まやかしの愛が醒める時

まやかしの愛が醒める時

水無瀬 · 連載中 · 345.8k 文字

406
トレンド
972
閲覧数
33
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

「私は、嘘の上に築かれた檻の中で、彼を愛しすぎてしまった」

3年間、私は夫の冷淡さと無関心に耐え続けてきた。自分が、夫と彼の「初恋の女」との駆け引きに使われている、ただの都合の良い駒に過ぎないと言い聞かせながら。

それでも、どこかで奇跡を信じていたのかもしれない。

しかし、あの女が帰ってきた。彼女の存在と、夫が隠そうともしない剥き出しの深情が、私のなかに残っていた最後の幻想を容赦なく打ち砕く。

の時、私はようやく、偽りの夢から目を覚ました。

チャプター 1

「膝の靱帯がかなりひどく損傷しています。あと少し処置が遅れていたら、後遺症が残ってもおかしくなかったですよ」

病室で医師は眼鏡を押し上げ、ひとりで座る沈川澪をぐるりと見回して眉をひそめた。

「お一人ですか? ご家族の付き添いは」

沈川澪は伏し目がちに答える。

「……いません」

医師はカルテの『既婚』の文字にちらりと目をやり、やりきれないように息を吐くと、淡々と処方箋を出した。

沈川澪は薬の紙を握りしめ、左脚にぐるぐると厚い包帯を巻いたまま、足を引きずりながら入院棟を出た。

そのとき、スマホが鳴った。藤原司からだ。

沈川澪は深く息を吸い込み、通話を取る。

「祖母が、今夜は戻って食事しろと」受話口から聞こえる声は、いつもどおり冷淡だった。「どこにいる?」

「病院よ」沈川澪はできるだけ平静を装う。「午後に軽い事故に遭って。膝を少し怪我したの」

向こうが二秒ほど沈黙する。

「……ひどいのか?」

「ひどくないわ」沈川澪は唇を噛み締めた。「すぐ帰るから」

切ろうとした瞬間、受話口の奥から騒がしい声が割り込んだ。

『おい藤原、電話してる場合じゃないぞ! 負けたんだから罰ゲームだ! 早く月乃にキスしろよ!』

沈川澪の胸がきゅっと縮む。月乃――朝倉月乃?

帰国したの?

