養女の逆転人生〜冷酷なエリート社長の執着な守護〜

養女の逆転人生〜冷酷なエリート社長の執着な守護〜

神楽 · 連載中 · 384.0k 文字

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紹介

新谷結奈は、その家族を本当の家族だと信じて疑わなかった。しかし、待っていたのは無残な裏切りと利用の果て、冷え切った地下室での絶望的な死だった。

だが、運命は彼女にやり直しの機会を与える。

目覚めると、そこは5年前――まだ彼女が、嘘にまみれた蜘蛛の巣に囚われ、怯えながら暮らしていた養女の時代だった。

「もう二度と、誰の踏み台にもならない」

悲惨な未来の記憶を胸に、新谷結奈は養母と義妹の偽りの仮面を剥ぎ取ることを誓う。
しかし、復仇の道は険しく険しい。生き残るためには、絶対的な「力」が必要だった。

そこで彼女の前に現れたのが、藤井翼――この街の経済の命脈を握る、冷徹にして謎めいた政財界の大物社長だった。
彼は、結奈の敵たちが最も恐れる男。

利害の一致から始まったはずの契約上の結盟は、やがて激しく燃え上がる恋情へと変わっていく。
藤井翼の圧倒的な庇護のもと、かつて臆病だった少女は、誰もが目を見張る光輝く女王へと変貌を遂げていく。

怯える敵たちがその事実に気づいたときには、すべてが遅すぎた。
かつて彼らが塵のように切り捨てた、あの弱き養女が帰ってきたのだ。――今度は、誰の手も届かない高みから、すべてを支配するために。

チャプター 1

じめじめした薄暗い地下室で、新谷結奈は咳き込み、とうとう血まで吐いた。

もう耐えられない。上着を引っかけ、階段を片足を引きずるようにして上り、1階のリビングへ出る。

目に飛び込んできたのは、熱気に満ちた光景だった。色とりどりのリボンと風船。新谷芽衣の二十五歳の誕生日を祝う飾りつけ。結奈の全身が小刻みに震える。

自分は新谷奈津子の養女だ。奈津子が病院から抱いて連れ帰った子――そう聞かされてきた。末期の肺がんで、看病する者は誰もいない。何度電話をかけても新谷家の人間は取り合わず、地下室に放り込んだまま。

それなのに、奈津子は上で芽衣の誕生日を盛大に祝っている。笑い声、拍手、賑やかな音。胸が裂けそうだった。

芽衣が奈津子に甘えるように身を寄せる。

「お母さん、結奈って、私のために骨髄くれるかな? もう癌なんでしょ? 骨髄って使えるの?」

「ドジな子。結奈のは癌じゃないわ」奈津子は宥めるように笑い、芽衣の髪を撫でた。「昔あなたをうちの鉱山に行かせなかったのは、空気が悪いから。結奈はただの肺炎よ。勝手に『癌』だと思い込んでるだけ」

雷に打たれたみたいだった。背筋が凍り、指先まで冷たくなる。

肺炎? 癌じゃなくて、肺炎?

肺炎なら病院で点滴を打てば治る。なのに奈津子は「末期だから治らない」と嘘をつき、「抗がん剤は苦しいから家で治そう」と優しく言った。全部、騙すために。

鉱山へ行けと言ったのも奈津子だった。「あなたならできる」と。――本当は、空気の悪い場所に芽衣を行かせたくなかっただけ。

あのとき自分が鉱山に行かなければ、新谷家はとっくに潰れていた。制度を改め、生産方法を変え、倒産寸前の鉱山を立て直した。そのおかげで新谷家は一戸建てから、敷地二千平方の大邸宅へ移ったのだ。

小さいころから、自分が養子だと分かっていた。だから顔色を読むことばかり覚えた。十歳のとき重い病気になり、奈津子は輸血して命を救ってくれた。恩を返したかった。だから奈津子が望むことなら何でも従った。

