籠の中の雀

籠の中の雀

間地出草 · 完結 · 25.7k 文字

562
トレンド
1.4k
閲覧数
291
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

高橋里奈(たかはし りな)の遺体を見た瞬間、佐藤美月(さとう みづき)はそれが事故ではないと確信した。そして周囲の誰もが驚く中、彼女はそのわずか三ヶ月後、里奈の指導教官であった高名な心理学教授、黒沢昭彦(くろさわ あきひこ)と結婚する。

この結婚が、周到に仕組まれた罠であったことを知る者は誰もいない。

笑顔を浮かべ、完璧な妻を演じる美月。その裏で、彼女は里奈の死の真相を密かに探っていた。この神聖なる学問の殿堂には、どんな闇が潜んでいるのか?そして、地下室に隠された謎の「コレクション」と、亡き姉・花(はな)との関係とは?

夫である黒沢の疑念が深まり、謎めいたティーチング・アシスタントの海斗(かいと)が現れるにつれ、美月の完璧な仮面は少しずつ崩れ始める。結婚生活そのものを賭けた危険な復讐劇の中で、彼女は生きてこのゲームを終えることができるのか?

チャプター 1

美月視点

 その夜、凍てつくような風が刃物のように私の頬を裂いた。パトカーの赤と青の回転灯がけたたましく明滅し、心理学研究室の建物の外に降り積もった真っ白な雪を、血のように不気味な色へと染め上げていた。

 私はただそこに立ち尽くし、制服警官たちが行き交うのを、そして白いシーツに覆われたストレッチャーが建物から慎重に運び出されるのを、茫然と眺めていた。シーツの端から、見慣れた手がだらりと垂れ下がっているのが見える。淡いピンクのマニキュアが施された、昨日、私たちの論文が受理されたお祝いに、喜びを分かち合ってハイタッチしたばかりの、あの手——。

 その瞬間、足元から世界が崩れ落ちる音がした。

「いやっ! 里奈!」

 どうやってストレッチャーに駆け寄ったのか、覚えていない。ただ、胸から突き上げてくる張り裂けるような痛みが、自分のものではないような絶叫に変わったことだけは確かだった。あの忌まわしい白いシーツを剥ぎ取りたい。里奈の顔を見て、これがすべて恐ろしい悪夢なのだと、誰かに教えてほしかった。

「落ち着いてください!」

 若い警官が、事務的な口調で私の行く手を阻んだ。

「離して! 彼女は私のルームメイトなの!」

 涙で滲む視界の中、私はもがいた。

「里奈! 一緒に卒業するって約束したじゃない! なんで……なんでこんなこと……!」

「美月……」

 背後から聞こえた低い声に、はっと振り返る。研究棟の入り口に、海斗が立っていた。いつもは穏やかな彼の顔が、今は複雑な感情に歪んでいる。その瞳には驚きと痛み、そして——まるで何かを責めるような、あるいは憐れむような、判然としない光が宿っていた。月明かりの下、彼の影は長く伸びている。この夜が私に感じさせる絶望と同じくらい、果てしなく。

「検視官の初見では、実験中の事故死という見立てです」

 近づいてきた中年警官が、私たちに温度のない声で告げた。

「被験者は、深睡眠実験中に機材が誤作動を起こし、窒息死したものと見ています」

 事故? 頭の中が、真っ白に染まっていく。里奈は私が知る中で最も細心な研究者だった。彼女がそんな初歩的なミスを犯すなんて、あり得るはずがない。

 私は雪の中に膝から崩れ落ち、冷たい結晶が頬で溶けていくのをなすがままにしていた。周囲の喧騒が遠のいていく中、心の中では一つの声だけが、はっきりと大きく響き始めていた。