藤原司に昔、幼なじみの恋人がいたことを、沈川澪は結婚してから知った。

雑音の中で、藤原司がくすりと笑うのが聞こえた。

「安心しろ」

そして沈川澪へ、まるで事務連絡のように言った。

「大した怪我じゃないなら、早めに帰れ」

通話はそこで切れた。

沈川澪は片脚を引きずりながら道端へ出て、タクシーを拾う。

藤原家の邸宅に戻ると、藤原司の祖母である藤原清子が駆け寄ってきた。沈川澪の脚を見るなり顔色を変え、慌てて支える。

「澪、その脚……どうしたの?」

「転んだだけです。大丈夫ですよ」

心配をかけたくなくて、沈川澪はとっさに嘘をついた。

藤原清子は信じていない目だった。

「転んだだけでこんなになる? 司は? どうして一緒じゃないの」

藤原司の名が出た途端、沈川澪の表情に影が落ちる。

藤原清子はそれだけで察したらしく、沈川澪が嫁いできてからの数年、藤原司がどんな態度をとってきたか、彼女が一番よく分かっている。

藤原清子は苛立たしげに言った。

「司ったらまったく……今すぐ電話して戻させるわ!」

そう言って、スマホに手を伸ばしかけた。

沈川澪は慌ててその腕を止めた。

「お祖母様、いいんです。朝倉月乃さんが戻ってきたので、彼、今忙しいから」

朝倉月乃の名に、藤原清子の手が宙で止まる。次に沈川澪へ向けられた視線には、憐れみが混じっていた。

「澪……この数年、苦労をかけたわね。安心しなさい。司が戻ったら、お婆ちゃんがちゃんと叱ってやるから」

沈川澪は笑って、何も言わなかった。

――三年前。沈川澪は療養施設でボランティアをしていて、藤原清子と出会った。

当時はまだ大学生。藤原清子は穏やかでおしゃべりで、自然と親しくなった。

藤原清子は沈川澪を気に入り、手を握ってはよく言った。

「こんな子が孫の嫁なら最高なのにねぇ」

やがて藤原司が見舞いに来て、沈川澪は初めて彼を見た。冷たく整った顔立ち、どこか憂いを帯びた雰囲気――沈川澪は一瞬で目を奪われた。

藤原清子はそれを見抜いて、さりげなく二人を近づけた。

藤原司も拒まなかったため、流れのままに結婚した。

けれど沈川澪は知らなかった。藤原司が彼女を娶ったのは、朝倉月乃への意地と当てつけだったことを。

ある宴席で、沈川澪は彼の友人の声を耳にした。

「藤原、月乃を怒らせるためにって、他の女とそんな雑に結婚するのはよくないだろ」

藤原司は何も言わず、ただ目の奥に複雑な色を滲ませていた。

沈川澪の胸は、その瞬間、無数の針で貫かれたみたいに痛んだ。

――彼女は、妥協の産物にすぎなかったのだ。

夜九時になっても、藤原司は帰ってこなかった。電話をすると「会社が忙しい」の一点張り。

食卓いっぱいの料理を見て、藤原清子の顔に不安が浮かぶ。

「司ったら……いくら忙しくても食事ぐらい……」

沈川澪は心配をかけまいと、皿を片づけながら言った。

「お祖母様、私が会社まで何か持っていきますね」

藤原清子の視線が沈川澪の顔から、怪我をした脚へと移る。痛ましげに彼女の手を叩いた。

「悪いわね……」

「大丈夫ですよ、お祖母様」沈川澪は小さく笑った。

藤原清子は沈川澪の手を握り、重く言った。

「澪。お婆ちゃんが認める嫁は、あなただけよ。朝倉月乃がどう騒ごうと気にしないで。司が少しでもあなたにひどいことをしたら、お婆ちゃんが絶対に許さないから」

沈川澪は何も言わず、ただ小さく頷くだけだった。

三十分後。保温容器を提げ、藤原グループ本社へ。

膝はじくじく痛み、一歩ごとに針で刺されるようだったが、沈川澪は耐えて藤原司の執務室へ向かった。

ノックしようとしたとき、室内から笑い声が漏れた。

女の笑い声。澄んで、甘えるようで。

沈川澪の手が空中で固まる。

扉の隙間から覗くと、藤原司は大きなデスクの奥。向かいのソファに朝倉月乃が座り、赤ワインを片手に艶やかな目で彼を見上げている。

二人きり。空気はひどく親密だった。

「司、覚えてる? 大学のとき」朝倉月乃が微笑む。「私の誕生日に、ケーキ買いに塀を乗り越えて、警備員に三本先の通りまで追いかけられたの」

藤原司が低く笑う。

「ああ、覚えてる」

朝倉月乃の声は柔らかい。

「ね。あの頃はよかった……何も考えなくてよくて、一緒にいるだけで幸せだった」

沈川澪は扉の外で息を呑み、指が震えた。

次の瞬間――

