かつて私を憎んでいた社長が、今は私と結婚したがっている

かつて私を憎んでいた社長が、今は私と結婚したがっている

大宮西幸 · 完結 · 31.8k 文字

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紹介

金曜日、午後5時。新しいビキニを手に握りしめ、私のパーソナルトレーナーである吉村潤とのビーチ週末の夢を描いていた。そこへ高橋健太が爆弾を投下。「連休にVIPファイルの整理が必要だ。」私はこの仕事を6ヶ月間休みなしでこなしてきたのに!

怒り心頭で、私は彼の予備キーを使って、彼のイタリア製レザーソファをTikTokでオークションにかける様子を撮影した。まさかその動画が大バズりするとは思わなかった—そして絶対に予想していなかったのは、トップにピン留めされた彼のコメント。「なぜ俺もオークションに含めなかったんだ?」

高校時代、彼は卒業式で私を公開処刑するような恥辱を仕組んだ。今、彼の婚約者は「雇用状態に気をつけなさい」と警告し、一方で彼のライバル企業は私の給料を2倍にするオファーを滑り込ませてくる...

私はただもう一つの台無しになった週末について愚痴りたかっただけなのに。どうしてこの社長の愛と憎しみの歪んだゲームに巻き込まれることになったのだろう?

チャプター 1

西村成実視点

 金曜日、午後五時。S市にある高橋広告のオフィスでは、週末を前に社員たちが帰り支度を始め、キャスター付き椅子の転がる音や書類を整理する音で満ちていた。

 私は秘書デスクに座り、ファイルを整理するふりをしながら、心の中で静かにカウントダウンしていた――あと五分、あと三分、もう少し……。

「成実」

 最悪。

 私は顔を上げ、完璧に磨き上げたビジネススマイルを浮かべた。「はい、社長」

 高橋健太が私の前に立っていた。仕立ての良いスーツを非の打ちどころなく着こなし、その表情は読み取れない。彼の瞳が私のデスクの上をさっと見渡し、やがて私の顔に留まった。「敬老の日の連休中に、VIPクライアントのファイルをすべて整理しておいてくれ。火曜日の朝八時までに、完全な分析レポートを私のデスクに提出するように」

 私の笑顔が一瞬凍りついたが、すぐに持ち直した。「承知いたしました、社長。問題ございません」

「よろしい」彼は踵を返し、今や誰もいなくなったオフィスに足音を響かせながら去っていった。

 エレベーターのドアがチーンという静かな音を立てて閉まるまで、私は笑顔を保ち続けた。

「連休なんてクソ食らえ!」私は拳を握りしめ、小声で悪態をついた。

 私のデート! やっとのことで週末の約束を取り付けた、あのイケメンパーソナルトレーナーの吉村潤とのデートが! ビーチに行く計画だったのに! 新しいビキニまで買ったっていうのに!

 オフィスはエアコンの作動音と、私の怒りに満ちた呼吸以外、完全に静まり返った。私は健太の閉ざされたオフィスドアを睨みつけ、秒刻みで怒りがこみ上げてくるのを感じていた。

「半年よ! この半年間、まるで私がいないみたいにこき使って!」私は誰もいない空間に向かって叫んだ。「最後に休暇を取ったのがいつか知ってる? 丸一年も前よ!」

 私は立ち上がり、オフィスを歩き回った。その時、とんでもない考えが頭をよぎった。

 健太のオフィスのドアに目をやる。彼のスペアキーは私の引き出しの中だ。

 十分後、私は社長室に忍び込んでいた。床から天井まである窓から月明かりが差し込み、高価な調度品を照らし出している。私はスマートフォンを取り出し、ティックトックを開いて録画を始めた。

「ようこそ、みなさん、『貧乏秘書の逆襲オークション』へ!」私はカメラに向かって興奮気味に宣言した。「本日は、この極悪非道な私の上司の大切な私物を、すべてオークションにかけちゃいます!」

 私はイタリア製の革ソファに歩み寄り、芝居がかった手つきでぽんと叩いた。「こちらのソファ、イタリア製ハンドクラフト品、開始価格は五十万円から! これがあれば、イケメンモデルを五人雇って一緒に映画鑑賞ができますよ! 誰か入札します?」

