紹介
あのレイプ事件が、彼自身によって仕組まれたものだと知るまでは。
集団で辱められた後、私は名誉も尊厳もすべて失い、
一族からは「穢れた女」として扱われた。
流言は枷となり、悪夢は日常と化した。
それでも、彼は私を娶ると言ってくれた。
後になって知った。彼が私と結婚したのは、ただ家督を継ぐためだったと。
だが彼は忘れていたのだ。一族に伝わる最も古い血の誓いを。
――夫が婚姻を裏切った時、そのすべては妻のものとなる、と。
もう、私は被害者じゃない。
結末は、私が決める。
チャプター 1
血の誓いが交わされた婚礼の夜。林原家の屋敷に集った賓客たちは、皆一様に私の〝汚点〟について囁き合っていた。
「洋佑もよくまあ、あんな女を抱く気になれるものだ。なんと情が深いことか」
「穢された女を受け入れるとは、寛大にも程がある」
純白のウェディングドレスに身を包んだ私は、隠そうともしないその嘲笑を浴びながら、心臓をナイフで抉られるような痛みに耐えていた。
けれど洋佑は、家紋の刻まれた黒曜石の指輪を私の薬指に嵌めると、厳かに宣誓したのだ。
「生涯、俺が妻として愛するのはユリカだけだ」
しかし、結婚後の洋佑は家に寄り付かなくなり、私は使用人たちの前で顔を上げることもできなくなった。
これは当然の報いなのだ――そう自分に言い聞かせる日々。不眠症は悪化し、毎晩冷え切った広いベッドで寝返りを打つことしかできない。
きっと彼には、不完全な私を受け入れるための時間が必要なのだ。そう信じようとした。
深夜二時。私は薬酒を取るために地下のワインセラーへと降りた。グラスに注ぎ終えたその時、階段から足音が響いてくる。
「おっ、ここのセラーにはいい宝が眠ってそうじゃねえか」
聞き覚えのある、そして恐怖を呼び覚ます声に心臓が跳ねた。私は反射的にグラスを抱え、オーク樽の陰へと身を潜める。
「おい佐藤、そっちは触るな。それはユリカのための薬酒だ」
洋佑の声だ。
私は手元の赤ワインを見つめた。
これは私の不眠を知った洋佑が、小崎医師の助言を受けて用意してくれた特製品だ。
彼はまだ、私を気遣ってくれている。それだけで十分だった。
安堵してワインを口に運ぼうとしたその時、別の男の下卑た笑い声が聞こえた。
「で、どれにするよ? 俺たちの『傑作』から半年を祝うヴィンテージは」
傑作? なんのこと?
手が凍りついたように動かなくなり、私はグラスの縁を強く握りしめた。
「しっかし洋佑、あの晩のお前の嫁、あのふしだらな姿は最高にイカしてたぜ」
佐藤と呼ばれた男が下品に笑う。
「泣いて許しを乞うくせに、下の口は蛇口みたいに濡らしてやがった。挿れる前からビショ濡れだ。ありゃ生まれついての淫乱だな」
嘘……この声……どうしてこんなに耳に残っているの?
グラスを持つ手が激しく震え、赤ワインが波打つ。
「俺がドレスを引き裂いた時の、あのはち切れそうなデカい乳。柔らかくて張りがあってよ」
別の男が卑猥な声を上げる。
「死ぬほど怯えてたくせに、あの身のよじり方は誘ってるとしか思えなかったね。危うくあの顔にぶっかけてやるところだった」
やめて……洋佑、早く彼らを黙らせて……。
心の中で必死に叫ぶが、声にならない。
「俺たちが代わる代わる犯してる間、必死に純潔ぶってやがったがな」
三人目の男が会話に加わる。
「後半はもう隠せてなかったぜ。娼婦より淫らな声で鳴きやがって。思い出しただけで勃ってきやがる」
その時、洋佑の声が響いた。そこには深い嫌悪が満ちていた。
「気色悪い話をするな。あの爛れた女が今も家にいると思うだけで、反吐が出そうなんだよ」
え……?
彼も……そんなふうに私を見ていたの?
