紹介
前世で私は、狼族の王子ダリウスとの結婚を選んだ。「黒羽の孤児」という身分から逃れたかったのだ。
狼族の掟は明確だった。「母系の鷹眼」の血統を持つ子を最初に産んだ者が、すべてを統べる。私は彼の子を宿した。それはダリウスに王座をもたらしただけでなく、絶大な権力も与えた。
族長の実の娘である妹セシリアは、血族の高貴さと神秘性に魅せられ、自ら彼らの継承者との婚姻を選んだ。
しかし血族の婚姻は氷のように冷たかった。最終的に彼女は体質の拒絶反応で生殖能力を失い、宴会の笑い者に成り下がった。嫉妬と恨みに駆られた彼女はすべてを私のせいにし、私に薬を盛り、嵐の崖から突き落とした。
急速に落下する私を、追放された翼なき竜ケイドが暗い鱗に覆われた手を伸ばして救おうとした。だが崖の上でセシリアが冷笑しながら岩索を切断し、私は地面に叩きつけられて死んだ。
再び目を開いたとき、あの手の残る温もりとセシリアの怨毒に満ちた眼差しが、まだ魂の奥深くに刻まれているようだった。しかし驚くべきことに、私は百年に一度の「結盟の季節」が開かれるその日に戻っていた。
チャプター 1
四大種族による凄惨な大戦が停戦を迎えた後、超常評議会は一つの鉄則を定めた。――『王裔条約』。
百年に一度、「結盟期」が開かれる。条件を満たした新たな継承者たちが、次の百年における世界の覇権を決するのだ。
前世の私は、狼族の王子ダリウスに嫁いだ。「黒羽の孤児」という烙印から逃れたくて。
狼族の掟は単純明快だった。先に「母系鷹眼」の血を引く子を産んだ者が、すべてを手にする。
私は彼の子を宿した。それはダリウスを王座へ押し上げ、途方もない権力を与えた。
族長の実の娘である妹セシリアは、血族の気高い神秘に憧れ、みずから彼らの継承者との婚姻を選んだ。
けれど血族の結婚は、氷のように冷たい。
結局、彼女は体質の拒絶反応で子を産めない体となり、宴の席では笑いものにされた。嫉妬と怨嗟に塗れたセシリアは、そのすべてを私のせいにした。薬を盛り、私を風暴崖から突き落としたのだ。
落下していく私へ、追放された無翼竜ケイドが、暗い鱗に覆われた手を伸ばしてくれた。助けようとしてくれたのに――岩壁の上で、セシリアは冷笑し、命綱の岩索を断ち切った。
私は、地面に叩きつけられて死んだ。
そして、再び目を開けた瞬間。あの手の残る温もりと、セシリアの怨毒の眼差しが、いまも魂の奥に刻まれているようだった。
なのに私は、百年に一度の「結盟期」が始まる、その日に戻っていた。
月光祭壇の観神台から、下の祭壇を見下ろす。
そこでは、セシリアがすでに先回りし、ダリウスと絡み合っていた。
――彼女も、戻ってきたのだ。
だがセシリアは知らない。ダリウスが伴侶にどれほど残酷かを。満月で理性を失った夜、彼は寝台の上で何匹もの雌狼を壊してきたことを。
冷えた祭壇の石段。名誉を示す金羽のマントが、乱暴に脇へ投げ捨てられている。セシリアは裸のまま脚を大きく開き、ダリウスは彼女の腰を掴み、容赦なく突き上げていた。
湿った媚声が漏れ、胸が乱暴な衝撃に揺さぶられる。粗い掌が白い尻を掴み、赤い痕を刻みながら、身体ごと叩きつけるように引き寄せた。
「もっと……壊して」セシリアは甘く喘ぎ、爪でダリウスの背に幾筋もの血の線を走らせる。
「お前、こういうのが好きなんだろ。全部、奥にくれてやるよ」ダリウスが低く唸り、彼女の腰を掴んで四つん這いにさせた。次の瞬間、背後から一息に貫く。
その光景に、私は前世の死の記憶から叩き起こされるように我に返った。
魔導鏡の伝音装置を乱暴に押し込み、祭壇へ向けて声を叩きつける。
「セシリア、何をしているの?!」
私の声が祭壇の上に反響した。
セシリアは荒い息のまま、なおも下半身をダリウスに貫かれている。首を反らし、まるで魔導鏡越しにこちらの位置を射抜くように見上げ、頬を紅く染めて言った。
「お姉さま。私、ダリウスと本気で愛し合ってるの。お願い……私たちを認めて」
「それに、もう誓約も結んだ。今さら私が彼に嫁がなかったら、議会は私を『不浄』の罪で絶対に許さない」
私は冷えた目で、その哀れっぽい懇願を聞き流した。
そのとき、観神台の影から養父――鷹族の族長オルトンが姿を現した。下の狂騒を見て眉を寄せ、私に言う。
「レイヴン。もう起きたことだ。家の恥にするな。お前は別の伴侶を選べ」
オルトンの目には、セシリアがどれほど道を外れていようと、咎める気配など欠片もない。彼女は純血の金羽を持つ実の娘で、私はいつでも切り捨てられる黒羽の孤児にすぎないからだ。
私は祭壇のセシリアを見下ろした。
涙に濡れた顔で可憐に見せかけているくせに、瞳の奥では野心と得意がぎらついている。隠しきれていない。
彼女は信じているのだ。私より先にダリウスの寝台へ潜り込めば、前世で私が掴んだ運命を奪い取り、権力の頂点――王妃の座に座れると。
風暴崖での裏切り。深淵へ落ちていく絶望。そして、岩索を断ち切ったあの冷笑。
一瞬で脳裏に雪崩れ込み、胸の奥で怒りが暴れ回った。いまこの場で駆け下りて、あの喉を裂いてやりたい。二人まとめて血で償わせたい。
それでも私は、袖の中で拳を握り潰す。爪が掌の柔らかい肉へ食い込み、鋭い痛みで無理やり理性をつなぎ止めた。
殺意を瞳の底へ沈め、伝音装置に向けて、意味深く冷たい笑みを引き結ぶ。
「そこまでダリウスを愛しているなら、私は口を出さない。……ただ、後悔しないでね」
セシリアは、私がこんなにもあっさり退くとは思っていなかったのだろう。目を瞬かせ、次いで興奮に顔を輝かせた。演技の涙を拭うことすら忘れて。
「あ……ありがとう、お姉さま!」
見せつけるように、彼女はダリウスの荒々しい衝きに合わせ、わざと腰を強く押し返し、さらに深く受け入れる。挑発するような甲高い声が響き、彼女は男の太腿へしがみついた。
まるで全世界に向けて宣言しているみたいだった。未来の王座を、私はもう掴んだのだと。
オルトンは安堵したように息を吐き、縁組名簿を取り出して取り繕う。
「レイヴン、お前は度量がある。残る第一候補は、血族の継承者……それから、竜の墓所群にいる追放者の無翼竜だ」
「血族がいいだろう。高貴で神秘的で、地位もある」オルトンは眉を寄せて考える。「あの竜は翼すらない上に寿命が短い。まったくの欠陥品――怪物だ」
「父上様」
私は迷いなく遮った。前世、墜ちる私へ必死に伸ばされた、暗い鱗の大きな手が脳裏に蘇る。
私は顔を上げ、薄暗い神殿の奥を越えて、竜の墓所群がある荒涼たる方角を見据えた。
「無翼竜、ケイドを選ぶ」
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