 私はどんどんノリノリになり、彼のデスクへと移動した。「そしてこのモンブランのペン――これがあれば、素敵な男性三人と一か月間、高級ディナーが楽しめます!」

 次にスマートコーヒーメーカーへ。「このコーヒーメーカー、私の家賃より高いのですよ。これを売れば、T国で二週間はバカンスが楽しめますよ!」

 私は彼の電動歯ブラシを手に取り、鼻にしわを寄せた。「これは……キモすぎる。これはタダであげちゃいます」

 最後に、私は締めくくりのためにカメラに向き直った。「もしこの全部が売れたら、イケメンモデルを十八人雇って、世紀のパーティーを開きます! 貧乏人だって大きな夢を見ちゃいけないなんて、誰が言いました?」

 録画を止めると、ここ数か月で最高の気分だった。自分のデスクに戻り、私は何も考えずに投稿ボタンを押した。

「退屈な残業に、ちょっとした楽しみをね」私はそう呟きながら、あの忌々しいクライアントファイルに取り掛かった。

 二時間後、私のスマートフォンがノンストップで振動し始めた。

 いいね一件。

 いいね十件。

 いいね百件。

「何が起きてるの?」ティックトックを開いた私は、危うくスマートフォンを落としそうになった。

 いいね一千件!

 コメント欄は爆発状態だった。

「全社畜の声を代弁してくれてる!👍」

「私も上司の私物売りたい!😂」

「天才だ、絶対真似する!」

「続報求む! 上司の反応どうだった?」

 私の手は興奮で震えていた。四時間後、カウントは一万に達した。六時間後には、五万いいね!

「なんてこと、バズっちゃった!」私はソファの上で転げ回った。「私、ティックトックの有名人だ! 潤もきっと見直してくれるわ!」

 潤に自慢のメッセージを送ろうとした、その時。一番上にピン留めされたコメントに気づいた。

「正気か? ついでに俺自身もオークションにかけたらどうだ?」

 私は凍りつき、そのプロフィールをクリックした。

 高橋健太。

 認証済みアカウント。

 私の手からスマートフォンが滑り落ち、床にゴトッと鈍い音を立てた。

「嘘、嘘、嘘、嘘……」私は顔を覆った。「こんなの現実じゃない。ありえない!」

 しかし、あの青いチェックマークは、痛々しいほど紛れもない本物だった。

 心臓が激しく鼓動し、手のひらに汗がにじむ。天国から地獄へ真っ逆さまとはこのことだ。

 午前三時、私の電話が鳴った。発信者表示は、高橋健太。

 私はスクリーンを見つめ、指を通話ボタンの上で丸々十秒間さまよわせた後、ようやく押した。

「西村成実」スピーカーから聞こえてきた彼の声は、恐ろしいほどに落ち着いていた。「有名になっておめでとう」

「しゃ、社長、これはその、説明できま……」私の声は、締められたアヒルのようだった。

「必要ない」彼は私の言葉を遮った。その口調には、不穏な遊び心が含まれている。「君の『商才』には、なかなか興味をそそられる。来週の火曜日朝八時、私のオフィスに来い。君の『販売戦略』について話し合おうじゃないか」

「わ、私は――」

「きちんとした服装で来い。君は今や『SNSの有名人』なんだからな」。彼は一呼吸おいて続けた。「ああ、そうだ。私のコーヒーメーカーが君の家賃より高いというのは事実だ。おやすみ、成実」

 プツッ。

 私はベッドに崩れ落ち、窓から夜空を眺めた。月はいつもと同じなのに、私の世界は根底から覆されてしまった。

 来週の火曜日朝八時、私を待ち受けているのは何? 激怒した上司? 冷たい解雇通知? それとも……。

 私は目を閉じ、健太の最後の言葉を頭の中で繰り返した。彼は怒っているようには聞こえなかった。むしろ……興味を持っているようだった?

「私、一体なんてことをしちゃったんだろう……」私は天井に向かって、そう囁いた。

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