膝の力が抜け、オーク樽にすがりつくことで辛うじて体を支える。
「だが、映像の出来は確かに悪くなかった」
佐藤が言う。
「あの特等席からのアングル――絶頂と絶望の泣き顔が重なる瞬間、あれはまるで怯えたウサギだ。芸術品だよ」
私はその場に崩れ落ちた。世界が回転する。フラッシュ、嘲笑、引き裂かれる痛み。あの地獄の光景がフラッシュバックする。彼らは裏で、これほどまでに私を辱めていたなんて。
「洋佑、『英雄気取り』の演技もアカデミー賞モンだったぜ」
佐藤が感心したように言う。
「タイミングが神がかってたな」
「演出は完璧にしねえとな」
洋佑が得意げに答える。
「一分早ければ茶番だとバレるし、一分遅けりゃお前らに玩具として壊されてただろうからな」
「『もう大丈夫だ、俺が来た』だっけ?」
佐藤が当時の口調を真似る。
「あの表情、俺ですら信じかけたぜ。あの馬鹿な女なら尚更だろうよ」
あの言葉は、暗闇の中で唯一の光だった。
けれど、すべては仕組まれたシナリオだったのだ。何も知らなかったのは私だけ。馬鹿みたいに、真実の愛に出会えたのだと信じ込んで。
指からグラスが滑り落ち、赤ワインが白いネグリジェに飛び散った。あの夜の血痕のように。
「あそこまで評判を落とさなきゃ、あの女が諦めて俺に嫁ぐわけがないだろう?」
洋佑が冷笑する。
「親父が死ぬ間際に『血の盟約』なんてものを持ち出して、早川家のあのお飾り人形を娶れと脅しやがったんだ。そうしなきゃ完全な継承権は渡さないとな。すべてを万全にする必要があった」
私は左手の指輪を見下ろした。すべての愛情は……権力を手に入れるための手段? 結婚式の誓いさえも、ただの虚言。
「今頃、お前に涙して感謝してるんだろうな?」
「当然だ。だから美保子をこの家に住まわせても、あいつは何も言えない。教母様には清廉潔白でいてもらわないとな」
「なあ洋佑」
佐藤が粘つくような声で尋ねる。
「新婚初夜はどうだった? やっぱり俺たちが言った通りだったか?」
「根っからの淫乱だったろ?」
別の男が興奮気味に続く。
「俺たちに開発された女だ、男の喜ばせ方はよく分かってるはずだぜ」
「自分から求めてきたか? それともあの夜みたいに清純ぶってたか?」
私は息を殺して、洋佑の答えを待った。
「抱くわけがないだろう」
洋佑の声は、汚物を見るような響きだった。
「顔も見たくない。あいつからはお前らの臭いがするんだよ。悪臭が染みついてて虫酸が走る」
心臓が、物理的に引き裂かれたような音がした。
「じゃあどうやって夫婦ごっこを続けてるんだ?」
佐藤が不思議がる。
「怪しまれないのか?」
「演技だよ」
洋佑が鼻で笑う。
「たまに抱きしめてやって、受け入れているフリをしてやるんだ。実際には、街の売春婦を抱くほうがマシだ。あんな使い古しの破瓜(はか)モノに触れるなんて御免だね」
「あいつ、まだ愛されてると思ってるのか。結婚式の誓いなんて、世のカップルの模範解答みたいだったのにな」
男たちが爆笑する。
「そう思わせておけばコントロールしやすい。あの雌犬が俺に心酔し、跪いたまま二度と立ち上がれないようにしてやる。徹底的に調教された女ほど従順なものはないからな」
その極限の屈辱の中で、私の中で何かが完全に死に絶えた。
と同時に、恐ろしいほどの冷徹さが心の中に凝縮されていくのを感じた。それはもはや恐怖や絶望ではなく、身の毛もよだつような覚醒だった。
「半年もよく我慢したもんだ。で、継承手続きはいつ終わるんだ?」
「その時はまたウェディングドレスを着せて、完全版の映画でも撮るか」
地下室に下劣な哄笑が轟く。
「港の契約さえ結べば、あいつはもう用済みだ。あとはどう遊ぼうが好きにしろ」
「よし、今夜はこのボトルを開けるか。行くぞ、もっといい『獲物』のところへ連れて行ってやる」
最初から最後まで、私は彼らにとってただの玩具だった……。私の苦痛さえも彼らの酒の肴で……私の自責の念さえ、彼らの目論見通りだったなんて。
笑い声が遠ざかっていく。
私はゆっくりと立ち上がった。床に散らばった赤いワイン、その冷たい液体を踏みしめて。
私はスマートフォンの画面をタップし、一族の顧問弁護士の番号を呼び出した。