手から保温容器が滑り落ち、床に落ちた。

音に気づき、二人が振り返る。

そこに立っていたのは、包帯の脚を引きずる沈川澪だった。

「どうして来た」藤原司は沈川澪の包帯を見て眉をつり上げた。「小さな怪我じゃなかったのか。そこまで大袈裟に巻く必要ある?」

「あなたが澪ね? 朝倉月乃。司の友達よ」

朝倉月乃は藤原司のそばへ寄り、肩を軽く叩いて柔らかな声で言う。

「司、ひどい言い方。澪、怪我してるんだから、支えてあげなきゃ」

沈川澪は朝倉月乃を見た。落ち着いた所作、上品で堂々とした立ち姿。惨めな自分とは、まるで住む世界が違う。

藤原司がこれほど惹かれるのも無理はない。

藤原司が沈川澪へ歩み寄る。

そのとき沈川澪は、不意に見てしまった。

白いシャツの襟元――ネクタイに、鮮烈な口紅の跡。

血を含んだ薔薇みたいに目に痛い。

朝倉月乃の、あの色。

最新チャプター

おすすめ 😍

不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

3.4m 閲覧数 · 連載中 · 七海
初恋から結婚まで、片時も離れなかった私たち。
しかし結婚7年目、夫は秘書との不倫に溺れた。

私の誕生日に愛人と旅行に行き、結婚記念日にはあろうことか、私たちの寝室で彼女を抱いた夫。
心が壊れた私は、彼を騙して離婚届にサインをさせた。

「どうせ俺から離れられないだろう」
そう高をくくっていた夫の顔に、受理された離婚届を叩きつける。

「今この瞬間から、私の人生から消え失せて!」

初めて焦燥に駆られ、すがりついてくる夫。
その夜、鳴り止まない私のスマホに出たのは、新しい恋人の彼だった。

「知らないのか?」
受話器の向こうで、彼は低く笑った。
「良き元カレというのは、死人のように静かなものだよ?」

「彼女を出せ!」と激昂する元夫に、彼は冷たく言い放つ。

「それは無理だね」
私の寝顔に優しくキスを落としながら、彼は勝ち誇ったように告げた。
「彼女はクタクタになって、さっき眠ってしまったから」
二度目はない 動じず咲く

二度目はない 動じず咲く

168.3k 閲覧数 · 完結 · Gloria Fox
結婚式の一ヶ月前、私は一年かけて自らの手で縫い上げたウェディングドレスを燃やした。

婚約者は身ごもった愛人を腕に抱き寄せたままそこに立ち、私を鼻で笑っていた。「俺がいなきゃ、お前なんて何の価値もない」

私はきびすを返し、この街で最も裕福な男の扉を叩いた。「ロック氏、政略結婚にご興味はおありですか? 千億ドル相当の株式――それに加え、未来のビジネス帝国も無料でお付けいたしますわ」
転生して、家族全員に跪いて懺悔させる

転生して、家族全員に跪いて懺悔させる

339.5k 閲覧数 · 連載中 · 青凪
婚約者が浮気していたなんて、しかもその相手が私の実の妹だったなんて!
婚約者にも妹にも裏切られた私。
さらに悲惨なことに、二人は私の手足を切り落とし、舌を抜き、目の前で体を重ね、そして私を残酷に殺したのです!
骨の髄まで憎い...
しかし幸いなことに、運命の糸が絡み合い、私は蘇ったのです!
二度目の人生、今度は自分のために生き、芸能界の女王になってみせる!
復讐を果たす!
かつて私をいじめ、傷つけた者たちには、十倍の報いを受けさせてやる...
不倫夫を捨て、私は大富豪の妻になる

不倫夫を捨て、私は大富豪の妻になる

355.2k 閲覧数 · 連載中 · 七海
人生最良の日になるはずだった、結婚式当日。
新郎の車から出てきたのは、見知らぬ女の派手なレースの下着だった。

しかも、その布切れにはまだ。生々しい情事の痕跡が残されていた。

吐き気がするほどの裏切り。
幸せの絶頂から地獄へと突き落とされた私。

けれど、泣き寝入りなんてしてやらない。
私はその場でウェディングドレスの裾を翻し、決意した。

「こんな汚らわしい男は捨ててやる」

私が選んだ次の相手は、彼など足元にも及ばない世界的な億万長者で?
今さら跪く元夫を置き去りに、大富豪の甘い執着愛が始まりました

今さら跪く元夫を置き去りに、大富豪の甘い執着愛が始まりました

10.6k 閲覧数 · 連載中 · 桜井 ゆい​
夫は私を、別の男のベッドへ差し出した。
あの男にとって、私は自分の出世や欲望のために利用する「モノ」でしかなかったのだ。

