紹介
だが、目を覚ますと、知能が低いと見下されている「不細工な女子大生」へと生まれ変わっていた。
容姿を嘲笑われれば、自ら開発したスキンケアクリームで誰もが息をのむ美貌へと変貌を遂げる。
知性を馬鹿にされれば、世界最高峰の大学の総長が自らスカウトに訪れ、医学界の権威は秘密の処方を求めて跪き、国際的なトップスターは楽曲の編曲を求めて彼女を追いかける。
二度目の人生こそは平凡な生活を味わおうとしたものの、隠された正体が次々と暴かれ、気づけばまたしても世界の頂点へと上り詰めてしまう。
背後には無数の配下を従え、その傍らには彼女を守る冷徹な実力者が寄り添うが、この冷徹な男は何かと嫉妬深く、彼女を翻弄してくるのだった。
チャプター 1
ミシシッピの密林奥深く――地図にも載らない無人地帯。毒虫や蛇、蟻が岩穴を埋め尽くすその洞の最奥に、途方もない地下牢が隠されていた。外は重武装の兵が固め、ハエ一匹すら入り込めない。
幾重にも重なる鉄扉が、陰気な冷気を吐き出している。扉の向こうは牢房。湿った壁には監視カメラが百台以上、狂ったように取り付けられていた。
――監視されているのは、たった一人の少女。
監視室。上級の傭兵が大型モニターをにらみ、内線電話越しに弾んだ声を上げる。
「ボス! 新型毒薬DK33が効きました! モニター上の血羽、意識がもうろうとしてます! 今が最高のチャンスです!!」
電話の向こうの男は、冷え切った通路を歩きながら口角を歪めた。
「DK33を倍量だ。……今日はどう足掻いても、俺の手のひらから逃げられん」
物音に、少女がゆっくり顔を上げた。漆黒の長髪には、おぞましい血がべっとりとこびりついている。全身には錐骨釘が打ち込まれ、手筋も足筋も断たれていた。
DK33の毒が回り、骨の内側から蝕む痛みがのたうつ。それでも彼女は一言も呻かず、氷のような眼差しで来訪者を見据える。
「……やっぱり、あんたか」
「組織を裏切って、偽情報で俺を騙したな!?」
「そうだけど? 瞑流なんて地獄、人が居る場所じゃない。あんたに一生踏みつけられて生きるなんて、ごめんだわ」
瞑流――国際最高峰の諜報組織。
そしてこの少女こそ、その瞑流で名を聞けば震え上がるS級スパイ。コードネームは血羽。
……その血羽が、今は生け捕りにされている。
「くだらねえ口は後だ」
キラは毒の発作の時間を計ったように、陰笑を浮かべて近づき、血羽の喉を鷲掴みにした。
「血羽。苦しいか? 解毒剤が欲しいだろ?」
囁く声に、甘い誘いが混じる。
「アンゾフのパスワードデータを吐け。そうしたら今すぐ解毒剤をくれてやる」
アンゾフ――世界最大の海賊団が宝を隠した場所。侵入にはデータ列の鍵が必要で、それは異様に複雑で、卓越した計算能力と記憶力がなければ解けない。
そして、そのパスワードデータを知る者は今、血羽ただ一人。キラが成果を出すには、それを奪うしかなかった。
血羽は鼻で笑う。
「……あんたが?」