声は、自分でも驚くほど平坦だった。
「早川ユリカです。血の盟約条項の執行手続きを開始してください」
一呼吸置いて、私は告げた。
「それから、離婚届の準備を。今すぐに」
最新チャプター
おすすめ 😍
社長秘書のヒミツ恋情
借金を返すため、彼と交わしたのは一通の契約書。
「体だけの関係。恋愛感情は一切なし」——そう決めたはずだったが…
冷酷非道な大物との政略結婚を強いられ、私は開き直った
ヤクザの家に生まれた宿命を恐れるあまり、私は幼馴染の周防文哉のもとへ逃げるように嫁いだ。
けれど結婚から五年――私は家畜のように囚われ、夫とその愛人に蹂躙され続けた。息絶えようとするその瞬間、最後に目に映ったのは、私の目の前で絡み合う二人の姿だった。
【転生】
再び目を開けると、婚約が公の場で発表されたあの瞬間に戻っていた。
周防文哉が愛おしそうに私を見つめ、優しく囁く。
「俺と結婚してくれ。」
次の瞬間――若きヤクザの組長が私の腕を掴み、力強く抱き寄せた。銃口は真っ直ぐ周防文哉に向けられている。
彼が、私の代わりに答えた。
「――断る」
妊娠を隠して離婚します
九条雅人は彼女の顎を荒々しく掴み、低く唸った。
絢香の頬は屈辱と興奮で真紅に染まったが、その声にはまだ意地が残っていた。「あなたこそ、私に執着しているだけじゃないの?」
雅人は冷酷に鼻で笑った。
「離婚してからどれほど経った? それでもう俺の『ルール』を忘れたか。お前の身体は、今でも俺をこんなによく覚えているくせに。……ほら、咥えろ」
熱を帯び、恐ろしいほどに猛り狂った彼の太いものが、絢香の顔を容赦なく叩いた。
雅人は冷たく笑う。
「俺から離れられるなんて夢にも思うな、絢香。お前は俺だけのものだ」
——
3年間の契約結婚の間、霧島絢香は「雅人が冷徹な人間だから、その心を溶かすことができないのだ」と思い込んでいた。
しかし、彼が桜井陽菜の妊婦健診に付き添い、彼女が少しでも不快な思いをしないよう、見たこともないほどの優しさと甘やかし方で接している姿を目撃したとき、絢香はついに悟った。彼は人を愛せないのではない。ただ、自分を愛していなかっただけなのだと。
絢香は静かに離婚届にサインし、自身の「妊娠診断書」を胸に抱いて彼の元を去った。
だが、絢香が完全に姿を消した瞬間、雅人は狂わんばかりになり、街中を血眼になって彼女を捜し回った。
ついに再会を果たしたとき、雅人の瞳は血走り、その声は掠れていた。
「絢香、俺が悪かった……頼む、俺の元に戻ってきてくれ」
元恋人の叔父に拾われた夜、私は彼という名の「毒」に溺れる
私を見捨てた男ではなく、彼が一番恐れていた「危険な叔父」が、暗闇から現れた。
その腕の中だけが、この二年で初めて私を孤独から救い出した。
「次、誰かが君を傷つけたら、こうするんだ」 渡された銃の重みが、私の心に深く刻まれる。
私は逃げ出したかったはずなのに、いま、彼の甘い視線から離れられずにいる。 救いなどいらない。
ただ、この危険な男の「所有物」になりたい。
知る前の夜
二日後、インターン先に足を踏み入れると、彼が社長のデスクの向こうに座っていた。
あの夜、私を喘がせた男にコーヒーを運ぶ日々。なのに彼は、まるで一線を越えたのが私のほうだと言わんばかりの顔をする。
***
始まりは賭けだった。終わりは、彼女が決して望んではならないただ一人の男だった。
ジューン・アレクサンダーは、見ず知らずの男と寝るつもりなどなかった。だが、夢にまで見たインターンを勝ち取り、その夜を祝っていた彼女は、勢い任せの無茶な賭けに背中を押され、謎めいた男の腕の中へと導かれる。熱を帯びた気配を纏い、寡黙で、そして忘れられない男。
もう二度と会うことはない――そう思っていた。
ところが初出勤の日、オフィスに入った瞬間――
彼が新しい上司だと知る。
最高経営責任者、その人だったのだ。
たった一夜、無謀に身体を重ねた男の下で働かなければならない。ヘルメス・グランデは権力者で、冷たく、そして絶対に手を出してはいけない存在。けれど二人の間に張りつめた緊張は、どうしても消えてくれない。
