姉を選んで私を捨てた冷徹社長が、お見合いをした途端に「俺の女だ」と執着してくる件について

姉を選んで私を捨てた冷徹社長が、お見合いをした途端に「俺の女だ」と執着してくる件について

86拓海 · 連載中 · 912.5k 文字

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紹介

五年間、私は彼の愛人だった。影のような存在として。
しかし結局、彼が公の妻として選んだのは、私の実の妹だった。

「出て行け」

冷酷に告げられた言葉に従い、私は彼への想いを断ち切った。
新しい人生、そして新しい素敵な男性との出会い。
過去を忘れて幸せになるはずだった。なのに。

私が他の男とデートをしていると知った瞬間、あの冷静沈着だった彼が嫉妬に狂った。
壁際に追い詰められ、強引に唇を塞がれる。
凶暴で、残酷なまでの独占欲。

絶頂の寸前、彼は意地悪く動きを止めて、掠れた声で私の耳元に囁いた。

「そいつと別れろ。そうすれば……イかせてやる」

チャプター 1

「蓮、気でも狂ったの? 車を止めて……」

西園寺希美はくぐもった声を漏らし、その語尾は微かに震えていた。

それは痛みによるものではない。目の前の男の瞳の奥に渦巻く、破滅的なまでの狂気におののいたからだ。

車内、彼女の両手は背後にねじ上げられ、男の掌に死ぬほど強く拘束されていた。その力は圧倒的で、身じろぎひとつできない。

速度計は時速八〇キロを超え、自動運転モードに入っている。男はそれを気にも留めず、窓外を流れるネオンが彼の冷厳な横顔に明滅する影を落としていた。その光景に、西園寺希美の心臓が早鐘を打つ。

神宮寺蓮は鼻で笑った。その冷ややかな笑い声には、隠しきれない怒気が混じっている。

彼はゆっくりと顔を近づけ、赤く腫れあがった彼女の手首に視線を落とすと、拘束していた大きな手を離した。代わりに彼女の顎を指先で挟み、懲罰を与えるかのように強く持ち上げる。

