紹介
十七年間愛し続けた男性は、私が血を吐いて倒れているのに秘書と浮気をしていた。抗癌剤で髪が抜けた私を彼は嘲笑った。
「髪まで偽物なのか」
最後の貯金を密かに彼のスポーツリハビリ基金に振り込んだ時――それは私の命を救えたかもしれない金だった――彼は私を追い出した。
「出て行け。お前は最初からこの家族の一員じゃない」
もし彼が「嘘つきで同情を引こうとする偽物」と呼んだ女性が、みすぼらしいアパートで一人死んでいくことを知ったら……
彼はついに私を信じてくれるだろうか?
今度は、私の死は嘘ではない。
チャプター 1
今日、二十五歳になった。
桜丘医療センターの待合室の椅子に座りながら、その言葉を心の中で何度も繰り返していた。スマホの画面には三月十五日と表示されている。一年ずっと待ち望んでいた日だ。
今年こそ、拓海は誕生日を覚えていてくれるかもしれない。
「吉川日葵さん!」
看護師に名前を呼ばれ、私は思わず飛び上がりそうになった。
ついに検査結果が出たのだ! 私は澤村誠先生の診察室へと急いだ。ここしばらく感じたことのないほど、足取りは軽かった。誠は大学の同級生で、卒業後はここの腫瘍内科医になった。彼が精密検査を強く勧めてくれなければ、私が病院に来ることなどなかっただろう。
「ただの定期検診だよ」と彼はその時言った。「君のお母さんの病歴が、少し気になってね」
でも、私はまったく心配していなかった。今日は私のラッキーデー。すべてが完璧な一日になるはずだ。
ドアを押し開けた瞬間、誠が手元の検査報告書を凝視しているのが見えた。大学時代から変わらないその顔には、重々しい影が刻まれている。
「誠、いい知らせでしょう?」私は期待に胸を膨らませて尋ねた。「今日、誕生日なんだから。きっと運もいいはず!」
彼は私を見上げた。その瞳には、今まで見たこともない複雑な色が浮かんでいた。痛み、同情、そして何か別の感情が。
「日葵、座って。話があるんだ」彼の声は穏やかだったが、その響きはまるで重い石のように私の胸に響いた。「検査の結果……君は膵臓がんだ。それも、かなり進行している」
私は凍りついた。手からスマホが滑り落ち、床にカシャンと音を立てて転がる。
「何?」私の声はかろうじて囁きになった。「冗談でしょ? 今日、誕生日なのに……」
「お母さんと同じ、遺伝性のものだ」誠の声は、紛れもない憐れみを帯びてさらに低くなった。「今の状況からすると、おそらく、あと半年くらいだろう」
半年。
母の最期の日々が、脳裏に焼き付いて離れない。苦痛に歪む顔、光を失った瞳、そして病院のベッドから漏れるか細い呻き声。
「嘘……そんなはず、ない……」私はこの残酷な現実を拒絶するように、必死に首を横に振った。「私はまだ若いのに、まだやりたいことがたくさんあるのに、まだ……」
まだ、拓海の愛を手に入れていないのに。
誠が慰めようと手を伸ばしてきたが、私は突然立ち上がり、よろめきながらドアへと向かった。
「日葵!」
彼が後ろから呼び止める声が聞こえたが、私はもうドアを押し開けていた。
病院を飛び出すと、三月の冷たい風が容赦なく顔に吹き付けた。通りを行き交う人々は、それぞれの人生に夢中で、誰も二十五歳の少女がたった今、余命を告げられたことなど知らない。
よりにもよって、誕生日に。
どうやって車を運転して帰ってきたのか、記憶がなかった。信号、右左折、駐車――それらの動作は体の反射運動のようで、私の魂はあの冷たい診察室に置き去りにされたままだった。
余命六ヶ月。末期の膵臓がん。母と、同じ。
その言葉が頭の中で何度も繰り返され、頭の中で何度も木霊する。
白石家の前に車が停まるまで、自分が着いたことに気づかなかった。運転席に座ったまま、ハンドルをナックルが白くなるほど強く握りしめる。
息を吸って、日葵。今日はあなたの誕生日。
もしかしたら、拓海は覚えていてくれるかもしれない。もしかしたら、もうサプライズを用意してくれているかもしれない。今日という日が、最悪なだけのわけがない。
時計を見ると、午後三時。私は自分に、大丈夫なふりをしろ、せめて大丈夫なふりだけでもしろ、と言い聞かせた。
キッチンのドアを押し開けると、そこは空っぽだった。豪奢な大理石のカウンターには、拓海が今朝飲んだコーヒーカップが、とっくに冷え切ったまま置かれている。
もしかしたら、二階で待っていてくれている? 誕生日サプライズを用意してくれているとか?
私は急いで物置部屋へ向かい、あらかじめ買っておいた誕生日の飾り付けを取り出した。ガーランド、風船、ケーキのろうそく……。
最初のガーランドを飾り付けた途端、涙が予期せずこぼれ落ちた。
六ヶ月。私にはもう、六ヶ月しか残されていない。
手の甲で涙を拭い、飾り付けを続けた。ピンクの、青いの、毎年同じように、一つ一つ丁寧に色を合わせる。手は震えていたけれど、止めることはできなかった。
「覚えていてくれる」しゃくりあげながら、私は自分に言い聞かせた。その声は、誰もいないキッチンに虚しく響き渡る。「去年だって忘れてたけど、後から思い出してくれた。仕事が忙しすぎたって言ってたけど、ちゃんと一緒にケーキを食べてくれたじゃない」
大理石のカウンターに涙がぽたぽたと落ち、慌てて袖で拭った。拓海に泣いていたことを見られるわけにはいかない。
冷蔵庫から昨日買っておいた苺のケーキを取り出す。手がひどく震えて、危うく落としそうになった。これは拓海が一番好きな味だ。彼が私の作るものを好きだと言ったことは一度もなかったけれど、苺のケーキが子供の頃からの大好物だということは、ちゃんと覚えている。
これが、私が作る最後の誕生日ケーキになるのかもしれない。
そう思った途端、また涙がこみ上げてきた。私はキッチンアイランドに突っ伏し、肩を震わせながら静かに泣いた。なぜ今日なの? なぜ私の誕生日に?