 ——真実を暴き出す。どんな代償を払ってでも、里奈の無念を晴らしてみせる、と。

 あれから、三ヶ月が経った。

 今、私は教会の入り口に立っている。純白のウェディングドレスに身を包み、黒沢昭彦教授の腕にそっと手を絡ませて。ステンドグラスから差し込む陽光が、大聖堂の内部を温かい黄金色に照らし出す。荘厳なオルガンが奏でる『結婚行進曲』と共に、純白のユリの甘い香りが満ち、参列者は皆立ち上がって、私たちを憧れの眼差しで見つめている。

 この瞬間、私は世界で一番幸せな花嫁だ。

「準備はいいかい、美月」

 黒沢教授が私の手を優しく握り、耳元で囁く。

 私は彼を見上げた。学界で人望の厚いこの男性は、彫りの深い理知的な顔立ちに、穏やかな物腰をたたえている。私を見つめる鳶色の瞳には、ひたむきな愛情が満ちているように見えた。どんな女性も、このような男性と結ばれることを誇りに思うだろう。

「ええ」

 私は人生で最高の笑顔を浮かべ、そっと頷いた。

 私たちはゆっくりとバージンロードを進み、両脇に並ぶ人々から温かい祝福を受ける。天井からは純白の花びらが舞い降り、まるでおとぎ話の一場面のようだ。祭壇に辿り着くと、牧師が厳かに待ち構えていた。

「美月さん」

 牧師の声は、温かく、そしてよく通った。

「あなたは、黒沢昭彦さんを夫とし、健やかなるときも、病めるときも、富めるときも、貧しいときも、彼を愛し、敬い、慈しむことを、死が二人を分かつまで誓いますか」

 目に涙が浮かんでくるのを感じ、声がわずかに震えた。

「はい、誓います」

 黒沢教授は私の指に結婚指輪を優しく嵌めてくれる。陽光を浴びて煌めく、見事なダイヤモンドだ。私たちは参列者の前で深く見つめ合い、そして、長く唇を重ねた。教会中に割れんばかりの拍手が巻き起こり、誰もが新郎新婦の門出を祝福している。

 完璧な結婚式。そう言えるだろう。

 しかし、披露宴の雰囲気は、それほど調和の取れたものではなかった。

 私はシャンパングラスを片手に招待客の間を優雅に立ち回り、幸福な花嫁の役を演じきっていた。黒沢教授は誇らしげに私を妻として紹介し、褒め言葉を受けるたびに、私ははにかんで俯き、愛情に満ちた瞳で夫を見上げる。

 だが、あちこちから囁き声が聞こえてくる。

「信じられない。なんで彼女が黒沢教授と結婚するの? 里奈さんが亡くなってまだ三ヶ月よ……」

 心理学の後輩である女子大学院生が、友人に囁いている。

「里奈さんと黒沢教授、亡くなる前は付き合ってたって噂じゃない。美月って子、亡くなった親友の彼氏を寝取ったってことよね」

 もう一人が付け加える。声を潜めているつもりだろうが、その一言一句が私の耳にはっきりと届いていた。

 近くでは、年配の教授たちが顔をしかめている。

「あの美月という娘、純粋そうに見えて、とんだしたたかな女だったとはな」

「黒沢教授は学界の逸材だからな。前から狙っていたに違いない。それにしても里奈君の死後すぐに乗り換えるとは、恥知らずにもほどがある」

「まあ、よくある話さ。結局は、すべて利のためというわけだ」

 私は微笑みを崩さず、何も聞こえなかったふりを続けた。

 黒沢教授が近づいてきて、優しく私の腰に腕を回した。

「ダーリン、少し疲れたようだね」

「幸せすぎて、胸がいっぱいなだけですわ」

 私は彼の胸にそっと寄り添い、その温もりと心臓の鼓動を感じた。

 夜が更け、招待客が一人、また一人と帰っていく。私と黒沢教授は新居——彼の豪奢なヴィクトリア朝様式の屋敷へと戻った。ここが、これから数ヶ月、あるいは数年にわたる私の戦場となるのだ。