鉱山で働けと言われれば働いた。3階の主寝室から地下室へ移れと言われれば移った。芽衣が問題を起こせば自分が身代わりになり、後始末も引き受けた。

そのたびに、なぜか達成感すらあった。ようやくこの家の役に立てた、恩返しができた――そう思い込んでいた。

けれど今、分かった。

治療もしないで、肺がんだと騙し、地下室で弱らせたのは――芽衣に骨髄を移植させるため。

芽衣が当然のように言う。

「ねえお母さん、いつ死ぬの? もう待ちたくない」

「もう少しよ。あの地下室に住ませてれば、すぐ重病になって死にかけるわ。そうしたら適合検査できる」奈津子は額を寄せ、娘を愛おしそうに見つめた。

胸の奥を鋭い痛みが貫き、結奈は激しく咳き込んだ。音が大きすぎた。

奈津子母娘の視線が階段へ向く。ぼさぼさの髪、やつれた顔の結奈がそこにいた。

視界が暗転し、体が言うことをきかない。結奈は後ろへ倒れ、床に重く打ちつけられた。うつ伏せのまま息が細くなり、最後の力で手を伸ばす。

「お母さん……助けて……苦しい……」

「びっくりした!」芽衣は胸を押さえ、奈津子の手にすがる。

奈津子は冷ややかに一瞥した。

「誰が上がってこいって言ったの。そんなに重病なら、うつされたらどうするの」

そう言うと鼻を押さえ、嫌悪感を隠さず数歩下がった。

芽衣が腕を絡め、甘ったるい声を出す。

「お母さん、放っておきなよ。死んだフリでしょ。私の誕生日に水差すなんて最悪。縁起悪い」

「平気よ。死んだ方がいいわ。そしたらすぐ骨髄を替えられる」奈津子は日常茶飯事といった調子で言い、結奈を見下ろした。

心臓が針で刺されたように痛む。結奈は必死に身を起こし、手すりにしがみついて立ち上がった。荒い息のままスマホを取り出し、119へかけようとする。

芽衣が青ざめる。

「お母さん! 警察に通報するつもりじゃ……!」

「通報させるわけないでしょ」奈津子は近づき、手を振り払うようにスマホを叩き落とした。「新谷結奈。大人しくここにいなさい。家の恥を外に出すんじゃない」

「助けて……」結奈は弱々しく奈津子の手首にしがみつく。せめて命だけは。

だが奈津子は情け容赦なく腕を振りほどいた。

足元がふっと空になる。

結奈の体は階段から転げ落ち、何度も頭をぶつけ、地下室の曲がり角で止まった。

視界が滲む。後頭部がずきずきと痛み、温かいものが流れ出す。上から聞こえてきたのは、奈津子が芽衣に歌う「ハッピーバースデー」。

耳障りで、吐き気がした。

今度は奈津子は助けてくれない。自分は死にかけているのに、芽衣は誕生日を祝われている。

十八歳以降、新谷家は一度も自分の誕生日を祝ってくれなかった。同じ屋根の下にいても、向けられる視線は冷たかった。

奈津子が使用人に命じる。

「誰か! あれを運び出しなさい! 目障りよ!」

芽衣が嘲るように笑った。

「結奈、お母さんが前みたいに助けると思った? 十年前に助けたのはね、あなたの治療に300万円出す人がいたからだよ」

奈津子も平然と続ける。

「残念ね、その人は五年前に死んだ。あなたにはもう利用価値がない……ああ、骨髄だけは別。新谷家への最後の恩返しだと思いなさい」

結奈の胸の奥で、最後のぬくもりがぷつりと消えた。残ったのは骨まで凍る寒さと、燃え上がる憎しみだけ。

目を閉じる。

――新谷家の「優しさ」は、全部嘘だった。誰かが影で支えていただけ。

もし来世があるなら、二度と新谷家のために鉱山を立て直したり、会社を救ったりしない。

……

パァン——

乾いた平手打ちが頬を叩きつけ、ひりつく痛みが一気に広がった。

結奈ははっと目を開き――目の前にはブランド店のVIPルーム。

不思議なことに、肺が詰まるような苦しさはない。代わりに頬の痛みだけがやけに鮮明だった。

「結奈! この泥棒! 芽衣に身代わりさせるなんて!」

耳慣れた声。振り向けば、奈津子の意地の悪い顔がある。

全身が震える。脳裏に焼き付いているのは、あの女が自分を階段から突き落とした光景。

隣で芽衣が善人ぶった口調で言った。

「お母さん、お姉ちゃんもわざとじゃないよ。あのブレスレットが欲しかっただけでしょ? 200万だし、私が払う。買い取れば刑務所に入らなくて済むよ」

結奈が顔を上げると、カウンターの万年暦は2020年。

五年前――生き返った。

思い出す。大学一年のときだ。芽衣には盗み癖があった。高級店でブレスレットを盗み、警察に捕まった。身代わりにしようとしてきた。

あのときの自分は、奈津子の「命の恩」に縋って、受け入れてしまった。

その日から自分の立場は地に落ち、地下室へ追いやられた。

「何睨んでるの! 今すぐ立ちなさい、警察署へ行って謝りなさい!」奈津子は結奈を乱暴に引き起こす。

結奈は息を整え、スマホを取り出した。

「謝るのはいい。でも――これ、警察に提出する」

そう言って録音を再生する。

「お姉ちゃん、お願い……! お母さんに盗んだってバレたら殺される……」

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