

家族の縁を切った日、兄たちはすべてを失った

354k 閲覧数 · 連載中 · 風見リン
前の人生で両親が交通事故で亡くなった後、長兄は世間体を気にして、事故を起こした運転手の娘を家に引き取った。
公平を期すという名目のもと、兄たちは彼女からリソースを根こそぎ奪い、その尊厳を踏みにじってまで、運転手の娘を支えた。
彼女は兄たちのためにすべてを捧げたというのに、家を追い出され、無残に死んだ。

生まれ変わった今、彼女は人助けの精神などかなぐり捨てた。許さない、和解しない。あなたたちはあなたたちで固まっていればいい。私は一人、輝くだけ。

兄たちは皆、彼女がただ意地を張っているだけだと思っていた。三日もすれば泣きついて戻ってくるだろうと高を括っていたのだ。
だが三日経ち、また三日経っても彼女は戻らない。兄たちは次第に焦り始めた。

長兄:「なぜ最近、こんなに体調が悪いんだ?」――彼女がもう滋養強壮剤を届けてくれないからだ。
次兄:「会社のファイアウォールは、なぜこうも問題ばかり起こす?」――彼女がメンテナンスに来なくなったからだ。
三兄:「新薬の開発が遅々として進まないのはなぜだ?」――彼女が治験をしなくなったからだ。
四兄:「どうしてこんなにつまらない脚本しか上がってこない?」――彼女がもう執筆しないからだ。
五兄:「この義肢は、なぜこんなに出来が悪いんだ?」――彼女が製作をやめたからだ。
六兄:「なぜチームが負けた?」――彼女が脱退したからだ。

兄たちは地に膝をついて許しを請うた。「戻ってきてくれ。俺たちこそが、血を分けた本当の家族じゃないか」

彼女は絶縁状を兄たちの顔に叩きつけ、冷ややかに笑った。
「車が壁にぶつかってから、ようやくハンドルを切ることを覚えたのね。株が上がってから、ようやく買うことを覚え、罪を犯して判決が下ってから、ようやく悔い改めることを覚えた。残念だけど、私は――許さない!」
離婚後、ママと子供が世界中で大活躍

離婚後、ママと子供が世界中で大活躍

179.1k 閲覧数 · 連載中 · yoake
18歳の彼女は、下半身不随の御曹司と結婚する。
本来の花嫁である義理の妹の身代わりとして。

2年間、彼の人生で最も暗い時期に寄り添い続けた。
しかし――

妹の帰還により、彼らの結婚生活は揺らぎ始める。
共に過ごした日々は、妹の存在の前では何の意味も持たないのか。
私が囲っている億万長者

私が囲っている億万長者

2k 閲覧数 · 連載中 · ほしの ちなつ
私はただ、心の痛みを紛らわせたかっただけ。

彼は息を呑むほど美しく、落ちぶれていた。夫の裏切りがもたらした傷が完全に癒えるまで、彼をそばに置いておくつもりだった。

お金で彼の付き添いを買い、すべてのルールを私が決め、すべてを完全に掌握しているつもりだった。

けれど、私の隣で横たわるこの男の正体は、彼が語ったものとはまるで違っていた。

魅惑的な笑顔と抗いがたい容姿の下に隠されていたのは、仇敵から身を隠す億万長者の素顔だった。

今や彼は、私の生活に、私のベッドに、そして私の心に――完全に絡みついている。

身を引くことは、彼のそばにいることよりも、もっと危険かもしれない。
社長、突然の三つ子ができました!

社長、突然の三つ子ができました!