「下賤なB級スパイが、私からパスワードを奪えるとでも?」
「寝言は寝て言いな」
言い終えた瞬間。袖の奥に隠していた親指が、かちりと押し込まれる。
微小携帯の赤ランプが点滅――次いで、轟音が立て続けに炸裂し、地面がぐらりと揺れた。
「な、何だ!?」
キラが狼狽して後退する。
「バンッ!」
牢の扉が衝撃で弾け、炎に追われるように傭兵が飛び込んでくる。
「ボス! まずいです、地下牢の自衛システムが爆発――!」
「何だと!?」
「坑道が崩れま――あっ!!」
言い終える前に炎が男を呑み込み、瞬時に灰だけが舞った。
火勢が牢内へ雪崩れ込む。キラは恐怖に駆られ走り回り、血羽を指さして叫んだ。
「どうしてだ! お前……お前がやったのか! 何をした!?」
火舌が刑椅子の女を舐める。だが彼女はゆっくりと立ち上がり、逃げ惑うキラを見下ろした。
冷笑とともに、言い放つ。
「指が一本残ってりゃ充分よ。……あんたら、まとめて地獄に送ってやる」
ごうごうと燃え盛る炎の中、彼女はまるで地獄の悪魔だった。命を刈り取る命令を下すように。
「私が死ぬなら――全員、道連れよ!」
――
「バンッ!」
コップが机に叩きつけられ、耳障りな音が室内を裂いた。
「橘琳!」
「恥ってものがないのか!? 入学してから今まで、試験のたびに学年最下位! 頭が弱いのは百歩譲って理解するが、せめて道徳の底は守れ!」
「先週は同級生が、お前が同席をいじめたと告発した。今週は中間で堂々カンニングだ! 学校を舐めてるのか!?」
広い職員室に四人。腹の出た男は帝都高校の校長、中村だ。
唾を飛ばしながら、情けなさと怒りを滲ませて人を叱りつけている。
その隣には、上品に着飾った貴婦人。笑みを浮かべ、穏やかな口調で言った。
「中村校長、本当にご迷惑をおかけして申し訳ございません。うちの子は知能に問題があり、幼い頃から田舎で育って何も分からないんです。力だけはあるんですけれど……。帝都高校の校長先生が、どうか愚かな子と同じ土俵でお怒りになりませんように」
橘雪枝は背後で俯く娘を、憎々しげに一瞥する。横から誰かが相槌を打った。
「中村校長、落ち着いてください。姉は私の成績が妬ましくて、試験で私に勝ちたかったんです。でも馬鹿だから、ああいう手しか思いつかなくて」
「はあ……」中村がため息をつき、琳を指さす。
「橘琳、お前な……」
隅で頭を垂れていた血羽は、ぴーぴー喚く声に頭痛を覚え、罵声を返そうとして――不意に脳を槍で貫かれたような激痛に襲われた。
次の瞬間、自分のものではない記憶が、雪崩のように流れ込んでくる。
――これは……!
血羽は驚いて顔を上げ、書棚の外側にある反射ガラスを見た。そこには、見知らぬ蝋色の小さな顔が映っている。長いこと飢えていたかのように、栄養の欠けた顔。
頬の造りは小さく整い、本来なら美しいはずなのに、右頬の醜い傷痕がすべてを台無しにしていた。
血羽は呆然とする。
――転生? 高校生の身体に?