だが、あの男は夢にも思っていなかった。
自分がゴミのように投げ捨てた贈り物が、この国で最も恐れられ、最も力を持つ男の「かけがえのない愛する人」になるなんて。

やがて絶望を知り、私の前に跪いて許しを乞う元夫。
その惨めな姿を見下ろす私を、最高峰の男が背後から抱き寄せ、耳元で低く甘く唸った。

「俺の子供を身ごもっておきながら、一体どこへ行こうというんだ?」

――捨てられた妻の反撃と、逃げられない絶対的な愛が、ここから始まる。
転生して絶縁したら、元家族は破滅に

転生して絶縁したら、元家族は破滅に

33.8k 閲覧数 · 連載中 · ワニノコ
名門古川家の生まれの娘・古川朱那は、前世、父・古川邦夫と三人の兄(礼和、礼希、礼人)が養妹・周防天華を無条件に贔屓し、天華の陰険な陥れに遭い、理不尽に死んだ。
22 歳、天華に陥れられた日に生まれ変わった朱那は、過去の卑屈さを捨て、天華の悪事を暴き、偏心な家族に毅然と立ち向かう。芸能界で演技の才能を開花させ、自らの人生を切り開くため、全力で逆襲する。
追放された偽物の娘、その正体は最強でした

追放された偽物の娘、その正体は最強でした

818.8k 閲覧数 · 連載中 · ゲゲゲ
「本物の娘が見つかった。お前はもう用済みだ」
あの子が現れたその日、私は『偽物の娘』として家を追い出された。
渡されたのは、わずかな小銭と地方行きの片道切符だけ。
さらに婚約者は私をゴミのように捨て、その日のうちに『本物』であるあの子にプロポーズした。

……上等じゃない。せいぜい勝った気でいればいいわ。
だって彼らは、私の【本当の顔】を何一つ知らないのだから。

名門病院が見放した命を救う『天才外科医』。
オークションで数億円の値を叩き出す『伝説の画家』。
裏社会の闘技場で無敗を誇る『影の女王』。
そして――彼らの全財産すら小銭に思えるほどの『真の巨大財閥の後継者』であることを。

今さら元婚約者が土下座で許しを請おうと、本物の娘が嫉妬で狂いそうになろうと、もう遅い。
かつて私に婚約破棄の書類を叩きつけた冷酷で傲慢なCEOでさえ、今や何かに取り憑かれたように私を追い回し、「もう一度だけチャンスをくれ」とすがりついてくる始末。

私を捨てて、自分たちの人生を『アップグレード』したつもり?
笑わせないで。最初から、圧倒的に上の存在だったのは私のほうよ。
社長の逃げた妊娠妻

社長の逃げた妊娠妻

25.3k 閲覧数 · 連載中 · ユイ
川崎佑哉は上半身裸のまま、江原安美の上に覆いかぶさり、大きな手で彼女の柔らかな胸を撫で上げた。

江原安美は甘い吐息を漏らしながら喘いだ。「もう我慢できない…ちょうだい…」

川崎佑哉は彼女の体をうつ伏せにひっくり返し、ペニスを彼女の柔らかな臀部の間で前後に擦りつけた後、背後から一気に挿入した。

「江原安美、たとえ離婚しても、お前は一生、俺の下で喘ぐしかないんだ。」


江原安美はまさか自分がいつか、夫・川崎佑哉と彼の愛人のために結婚指輪をデザインすることになるとは思わなかった。そしてさらに届いたのは、一通の離婚届だった。

彼女は迷わずサインし、彼への想いを断ち切り、妊娠検査の結果を隠して、海外へと旅立った。

その後、彼女は海外で大成功を収め、言い寄る男は数知れず。しかし彼は変わった。彼女に執着し、離れようとせず、目を赤くして「もう一度チャンスをくれ」と懇願した。

彼女の小さな宝物が飛び出して彼の前に立ちはだかり、腰に手を当ててこう言った。「ママに追いつきたいなら、まず列に並んでね!」
地獄から帰った私を、頂点の男が甘やかすなんて聞いてない