でも、崩れ落ちるわけにはいかない。少なくとも、今はまだ。
深呼吸をして顔を洗い、誕生日ディナーの準備を続けた。一つ一つの動きが、まるで死そのものに抗っているかのようだった。私はまだ生きている、まだ彼のためにこれらのことができるのだと、証明しなければならなかった。
六時、玄関から聞き慣れた足音が響いてくる。私は急いで髪を整え、震える手をエプロンで拭いながら、高鳴る心臓を抑えた。
「拓海?」
私はそっと呼びかけた。
しかし彼は、キッチンに一瞥もくれずにまっすぐ二階へ上がっていった。色とりどりの飾り付けなど、彼には見えていないも同然だった。
私はキッチンの入り口に立ち、二階からの物音に耳を澄ませた。彼が電話をかけている。
「美咲、今夜空いてる?」天井越しに彼の声が聞こえてきた。「家では何もないから、あの新しいフレンチレストランでも行かないか」
家では何もない。
その言葉を繰り返すたび、誰かに心臓を鷲掴みにされているような感覚に陥った。彼の目には、私の誕生日は何でもない。私の存在そのものが、何でもないのだ。
「日葵はどっちみち予定ないだろうし」彼は天気の話題でもするかのような、気軽な口調で続けた。「いつも一人で家にいるだけだからな」
彼は私が存在していることさえ忘れてしまったのだろうか?
松田美咲。拓海の大学の同級生で、今は彼の秘書をしている。茶髪に黒い瞳、まるで雑誌のモデルのように完璧な女性。二人の関係が仕事だけではないことは知っていた。彼らが交わす視線も、深夜の電話も、彼の車で見つけた彼女の口紅も、私は見て見ぬふりをしてきた。
しかし和己さんは美咲のことを気に入らず、「白石家にふさわしくない」と言っていた。だから拓海は彼女とこっそり会うしかなく、私は世間向けの「完璧な彼女」を演じることになった。
壁にもたれかかると、足の力が抜けていくのを感じた。二階では拓海が美咲とのデートの計画を立て続けている。一方私は、丹念に飾り付けたこのキッチンで、決して訪れることのない「誕生日おめでとう」の言葉を、馬鹿みたいに待ち続けている。
三十分後、彼が階段を下りてくる足音が聞こえ、そしてドアが閉まる音がした。彼は行ってしまった。美咲とのデートに。
私は美しく飾り付けられたキッチンで、一人で彼の帰りを待った。七時、八時、九時……。静寂の中、時計の秒針の音がやけに耳に突き刺さる。
夜の十一時になっても、拓海は帰ってこなかった。私はついに待つのを諦め、手つかずの苺のケーキを自分の部屋へ運んだ。ろうそくに火を灯し、決して叶うことのない願い事をしてから、そっと吹き消した。
窓から差し込む月光が、十七年前のあの夜のように、私の日記帳を照らしていた。
あの頃、私はまだ八歳で、母の春美と一緒に白石家に引っ越してきたばかりだった。和己さんは妻の葵さんを亡くしたばかりで、私たちは支えを失っていた。この結婚は、相互扶助のようなものだった。
私は自分で描いたバースデーカードを手に、十歳になったばかりの拓海の部屋のドアを、おずおずとノックした。「拓海お兄ちゃん、これ、誕生日のカード……一生懸命描いたの……」
しかし、ドアは乱暴に開け放たれ、目を真っ赤にした拓海が私に向かって叫んだ。「出ていけ! お前たちのせいで、母さんは死んだんだ!」
「私……ただ、お誕生日おめでとうって言いたかっただけ……」八歳の私は、恐怖で涙を流した。
「お前の『おめでとう』なんていらない! お前なんか大嫌いだ!」彼は力任せにドアを閉めた。
十七年が経ち、私はまだ彼の「誕生日おめでとう」を待ち続けていた。そして今日、ようやく悟ったのだ。私はそれを、永遠に手に入れることはないのだと。
日記帳を開き、震える手で書き記した。
【今日、癌だと診断された。拓海は私の誕生日を忘れていた。これが、運命のいたずらかもしれない。】
この一文を書き終えると、ペンを置き、鏡に映るやつれた自分の顔を見つめた。残された六ヶ月、私は拓海の目に「同情を得るために病気のふりをする、もう一人の人間」として映りたくなかった。
母が重い病に臥せっていた時、拓海が友人にこう話しているのを聞いてしまった。「ああいう連中は、いつも病気のふりをして注目を集めたがるんだ」
私はドアの陰に隠れ、その言葉を一言一句はっきりと聞いた。彼の目に宿る嫌悪と軽蔑の色――それを忘れることはできなかった。
もし私が癌だと告げたら、彼はどう思うだろう? 母の真似をして、同情を得るために病気を装っていると思うだろうか? あの疑いの目で、私を見るのだろうか?
いやだ。それなら、彼が知らない方がいい。
私は日記帳を固く閉じ、決心した。残された六ヶ月、私は尊厳を持って去ろう。
まるで、最初から彼を愛していなかったかのように。
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