 寝室の化粧台の前で一人、私はゆっくりと化粧を落とし始める。鏡の中の女はとても美しく、幸せそうで、まるで本当に夢に見た男性と結ばれたかのようだった。

 ダイヤモンドのイヤリングを外す。その指先は、疲労からか、あるいは長く抑え込んできた怒りからか、かすかに震えていた。最後の口紅をクレンジングコットンで拭い去ると、鏡はようやく本当の私を映し出した。厚いファンデーションの下から現れた素顔は、人形のように青白く、冷え切っている。

 スマートフォンを取り出し、画面の上で数秒間指を彷徨わせた後、たった四文字のメッセージを送る。

『作戦開始』

 電話を置いた後、私は鏡の中の自分に向かって、静かに囁いた。

「見てて、里奈。……ゲームは、まだ始まったばかりよ」

最新チャプター

おすすめ 😍

舐めるつもり?なら、思い知らせてあげる

舐めるつもり?なら、思い知らせてあげる

23.8k 閲覧数 · 連載中 · 桜井 ゆい​
18年間、自分が実の娘でないとは知らずに生きてきた。ある日、荷物をすべて玄関の外に放り出され、街角に立ち尽くす私の前に現れたのは、噂では極貧だという「生家」から迎えに来た、見たこともない「兄」。

ところが、その兄が乗ってきたのはトラクターだった。

ガタガタと揺れるトラクターがたどり着いた先は、まるで古城のような大邸宅。そこで私は思い知る。本当の家族のもとに引き取られた私は、貧しくなるどころか、前よりずっと裕福になっていたのだ。

……だが、ちょっと待ってほしい。なぜ私には突然、婚約者というものが存在するのか。しかもその相手は、私の大学の教授だという。誰か、説明してくれないだろうか。
不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

不倫夫を捨てた夜、私は新しい彼に抱かれる

2.1m 閲覧数 · 連載中 · 七海
初恋から結婚まで、片時も離れなかった私たち。
しかし結婚7年目、夫は秘書との不倫に溺れた。

私の誕生日に愛人と旅行に行き、結婚記念日にはあろうことか、私たちの寝室で彼女を抱いた夫。
心が壊れた私は、彼を騙して離婚届にサインをさせた。

「どうせ俺から離れられないだろう」
そう高をくくっていた夫の顔に、受理された離婚届を叩きつける。

「今この瞬間から、私の人生から消え失せて!」

初めて焦燥に駆られ、すがりついてくる夫。
その夜、鳴り止まない私のスマホに出たのは、新しい恋人の彼だった。

「知らないのか?」
受話器の向こうで、彼は低く笑った。
「良き元カレというのは、死人のように静かなものだよ?」

「彼女を出せ!」と激昂する元夫に、彼は冷たく言い放つ。

「それは無理だね」
私の寝顔に優しくキスを落としながら、彼は勝ち誇ったように告げた。
「彼女はクタクタになって、さっき眠ってしまったから」
天才調香師の復讐

天才調香師の復讐

54.1k 閲覧数 · 連載中 · 文机硯
私は間違った相手に感情を注いでしまい、クズ野郎とあの裏切り者の女に利用され、彼らは私の仕事の成果まで奪おうと企んでいました。

私は冷笑を浮かべ、そのクズへの復讐を誓いました。

私はある競合会社と契約を結びました。驚いたことに、その会社のCEOは異常な条件を出してきました——私と結婚しなければならないというのです!

それ以来、私はクズを打ち負かし、彼は私を愛おしく大切にしてくれました...実は彼は長年、密かに私のことを想い続けていたのでした。
令嬢は離婚を機に大富豪への道を歩む