地獄から帰った私を、頂点の男が甘やかすなんて聞いてない

6.9k 閲覧数 · 連載中 · 三日月プリン
「救うのは妹の方だ。お前は強いから、生き残れるだろう」
十八年間、空気のように扱われ、誘拐事件の際にも迷わず切り捨てられた私。
「強さ」という名の言い訳で死の淵に追いやられた私は、地獄の果てで生き延びた。
そして今、全国民が見守る超人気リアリティショーの舞台に、私は「かつての復讐者」として舞い戻る。
家族が偽りの善人面を振りまく中、彼らの仮面を一枚ずつ剥ぎ取っていく最高のショウタイム。
そんな私を面白がり、盤面をひっくり返す男がいた。冷徹なるF1チャンピオン。彼だけは、私の冷酷な正義を肯定し、その権力で私を囲い込む。
さあ、復讐劇の始まりよ。私を「可哀想な犠牲者」だと思っていた報い、その身に刻ませてあげる。
未熟

未熟

7k 閲覧数 · 連載中 · ほしの なお
結婚3周年の日、見知らぬ相手からのメッセージが私の命を救い、同時に完璧だった結婚生活を木端微塵に砕いた。夫は親友と不倫し、義母は犯罪組織を牛耳る黒幕だった。
嘘の巣窟に囚われた私は、冷徹で権力を持つ弁護士にすがり、復讐を誓う。妊娠の偽装、証拠集め――奴らをすべて破滅させてやる。
だが、私を導く謎の「見知らぬ人」はいったい誰なのか? そして、その弁護士が本当に求めているものとは――?
社長の可愛い若妻

社長の可愛い若妻

18.8k 閲覧数 · 連載中 · 月島 ことね
丸5年もの間、私はすべてを捧げて林翔太を深く愛してきた。しかし、私たちの記念パーティーの夜、彼が新入りの秘書とキスしている現場を目撃してしまう。その瞬間、私の恋の魔法は完全に解けた。

愛に絶望した私は、お互いの利益のための「契約結婚」に同意する。てっきり、悪名高いプレイボーイの蒼井翼と結婚するものだと思っていた。ところが、書類にサインする瞬間、婚姻届に書かれていた名前は――蒼井沢言。誰もがその名を聞くだけで震え上がり、「地獄の帝王」と恐れられる冷酷な巨大財閥のトップだった。

彼は私に数々の価値連根のジュエリーを贈り、私の敵をすべて排除し、世のあらゆる嵐から守ってくれた。けれど、「愛している」という言葉だけは、一度も口にしなかった。

しかしある夜、彼は私を壁に押し付け、熱い吐息を肌に吹きかけながら、低く掠れた声で囁いた。
「音羽、俺をいつまで待たせるつもりだ?」

――この結婚は、決して偶然などではなかった。最初からすべて、彼が仕組んだ「執念の計画」だったのだ。
跡継ぎ問題に悩む御曹司様、私がお世継ぎを産んで差し上げます~十代続いた一人っ子家系に、まさかの四つ子が大誕生!~

跡継ぎ問題に悩む御曹司様、私がお世継ぎを産んで差し上げます~十代続いた一人っ子家系に、まさかの四つ子が大誕生!~

459.3k 閲覧数 · 連載中 · 蜜柑
六年前、藤堂光瑠は身覚えのない一夜を過ごした。夫の薄井宴は「貞操観念が足りない」と激怒し、離婚届を突きつけて家から追い出した。
それから六年後——光瑠が子どもたちを連れて帰ってきた。その中に、幼い頃の自分にそっくりの少年の顔を見た瞬間、宴はすべてを悟る。あの夜の“よこしまな男”は、まさに自分自身だったのだ!
後悔と狂喜に押し流され、クールだった社長の仮面は剥がれ落ちた。今や彼は妻の元へ戻るため、ストーカーのようにまとわりつき、「今夜こそは……」とベッドの隙間をうかがう毎日。
しかし、彼女が他人と再婚すると知った時、宴の我慢は限界を超えた。式場に殴り込み、ガシャーン!と宴の席をめちゃくちゃに破壊し、宴の手を握りしめて歯ぎしりしながら咆哮する。「おい、俺という夫が、まだ生きているっていうのに……!」
周りの人々は仰天、「ええっ?!あの薄井さんが!?」