父の息子の代わりになる

父の息子の代わりになる

大宮西幸 · 完結 · 22.0k 文字

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紹介

弟が納屋に入っていったのは、火曜日の午後だった。
七歳の弟が、ゆっくりと歩いていくのを、私はただ見送った。

三日後、飼料の貯蔵室で、弟の遺体が見つかった。
外側から鍵がかけられた床下扉の中で、彼は助けを呼び続けていた。
誰も、その声を聞かなかった。

それから二週間後――父と継母が、我が家を焼き尽くした火事で死んだ。

今、牧場は私のものだ。
約120ヘクタールの草地と、家、牛たち……父が「娘には決して渡さない」と言い切ったすべてが、私の手にある。

町の人々は皆、私を悲劇の生存者だと思っている。
三週間で家族全員を失った少女だと。

だが、原野良子刑事は、偶然なんて信じていない。

そして今、彼女は私の玄関に立ち、私が答えたくない質問を投げかけている。

チャプター 1

 私の七歳の弟は、ある火曜日の午後、古い納屋の中へと姿を消した。

 私は台所の窓からその様子を見ていた。両手で包み込んだコーヒーマグは、もう一時間も前に冷めきっている。光太郎は埃っぽい庭を走り抜けていく。足に合わない大きすぎる長靴が、一歩ごとに土煙を上げていた。彼の笑い声が午後の暑さを切り裂く。それは明るく、そして無邪気な響きだった。

「月菜、絶対に見つけられないよ!」

 彼は家の方を振り返りながら叫んだ。その顔は満面の笑みで、前歯が抜けており、どこか誇らしげだった。

 私は手を挙げた。そして、振った。

 彼も手を振り返し、納屋の開け放たれた扉の向こうへと消えていった。

 私は十数えた。二十。三十。

 コーヒーマグの冷たさが掌に伝わる。台所には食器用洗剤の匂いと、洋子がつけている香水の残り香が微かに漂っていた。外では、遠くの牧草地で牛たちが静かに草を食んでいる。すべてが静寂に包まれていた。

 私はマグを置き、流し台へと歩いた。それを濯ぎ、拭き、片付けた。

 私は、弟を追いかけなかった。

 古い納屋というものには、秘密があるものだ。前触れもなく抜け落ちる腐った床板。皮膚を裂こうと待ち構える錆びた釘。内側からは開かない掛け金がついた落とし戸。

 あの落とし戸のことは、誰もが知っていた。父さんは何年も前から修理するつもりでいた。「そのうちやるさ」父さんはそう言っては忘れてしまうのだ。光太郎に乗馬を教えなきゃいけないから、とか、洋子が街で買い物を頼んだから、とか言って。

 もちろん、私も知っていた。

 三日後、田中圭助が彼を見つけた。

 圭助はうちの牧場で働く男だ。六十歳で、生涯にわたる重労働のせいで背中は曲がり、その手は使い古された革のようだった。彼は牛の餌を取るために納屋の二階へと上がった。この二十年間、毎朝欠かさず続けてきた日課だった。

 落とし戸はロックされていた。錆びついて閉ざされていたのだ。こじ開けるにはバールが必要だった。

 光太郎の体が滑り落ち、床にぶつかった。その音を私は一生忘れないだろう。鈍く、重い音。まるで飼料袋のような。かつて生きていた何かのような音。

 その時、私は納屋にいた。牛舎の掃除をしていて、手には重いピッチフォークを握り、背中は汗でシャツが張り付いていた。圭助の叫び声が聞こえた。「なんということだ......」という声が。

 私はピッチフォークを取り落とし、走った。

 光太郎は横向きに倒れ、顔は私とは逆の方を向いていた。服は泥と、もっとどす黒い何かで汚れている。指先は擦りむけて生爪が剥がれ、爪は割れていた。まるで何かを引っ掻き続けていたかのように。

 たぶん、落とし戸を。外に出ようとして。

 圭助は彼のそばに膝をつき、顔面蒼白で口を動かしていたが、声にはなっていなかった。

 私はそこに立ち尽くしていた。長靴が床に根を生やしたかのように動けない。かつて私の弟だった、小さくしわくちゃになった亡骸を見つめていた。

 警察と検視官が到着し、現場検証が行われた。遺体は警察によって搬送され、後日、検視結果が伝えられた。死因は脱水症状による衰弱死とのことだった。あの子は助けを求めて叫んでいたのだろう。誰にも聞こえることなく。

「古い納屋だからな」警察官は首を振りながら言った。「痛ましい事故だ」

 知らせを聞いた洋子は悲鳴を上げた。父さんのシャツを掴み、爪で首筋に赤い跡を残しながら、獣のようなしわがれた声で泣き叫んだ。父さんは彫像のようにそこに立っていた。石から切り出されたような顔をして。その両手は役立たずの重りとなって、脇にだらりと垂れ下がっていた。

 私は戸口に立ち、彼らを見ていた。何も感じなかった。

 あるいは、すべてを感じすぎていて、それに名前をつけることができなかっただけなのかもしれない。

 その日の夕方、原野良子刑事がやって来た。

 彼女は背が高く、町のどの男よりも上背があった。その鋭い眼光は何も見逃さない。驚くことなどもう何もないほど多くのものを見てきた人間特有の身のこなしだったが、それでも彼女は観察した。念のために。

「神崎月菜さん?」彼女は尋ねた。すでに知っているくせに。

「はい」

「いくつか質問があるの」

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