令嬢は離婚を機に大富豪への道を歩む

758.4k 閲覧数 · 連載中 · 蜜柑
天才陰陽師だった御影星奈は、かつて恋愛脳のどん底に落ち、愛する男のために七年もの間、辱めに耐え続けてきた。しかしついに、ある日はっと我に返る。
「瀬央千弥、離婚して」
周りの連中はこぞって彼女を嘲笑った。あの瀬央様がいなくなったら、御影星奈は惨めな人生を送るに決まっていると。
ところが実際は――
財閥の名家がこぞって彼女を賓客として招き入れ、トップ俳優や女優が熱狂的なファンに。さらに四人の、並々ならぬ経歴を持つ兄弟子たちまで現れて……。
実家の御影家は後悔し、養女を追い出してまで彼女を迎え入れようとする。
そして元夫も、悔恨の表情で彼女を見つめ、「許してくれ」と懇願してきた。
御影星奈は少し眉を上げ、冷笑いを浮かべて言った。
「今の私に、あなたたちが手が届くと思う?」
――もう、私とあなたたちは釣り合わないのよ!
彼女を誘惑して、一夜で虜になった

彼女を誘惑して、一夜で虜になった

79.6k 閲覧数 · 連載中 · 月見光
結婚して三年——
彼は毎晩、私を抱きながらも、心はいつも“好きな人”にあった。
私は必死に「今泉夫人」としての役目を果たし、
愛のない結婚を繋ぎとめようとしていた。

けれど、妊娠がわかったあの日——
最愛の夫は私を手術台に押しつけて言った。
「小島麻央、子供とお前、どちらかしか生かせない。」
その言葉で、私の世界は雲散霧消した。粉々になった心を抱えて、私はすべてを捨てて去った。
──再会した時、
私はもう、かつての小島麻央ではなかった。
世界を驚かせるほど、美しく、強く、生まれ変わったのだ。跪く元夫が囁く。「麻央、帰ってきてくれ……」私は微笑んで答えた。「ごめんなさい。もう男には興味ないの。」その瞬間、彼は私を抱き寄せ、低く笑った。
「昨夜の君は、そうは言わなかっただろ……?」
偽物令嬢の逆転劇

偽物令嬢の逆転劇

70.8k 閲覧数 · 連載中 · ひかり
「泥棒女め、今すぐこの家から出て行きなさい!」

実の娘が戻ってきたその日、私はゴミのように家を追われた。
病弱な「お嬢様」の生きる輸血パックとして虐げられ、血を搾り取られ続けてきた日々。用済みになった途端、身に覚えのない盗みの罪を着せられ、婚約者からも冷酷に捨てられた。
元家族たちは、私が「貧しい田舎で野垂れ死ぬ」と信じて疑わなかった。

だが、彼らは何も知らなかったのだ。
私が、世界中のVIPが縋る伝説の名医であることも。
私を迎えに来たオンボロトラックが、実は国家機密級の超高級カスタムマシンであることも。
そして、私の本当の実家が、国さえも動かす世界屈指の超巨大財閥だということも!

「今まで苦労をかけたね、私たちの可愛いお姫様」
生き別れていた超過保護な両親と、各界の頂点に君臨する最強の兄たちに狂おしいほど溺愛されるシンデレラライフが幕を開ける!
一方、大切な「命の恩人」を自ら捨てた元家族たちには、破滅へと向かう絶望の後悔タイムが待ち受けていて!?

虐げられた天才少女が本当の愛と富を掴み取る、逆転ファンタジー、ここに開幕!
社長、突然の三つ子ができました!

社長、突然の三つ子ができました!

260.3k 閲覧数 · 連載中 · キノコ屋
五年前、私は継姉に薬を盛られた。学費に迫られ、私は全てを飲み込んだ。彼の熱い息が耳元に触れ、荒い指先が腿を撫でるたび、震えるような快感が走った。