頭痛が消えぬまま、地底の爆発が脳裏にこびりつく。死の直前、毒が骨を溶かした痛みが、重く彼女に告げていた。
生き直したのなら、必ず復讐する――。
キラの力だけで、短期間に傭兵を集め、あの地下牢を築けるはずがない。まして骨釘の形状は異様に特殊だった。
あれは、裏に別の黒幕がいる。
ならば――今度こそ自分の手で引きずり出して、叩き潰す。
「琳! 校長先生が話しているのに、黙って何様だ!」
雪枝が怒りに任せて手を振り上げる。
だが頂点のスパイの反射は、身体に刻まれていた。血羽はすっと身をかわし、雪枝は空を切ってよろめき、そのまま頭から書棚に突っ込む。
「きゃっ!」
悲鳴で、血羽は現状に引き戻された。
琳の身体を使うなら、琳として生きるしかない。だが流れ込んだ記憶を見る限り、元の琳は酷い目に遭っていた。
琳は橘家の本来の令嬢。橘家は帝都でも数少ない貴族の一つ。
しかし出生時、病院で看護師が取り違え、琳は継父母に連れられて田舎で育った。半年前、ようやく橘家に見つかって戻ったばかり。
橘家の人間は彼女の顔と鈍さを嫌い、偽の令嬢・橘夢子と比べて「橘家の娘にふさわしくない」と切り捨てた。
体裁のために家に置きはしたが、外には「琳は私生児だ」と言い、夢子こそが本物の令嬢だと吹聴した。
戻ってからの琳は、身分も容姿も理由に散々いたぶられ、先頭に立っていたのが夢子。
――だが今、この身体にいるのは血羽だ。好きに屠られるつもりはない。
「琳、あなた狂ったの!? 昼日中に母親に手を上げようだなんて!」
夢子がわざと大声を上げる。中村は倒れた雪枝を支え起こし、顔を真っ赤にして怒鳴った。
「カンニングに続いて、今度は母親にまで――琳!」
琳は、淡々と言った。
「私はカンニングしてない」
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しかし、そんな彼女を指さして嘲る者がいる。
「夏川紅蓮は地味で野暮ったい田舎者だ」と。
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「君の『仮面』はすべて剥がした。次は、その心を裸にする番だ」
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しかし、次に目を覚ますと、そこは見覚えのある「19歳の誕生日パーティー」の会場。
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(……でも、もう私は、あの頃の愚かな人形じゃない)
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今度は、私が奪い返す番。
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二度目はない 動じず咲く
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社長の逃げた妊娠妻
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私が囲っている億万長者
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お金で彼の付き添いを買い、すべてのルールを私が決め、すべてを完全に掌握しているつもりだった。
けれど、私の隣で横たわるこの男の正体は、彼が語ったものとはまるで違っていた。
魅惑的な笑顔と抗いがたい容姿の下に隠されていたのは、仇敵から身を隠す億万長者の素顔だった。
今や彼は、私の生活に、私のベッドに、そして私の心に――完全に絡みついている。
身を引くことは、彼のそばにいることよりも、もっと危険かもしれない。
社長の可愛い若妻
愛に絶望した私は、お互いの利益のための「契約結婚」に同意する。てっきり、悪名高いプレイボーイの蒼井翼と結婚するものだと思っていた。ところが、書類にサインする瞬間、婚姻届に書かれていた名前は――蒼井沢言。誰もがその名を聞くだけで震え上がり、「地獄の帝王」と恐れられる冷酷な巨大財閥のトップだった。
彼は私に数々の価値連根のジュエリーを贈り、私の敵をすべて排除し、世のあらゆる嵐から守ってくれた。けれど、「愛している」という言葉だけは、一度も口にしなかった。
しかしある夜、彼は私を壁に押し付け、熱い吐息を肌に吹きかけながら、低く掠れた声で囁いた。
「音羽、俺をいつまで待たせるつもりだ?」
――この結婚は、決して偶然などではなかった。最初からすべて、彼が仕組んだ「執念の計画」だったのだ。
スズメが玉の輿? ――本物の令嬢な私は、木ごと切り倒してやるわ
裏切られ、内臓まで奪われ、ゴミのように捨てられた過去。婚約者は彼女を4人の男に差し出し、その惨劇を動画に撮影した。家族はまだ息のある彼女の臓器移植に同意し、妹は人生と子供を奪った上で、国境の売春宿で売り飛ばされた彼女を見殺しにした。
だが、運命は彼女を見捨てなかった。
生まれ変わった彼女が挑むのは、全く別の復讐劇。もはや昔の無知で哀れな令嬢ではない。地獄で鍛え上げられた冷酷で賢しく、危険なほど美しく魅惑的な女。敵に微笑みながら毒を盛り、奴ら全員を焼き尽くすためなら悪魔とさえベッドを共にする。
スポットライトが当たった時、奴らは知ることになる。自らの手で作り上げた『怪物』の恐ろしさを。
彼女を殺したつもり? 残念ね――私、もう地獄を見てきたから、何があっても絶対に折れないの。