距離が縮まるほど、彼女の心と、二人の秘密を守り抜くことは難しくなっていく。
捨てられたルナの復讐
「ベラ」イーサンの声音が変わった。わたしが嫌というほど知っている、あの警告めいた刃が混じる。「いまのフェイは不安定なんだ。おまえが彼女を恨むんじゃないか、これで群れが割れるんじゃないかって、怯えてる。彼女がいちばん望んでないのは、この子が俺たちの間に入り込むことだ」
「だったら、そんなことしなければよかった」わたしは真正面から彼の目を捉え、こちらの瞳に張りついた氷を見せつけた。「息子のところへ戻って」
「いい加減にしろよ」彼は苛立ちまぎれに髪をかきむしった。「何度言えば――人工授精だ。俺の精子を使ったのはそうだが、フェイと俺は――」
ベラは冷えきった鼻笑いを漏らした。なんて厚かましい嘘。彼女の伴侶は、兄の番と関係を持ち、家族ぐるみで彼女を何も持たせず追い出した。愛人が「正しい」座に収まるために、道を空けるように。哀れな愚か者――彼は、彼女がただの厄介な養女で、簡単に切り捨てて支配できると思い込んでいた。自分が探し求めていた天才的な技術者が、まさか自分のルナだったとは、ついぞ知らずに。
彼が自らを汚した時点で、ベラの中ですべては終わった。彼女は彼を拒み、奪われたものを取り戻した。何年も密かに彼女を愛してきたヴィクターの助けを得て、頂点へと駆け上がっていく。
イーサンが彼女を取り戻そうとしたとき、こう言った。「俺たちの子どもを、父親なしで育てたいのか」
ベラは嘲るように微笑んだ。「その子の父親は、あなたじゃないわ」
令嬢は離婚を機に大富豪への道を歩む
「瀬央千弥、離婚して」
周りの連中はこぞって彼女を嘲笑った。あの瀬央様がいなくなったら、御影星奈は惨めな人生を送るに決まっていると。
ところが実際は――
財閥の名家がこぞって彼女を賓客として招き入れ、トップ俳優や女優が熱狂的なファンに。さらに四人の、並々ならぬ経歴を持つ兄弟子たちまで現れて……。
実家の御影家は後悔し、養女を追い出してまで彼女を迎え入れようとする。
そして元夫も、悔恨の表情で彼女を見つめ、「許してくれ」と懇願してきた。
御影星奈は少し眉を上げ、冷笑いを浮かべて言った。
「今の私に、あなたたちが手が届くと思う?」
――もう、私とあなたたちは釣り合わないのよ!
御曹司に壊される人形
三年後、出所した僕の前に現れたのは、やはり彼だった。
「一生、逃がさないからな」
殺意に満ちた目で、彼はそう言った。
なのに、なぜか僕には、彼の心が深い悲しみに満ちているようにしか見えなかった。
真の令嬢は万の顔を持つ
傲慢な御曹司・羽島浩介が彼女を救うために骨折し、白石家のお爺さんが彼女を跡継ぎとして認め、林原財閥が彼女の本当の身分を明かした時――なんと、あの見下されていた「田舎者」こそが、真の商業帝国の後継者だったのだ!
そして、かつて高みから見下ろしていた偽物のお嬢様は、盗作しかできない道化に過ぎなかった。
全ての仮面が剥がれ落ちた時、全世界が彼女の足元で震撼する――。
私が囲っている億万長者
彼は息を呑むほど美しく、落ちぶれていた。夫の裏切りがもたらした傷が完全に癒えるまで、彼をそばに置いておくつもりだった。
お金で彼の付き添いを買い、すべてのルールを私が決め、すべてを完全に掌握しているつもりだった。
けれど、私の隣で横たわるこの男の正体は、彼が語ったものとはまるで違っていた。
魅惑的な笑顔と抗いがたい容姿の下に隠されていたのは、仇敵から身を隠す億万長者の素顔だった。
今や彼は、私の生活に、私のベッドに、そして私の心に――完全に絡みついている。
身を引くことは、彼のそばにいることよりも、もっと危険かもしれない。
追放された私が真の継承者だった件。今さら戻れと言われても、もう手遅れです
けれど、私の本質を隠し通すことは誰にもできない。
隠された私の正体は、この国で最も裕福な一族の継承者。
かつての家族が私を見失っている間に、私は全ての支配者となり、この街の頂点に君臨する男の視線を独占する。
彼が私に捧げる愛は、ただの寵愛ではない――世界を敵に回してでも守り抜く、狂おしいまでの執着だ。