256.2k 閲覧数 · 連載中 · キノコ屋
五年前、私は継姉に薬を盛られた。学費に迫られ、私は全てを飲み込んだ。彼の熱い息が耳元に触れ、荒い指先が腿を撫でるたび、震えるような快感が走った。

あの忌まわしい夜から逃げるように去った私だったが、ほどなくして三つ子を妊娠していることに気付く。

五年後、医療界の新星として戻ってきた私は、継母、継姉、実の父へ全ての仕返しを誓う。

その時、彼が現れた。三人の小さな自分そっくりの顔をじっと見つめながら、優しく「パパ」と呼ぶよう子供たちを誘う彼。

ふとシャツのボタンを外し、悪戯っぽく笑って言った――

「どうだい、あの夜の熱をもう一度味わってみないか?」
溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

溺愛令嬢の正体は、まさかの霊能界トップ!?

261.6k 閲覧数 · 連載中 · 朝霧祈
原口家に取り違えられた本物のお嬢様・原田麻友は、ようやく本家の原田家に戻された。
──が、彼女は社交界に背を向け、「配信者」として自由気ままに活動を始める。
江城市の上流社会はこぞって彼女の失敗を待ち構えていた。
だが、待てど暮らせど笑い話は聞こえてこない。
代わりに、次々と大物たちが彼女の配信に押しかけてくるのだった。
「マスター、俺の命を救ってくれ!」──某財閥の若社長
「マスター、厄介な女運を断ち切って!」──人気俳優
「マスター、研究所の風水を見てほしい!」──天才科学者
そして、ひときわ怪しい声が囁く。
「……まゆ、俺の嫁だろ? ギュってさせろ。」
視聴者たち:「なんであの人だけ扱いが違うの!?」
原田麻友:「……私も知りたいわ。」
夜に沈む

夜に沈む

6.7k 閲覧数 · 連載中 · 洛陽柱
初恋の相手は、百万ドルと引き換えに私を捨てた。そうして私は、望まぬ政略結婚へと追いやられた。

あれから五年。彼が再び私に会おうとした、その時——夫がそのすべてを知ることになる。
転生して、家族全員に跪いて懺悔させる

転生して、家族全員に跪いて懺悔させる

316.8k 閲覧数 · 連載中 · 青凪
婚約者が浮気していたなんて、しかもその相手が私の実の妹だったなんて!
婚約者にも妹にも裏切られた私。
さらに悲惨なことに、二人は私の手足を切り落とし、舌を抜き、目の前で体を重ね、そして私を残酷に殺したのです!
骨の髄まで憎い...
しかし幸いなことに、運命の糸が絡み合い、私は蘇ったのです!
二度目の人生、今度は自分のために生き、芸能界の女王になってみせる!
復讐を果たす!
かつて私をいじめ、傷つけた者たちには、十倍の報いを受けさせてやる...
今さら返してと言われても、私はもう最強一家の娘です

今さら返してと言われても、私はもう最強一家の娘です

3.5k 閲覧数 · 連載中 · ^野田恵^
シェリーは一度、高貴なるライアン公爵家に裏切られ、惨めに命を落とした。

――だが目覚めると、5歳児の姿に返っていた。
今世こそ冷酷な貴族の手から逃れ、平穏に生きるのだ。そう誓った彼女は、孤児院の斡旋リストから、最も害のなさそうな「退屈で平凡な男」を新しい父親に指名した。

それが、人生最大の計算違いになるとも知らずに。

新しく父親になったサイラスは、裏社会の生ける伝説と呼ばれる【最強の殺し屋】。
母親は、引退した【超一流の暗殺者】。
兄たちは、国を揺るがす【狂気の天才科学者】と、歩く人間兵器な【最凶の武闘派】。
――ようこそ、世界で最も物騒な「普通の家族」へ。

かつての実家が消えたシェリーを必死に捜索する裏で、彼女は文字を習うより先に、銃の分解方法を叩き込まれていた。
彼女のために世界を火の海にできるほどの怪物の家族に囲まれ、かつての脆く儚い令嬢はもうどこにもいない。

彼女は家族に全肯定され、狂愛される「怪物ちゃん」。
かつて自分を捨てた傲慢な貴族どもを、今度はその牙で、完膚なきまでに噛み砕く番だ。
不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