「これで終わり、だと?」

彼はスマートフォンを取り出した。画面は明るく点灯しており、西園寺希美が送ったショートメッセージが表示されている。

『神宮寺蓮、もう終わりにしましょう』

彼は冷酷に命じた。

「読んでみろ」

西園寺希美は苦悶の声を漏らし、両目を赤く充血させながら、死に物狂いで奥歯を噛み締めた。

「ただ私は……これ以上続けても意味がないと思っただけよ」

「意味がない?」

神宮寺蓮はその言葉を反芻した。首筋にかかる彼の生温かい吐息からは、微かなシダーウッドの香りが漂う。だがそれは彼女の全身を強張らせるだけだった。

彼は嘲笑した。

「俺のベッドに這い上がってきた時は、そんなこと言わなかっただろう? 今さら終わりだと? 西園寺希美、いい度胸だ」

西園寺希美の体が凍りついた。彼の言葉は醜悪だったが、反論できない事実でもあった。

五年前、確かに彼を誘惑したのは彼女の方だった……。薄暗い部屋のソファで、どれだけ許しを乞うても、彼は一晩中彼女を離さなかった。

それが彼女の初めての夜であり、今思い出しても鮮烈な痛みを伴う記憶だ。

彼女は顔の表情を隠すようにうつむき、皮肉な調子で言った。

「客と売春婦の間に、それ以外の可能性があるとでも?」

どうすれば彼を激怒させられるか、彼女は熟知していた。自分を売春婦に、彼を客に例える。それは敵を傷つけると同時に、自分自身をも深く傷つける諸刃の剣だ。

トップ財閥の当主として、生まれながらにしてピラミッドの頂点に立つ神宮寺蓮が、そのような比喩を許すはずがない。

案の定、彼の眼差しは瞬時に陰惨なものへと変わった。車を路肩に急停車させると、猛然と彼女の腰を掴む。その力は凄まじかった。

「あの契約書を忘れたわけじゃないだろうな」

彼の声は地の底を這うように低かった。

「終わらせるのは俺だ。俺が飽きるまで、お前はどこへも行けない」

あのいわゆる『愛人契約』は、彼女が一時の衝動でサインしたものだ。

狂乱の一夜が明けた後、神宮寺蓮の姿はなく、テーブルの上には契約書だけが残されていた。

彼女は藁にもすがる思いで迷わずサインした。それが自分を救う命綱だと思ったのだ。だがその藁が、五年もの間自分を縛り付ける鎖になるとは思いもしなかった。

「契約?」

西園寺希美は口の端を歪め、彼の拘束から逃れようともがいた。

「神宮寺社長はお忘れのようね。ご自分がもうすぐ結婚する身だということを」

「関係ない」

神宮寺蓮の口調は平淡だった。彼は彼女を後部座席に押し倒した。

「このメッセージは、見なかったことにしてやる」

彼の視線が、怒りで微かに赤らんだ彼女の目尻をなぞる。声はいつもの冷徹さを取り戻していた。

「だが覚えておけ、西園寺希美。大人しくしていろ。俺が許すまで、妙な真似はするな」

言い捨てると、彼は乱暴に唇を重ね、片手で彼女の服を解き、その手を下へと滑らせていった。

……

西園寺希美は神宮寺蓮が狂っているとは知っていたが、これほどまでとは思わなかった。何度も何度も貪られ、喉が枯れるほど喘がされ、結局一晩中車から出ることさえ許されなかった。

翌日、疲労困憊の体を引きずって西園寺家に戻った彼女を待っていたのは、鋭い平手打ちだった。

「パンッ」という乾いた音が、静まり返ったリビングに響き渡る。

西園寺希美は顔を背けるようによろめき、頬に火が出るような痛みが走った。

体勢を立て直し、ゆっくりと顔を向けると、そこには継母の花見美代子が立っていた。

花見美代子は真新しいチャイナドレスに身を包み、髪を一分の隙もなく撫でつけていたが、その顔は激情で歪んでいる。

「昨日はどこでほっつき歩いてたんだい! 朝帰りなんて! もうすぐ玲奈たちの婚約者が挨拶に来るんだよ。あんたのそんなだらしない姿を見られて、家の印象が悪くなったらどうするつもりだい!」