あの忌まわしい夜から逃げるように去った私だったが、ほどなくして三つ子を妊娠していることに気付く。

五年後、医療界の新星として戻ってきた私は、継母、継姉、実の父へ全ての仕返しを誓う。

その時、彼が現れた。三人の小さな自分そっくりの顔をじっと見つめながら、優しく「パパ」と呼ぶよう子供たちを誘う彼。

ふとシャツのボタンを外し、悪戯っぽく笑って言った――

「どうだい、あの夜の熱をもう一度味わってみないか?」
転生して、家族全員に跪いて懺悔させる

転生して、家族全員に跪いて懺悔させる

319.4k 閲覧数 · 連載中 · 青凪
婚約者が浮気していたなんて、しかもその相手が私の実の妹だったなんて!
婚約者にも妹にも裏切られた私。
さらに悲惨なことに、二人は私の手足を切り落とし、舌を抜き、目の前で体を重ね、そして私を残酷に殺したのです!
骨の髄まで憎い...
しかし幸いなことに、運命の糸が絡み合い、私は蘇ったのです!
二度目の人生、今度は自分のために生き、芸能界の女王になってみせる!
復讐を果たす!
かつて私をいじめ、傷つけた者たちには、十倍の報いを受けさせてやる...
伝説の天才、偽りの姿だ

伝説の天才、偽りの姿だ

5.2k 閲覧数 · 連載中 · ショコラ風味
トップ組織のS級エージェントであり、冷徹無情、そして圧倒的な知性を誇った主人公。しかし、仲間に裏切られ、無残にも殺害されてしまう。

だが、目を覚ますと、知能が低いと見下されている「不細工な女子大生」へと生まれ変わっていた。

容姿を嘲笑われれば、自ら開発したスキンケアクリームで誰もが息をのむ美貌へと変貌を遂げる。

知性を馬鹿にされれば、世界最高峰の大学の総長が自らスカウトに訪れ、医学界の権威は秘密の処方を求めて跪き、国際的なトップスターは楽曲の編曲を求めて彼女を追いかける。

二度目の人生こそは平凡な生活を味わおうとしたものの、隠された正体が次々と暴かれ、気づけばまたしても世界の頂点へと上り詰めてしまう。

背後には無数の配下を従え、その傍らには彼女を守る冷徹な実力者が寄り添うが、この冷徹な男は何かと嫉妬深く、彼女を翻弄してくるのだった。
妻が去り、妊娠を知った俺は、ただ泣き崩れるしかなかった

妻が去り、妊娠を知った俺は、ただ泣き崩れるしかなかった

471.1k 閲覧数 · 連載中 · 蛙坂下道
鈴木七海は、中村健に好きな人がいることをずっと知っていた。それでも、彼との結婚を選んだ。
しかし、結婚して5年後、彼は離婚を切り出した。その時初めて、彼の想い人が私の父の隠し子(私の異母兄弟)だと知った。
離婚を決意した七海だったが、その時にまさかの妊娠が判明した。
不倫夫を捨て、私は大富豪の妻になる

不倫夫を捨て、私は大富豪の妻になる

257.2k 閲覧数 · 連載中 · 七海
人生最良の日になるはずだった、結婚式当日。
新郎の車から出てきたのは、見知らぬ女の派手なレースの下着だった。

しかも、その布切れにはまだ。生々しい情事の痕跡が残されていた。

吐き気がするほどの裏切り。
幸せの絶頂から地獄へと突き落とされた私。

けれど、泣き寝入りなんてしてやらない。
私はその場でウェディングドレスの裾を翻し、決意した。

「こんな汚らわしい男は捨ててやる」

私が選んだ次の相手は、彼など足元にも及ばない世界的な億万長者で?
余命宣告された日、帰宅するとベッドに「引き裂かれた愛人の下着」があった

余命宣告された日、帰宅するとベッドに「引き裂かれた愛人の下着」があった

46.4k 閲覧数 · 連載中 · 七海
結婚して5年、夫とは円満だと思っていた。
しかし、運命は残酷だ。

病院で「白血病」という絶望的な診断を受けたその日。
震える足で帰宅した私の目に飛び込んできたのは、夫の裏切りの証拠だった。

私たちの神聖な寝室。
そのベッドの上には、無惨に引き裂かれたレースの下着がわざとらしく残されていたのだ。

それは明らかに、夫の愛人からの宣戦布告。
「あなたはもういらない」と嘲笑うかのような、残酷なマウントだった。

命の期限を突きつけられた日に、愛まで失った私。
絶望の淵で、私はある決断を下す。