2.1m 閲覧数 · 連載中 · 七海
初恋から結婚まで、片時も離れなかった私たち。
しかし結婚7年目、夫は秘書との不倫に溺れた。

私の誕生日に愛人と旅行に行き、結婚記念日にはあろうことか、私たちの寝室で彼女を抱いた夫。
心が壊れた私は、彼を騙して離婚届にサインをさせた。

「どうせ俺から離れられないだろう」
そう高をくくっていた夫の顔に、受理された離婚届を叩きつける。

「今この瞬間から、私の人生から消え失せて!」

初めて焦燥に駆られ、すがりついてくる夫。
その夜、鳴り止まない私のスマホに出たのは、新しい恋人の彼だった。

「知らないのか?」
受話器の向こうで、彼は低く笑った。
「良き元カレというのは、死人のように静かなものだよ?」

「彼女を出せ!」と激昂する元夫に、彼は冷たく言い放つ。

「それは無理だね」
私の寝顔に優しくキスを落としながら、彼は勝ち誇ったように告げた。
「彼女はクタクタになって、さっき眠ってしまったから」
本物令嬢の正体がばれました

本物令嬢の正体がばれました

123k 閲覧数 · 連載中 · ワニノコ
新谷南は新谷家で二十年も育てられたのに、本当の娘が戻ってきた途端、あっさり家を追い出された。

デザイン部のディレクターの席? 本当の娘へ。
何千万円もの価値がある婚約話? 本当の娘へ。

会社中の人間が、彼女という「野良扱いの娘」がどう転げ落ちていくか、笑いものにしようと様子をうかがっていた。

そんなある日、世界限定二十台の高級バイクが会社の前に止まる。降りてきた不良っぽいイケメンが言った。

「妹、兄貴と一緒に帰るぞ」

新谷家の人間「……は?」

そのあとで彼らはようやく知ることになる。

彼女こそ、国内外の美術館の館長たちが面会待ちの列を作る「南先生」と呼ばれるアーティストであり、
新谷グループの全受賞特許の名義人であり、
さらに、伝説の「国家並みの資産を持つ」と噂される周防家の、本当の長女だということを。

大手財閥の若き当主は、封印していた婚約書を取り出し、薄く唇を吊り上げる。

「なるほど。俺の本当の婚約者は、君だったわけか」
自己犠牲はもうおしまい。虐げられた養女の反撃

自己犠牲はもうおしまい。虐げられた養女の反撃

9.8k 閲覧数 · 連載中 · 神楽
丸十五年もの間、涼宮寧音の人生は、ただ一つの残酷な目的のためにあった。
――病弱な義妹のための「生きる血袋」として仕えること。

健康も、才能も、尊厳も、そのすべてを捧げて尽くしてきた。しかし、必死に媚びへつらい、 縋り付いてきた家族から彼女に返されたのは、冷酷な裏切りと追放だった。

彼女の最初の人生は、あまりにも惨めな悲劇で幕を閉じる。
底知れぬ悔恨のなか、彼女は高層ビルから身を投げたのだった。

――だが、運命は彼女に二度目のチャンスを与えた。

二十三歳の誕生日の朝、目を覚ました寧音は誓う。もう二度と、理不尽に耐え忍ぶだけの犠牲者にはならない、と。

彼女は、毒親と義妹が巣喰う涼宮家を毅然と離脱。彼らが決して奪うことのできない、自分だけの唯一無二の武器――非凡なる「デザインの才能」を手に、新たな世界へと飛び込む。

その圧倒的な輝きは、政財界に絶対的な権力を誇る最高経営責任者、伏見盛重の目を引いた。彼は同情という名の施しではなく、対等なビジネスパートナーとして、彼女に救いの手を差し伸べる。

いまや寧音は、ただ生き延びるために足掻く哀れな女ではない。

自らの人生を狂わせた「家族」を冷徹に、一歩ずつ破滅へと追い詰めながら、彼女は愛する実母の死の真相へと迫っていく。