西園寺希美は切れた口の端を舐め、瞳の奥に冷たい光を宿したが、口は開かなかった。

花見美代子と言い争うのは最も愚かな行為だ。さらなる罵倒と暴力を招くだけだからだ。

「何とか言ったらどうなんだ!」

彼女が黙っているのを見て、花見美代子の怒りはさらにヒートアップした。手を伸ばして彼女の服を引き裂こうとする。

「そんなに着込んで、どうせやましいことでもしてたんだろう?」

西園寺希美は反射的に一歩下がり、その手を避けた。

だが花見美代子の視線は、わずかに開いた襟元から覗く、隠しきれない赤い痕跡に釘付けになった。

「やっぱりね、このクズ女が!」

花見美代子は軽蔑に満ちた顔で、彼女の鼻先に指を突きつけた。

「まだ若いのに恥知らずだね! 母親が母親なら娘も娘だ! あんたの母親も昔は……」

「黙れ!」

西園寺希美は猛然と顔を上げた。その瞳に宿る冷気は、相手を凍りつかせるほどだった。

「母さんのことを言うな!」

その剣幕に花見美代子は一瞬怯んだが、すぐに侮蔑の表情を取り戻した。

「何だい? 図星だろう? 人並みの格好をしたからって、玉の輿に乗れるとでも思ってるのかい? 自分の身の程を知りな! 誰にも望まれない愛人の子のくせに……」

西園寺希美は冷ややかな声で遮り、皮肉たっぷりに言った。

「神宮寺家は西園寺家との婚姻と言っただけで、誰と結婚するかまでは言っていないわ。神宮寺社長は自分が西園寺玲奈の婚約者だと認識しているのかしら?」

「口答えするんじゃないよ!」

激昂した花見美代子は、再び西園寺希美に平手打ちを食らわせようと手を振り上げた。

だがその掌が振り下ろされる瞬間、西園寺希美は彼女の手首をガシリと掴み、動きを封じた。

花見美代子の顔はみるみるうちに赤くなり、口汚く罵り始めた。

「玲奈じゃなければ、あんたみたいな野良犬だとでも言うのかい? 神宮寺の御隠居様が、あんたみたいな人間を家に入れるわけがないだろう! 寝言は寝て言いな!」

西園寺希美の心がチクリと痛んだ。

そんなことは百も承知だ。神宮寺の御隠居だけでなく、神宮寺蓮自身も同意しないだろう。

身分が違う。彼女には資格がない。

たとえ日陰の身で神宮寺蓮に五年間尽くしたとしても、ふさわしくないのだ。

「いい加減にしろ」

書斎から出てきた父の西園寺明が、陰鬱な顔で花見美代子の言葉を遮った。

「みっともないぞ!」

彼もまたこの名ばかりの娘を疎ましく思っていたが、外聞だけは気にする男だった。

「何を突っ立っている?」

西園寺明は眉をひそめて叱責した。

「さっさと顔を洗って、まともな服に着替えてこい! もうすぐ玲奈が神宮寺社長を連れてくるんだ。恥をかかせるな!」

西園寺希美は反論せず、踵を返して二階へと上がった。

姿見の中、自分の顔にはくっきりと五本の指の跡が浮かび、首筋にはキスマークが見え隠れしている。彼女は自嘲気味に口角を上げた。

もし花見美代子たちが、この首の痕が誰につけられたものか知ったら、それこそ発狂するに違いない。

身支度を整えて階段の下まで来た時、玄関の外から賑やかな足音が聞こえてきた。

西園寺玲奈の甘ったるい声が真っ先に飛び込んでくる。

「パパ、ママ、ただいま!」

西園寺希美の足が止まる。

次の瞬間、西園寺玲奈が大柄な男性の腕を組んで入ってきた。

ピンクのワンピースを着た彼女は化粧も完璧で、顔には勝ち誇ったような笑みが張り付いている。

そして彼女の隣にいる男――仕立ての良い黒のスーツを纏い、長身で端正な顔立ちをしたその男こそ、神宮寺蓮だった。

彼はリビングに足を踏み入れた瞬間、正確に階段の下の西園寺希美へと視線を向けた。

彼女の顔に残る鮮明な平手打ちの跡を見た時、彼の眉がわずかに、本当にわずかに動いた。

西園寺希美の心臓が一度だけ大きく跳ねた。彼女は反射的に彼から目を逸らす。

昨夜の記憶が潮のように押し寄せてくる……。その一瞬一瞬が、彼女の体を熱くさせた。

言いようのない動揺と、足の震え。昨夜の快楽がまだ体に残っているかのようだった。

花見美代子と西園寺明はすぐに神宮寺蓮の元へ駆け寄り、先ほどとは別人のような愛想の良さを見せた。

談笑する彼らは、まるで絵に描いたような幸せな家族に見える。

階段の上に立つ西園寺希美と彼らの間には、越えられない境界線が引かれているようだった。

神宮寺蓮は西園寺明の話に相槌を打ちながらも、その視線は絶えず、階段の上の西園寺希美に絡みついていた。

西園寺玲奈はその視線に気づき、表情を強張らせたが、すぐに笑顔を取り繕った。

「希美お姉ちゃん、降りてきたのね。さっきママから具合が悪いって聞いたけど、顔色が悪いわよ?」

当然、彼女は西園寺希美の顔の跡に気づいている。だがそれには触れず、花見美代子に向かって諭すように言った。

「ママ、お姉ちゃんもまだ若いんだから、たまに分別のないことをしても仕方ないわ。そんなに怒らないであげて」

花見美代子は引きつった笑みを浮かべ、仕方なさそうに口を開いた。

「はいはい、わかりましたよ。神宮寺社長、お見苦しいところを。この子は一日中遊び歩いてばかりで、私も彼女のためを思ってつい厳しくしてしまって」

そう言うと、彼女は西園寺希美に向き直り、他の人には見えない角度で嫌悪感を露わにした。

「希微、そこで何をボサッとしてるんだい? さっさとキッチンへ行って料理を運んでおいで」

その口調は使用人に命じるものであり、敬意のかけらもなかった。

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