彼の後継者を命がけで狙うメイド

彼の後継者を命がけで狙うメイド

大宮西幸 · 完結 · 17.9k 文字

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紹介

ソフィアと私は、運命を変えるためにあのエメラルドの指輪をどちらが嵌めるかで争った。

一周目の人生で、私は億万長者の令嬢になれると信じて、そのエメラルドの指輪を自分のものにした。
――だがそれも、あの夜更けに、地下へと続く鉄の扉を偶然開けてしまうまでのことだった。彼は私の首をピアノ線で絞め上げながら、冷酷に言い放った。
「お前のみっともない泣き声は、彼女のそれとはまるで違う」

二度目のチャンスを与えられた私は、一歩身を引き、ソフィアに指輪を譲った。

数日後、彼女は舌を切り落とされた状態で、氷室の中で息絶えた。死ぬ間際、彼女は骨の髄まで凍りつくような悲鳴を漏らした。
「あの扉の向こうに、本物の悪魔が隠れている……!」

そして三度目の目覚め。再び私たちの前にあの指輪が差し出されたとき、私とソフィアはただ、底知れぬ恐怖にガタガタと震えることしかできなかった。

――一体、彼が探し求めている「娘」とは、誰のことなのだろうか?

チャプター 1

ソフィアと私は、運命を変えるというあのエメラルドの指輪を、どちらが身につけるかで争った。

一度目の人生では、私がその指輪を手に入れた。億万長者の相続人になれるのだと思い込んで。

だが深夜、誤って地下の鉄扉を開けてしまったその瞬間、彼はピアノ線で私の首を絞めて殺した。「そのみっともない泣き声は、彼女とはまるで違う」

二度目の機会を与えられた私は引き下がり、ソフィアに譲った。

数日後、ソフィアは氷室で舌を切り落とされた姿で死んだ。息絶える直前、血の凍るような嗚咽を漏らしてこう言った。「本物の悪魔が、あの扉の向こうに隠れてる!」

三度目に目覚めたとき、私たちは指輪が再び差し出されるのを前に、恐怖で震えた。

彼が探している「娘」とは、いったい誰なのか。

「亡き妻が遺したこの指輪を知る者こそ、行方知れずの我が娘だ。そして娘には、私の持つすべてを継がせよう」

アリスターは廊下の中央に立っていた。手袋越しの掌に載せたエメラルドが、薄暗いシャンデリアの光を拾って鈍く煌めく。それを固定する銀の爪の付け根には、黒ずんだ錆が固着していた。

喉元を真一文字に裂かれるような、残酷な幻痛が走った。

ここに立つのは三度目だ。砕けた気管の記憶と、ソフィアの切り落とされた舌の記憶が頭の中でぶつかり合い、部屋がぐらりと回る。

「怖がらなくていい、子どもたち」彼は微笑み、氷のような青い瞳を私たちから一瞬も外さない。「帰っておいで。世界でいちばん精妙な愛を、君たちに見せてあげよう」

ソフィアの膝が崩れ、彼女は柱にもたれかかりながら、ずるずると床に頽れた。必死に後ずさりする。

「……違う」荒い息の合間に、彼女は掠れ声で言った。「それは私の指輪じゃない。あの子のよ。あの子のところへ行って!」

私は弾かれたようにソフィアへ視線を向けた。彼女の目に宿る恐怖はごまかしようがない――知っているのだ。

アリスターの笑みが、ほんのわずかに引き締まった。小首を傾げ、焦点を私へ移す。

私は頬の内側を噛みしめ、血が滲むほど強く噛んだ。舌に広がる金属の味で、震える手足をどうにか繋ぎ止める。「いいえ、旦那様。そんな指輪、見たこともございません」

「生意気な小娘どもめ」執事長が影から進み出て、嫌悪に歪んだ顔で吐き捨てた。「アリスター様が、あんたらみたいな惨めな身分から引き上げてくださるというのに、恩知らずの害虫めが――」

アリスターが片手を上げると、執事長は即座に口を噤んだ。

「構わないさ」アリスターは低く囁き、エメラルドをベストのポケットへ滑り込ませた。「貧民街育ちの孤児は、いつも身構えている。しばらく屋敷に置いておきなさい。どちらかがきっと思い出す」

ソフィアが必死に首を振った。「嫌。出して。私たちは帰るの。あいつは――」

私は膝をつき、彼女の口を手のひらで乱暴に塞いだ。

「ありがとうございます、アリスター様」喉の奥に結び目ができたみたいに声が詰まるのを、無理やり押し出す。「ありがとうございます。ようやく、私たちにも家ができました」

アリスターは慈悲深い頷きをひとつ返し、背を向けた。

私は彼のルールを知っている。今ここで警察を呼べと叫べば、選別などすっ飛ばして、即座に死が訪れる。残らなければならない。弱点を見つけるまで、獲物のふりをし続けるしかない。

十分後、私はソフィアを使用人部屋へ連れ込み、内側から閂を下ろした。

ソフィアは自分の髪を掴んで掻きむしった。「アビゲイル、あんたも覚えてるんでしょ! ここは屠殺場よ。窓を割って逃げなきゃ。警察に――」

狭い部屋に、乾いた鋭い音が響いた。

私の掌が彼女の頬を強く打った。ソフィアは凍りついたように動きを止め、息を荒げたまま私を見上げる。

「落ち着いた?」私は囁きより少しだけ大きい声で言った。「私たちは名もないメイド二人。あの男はこの州の政治家の半分を飼ってる。警察が私たちを、あいつのところへ送り返さないと思う?」

ソフィアは鉄のベッドの端に沈み込んだ。頬の汚れを裂くように、涙が一筋流れ落ちた。

「前回、死ぬ前に何を見たのか、全部言って」私は畳みかけた。

「扉があるの。地下室の最下層、奥の回廊に錆びた鉄扉が。真夜中のミサの鐘が鳴るときだけ、あいつはそれを開ける」ソフィアは両腕で自分を抱き、震えた。

「一度目のとき、私は書斎を漁っていて、屋敷の設計図を見つけたの」

「その向こうを見たの?」私は問うた。

「見てない。でも後で地下室の廊下へ行ったら、通路全体が分厚い蜘蛛の巣で息が詰まるほどだったのに……あの扉の前の床だけ、妙に綺麗だった」

誰かが、毎日その鉄扉を出入りしている。

「他はどうでもいいのよね」私は呟き、狭い室内を行き来した。

以前、高価な花瓶を割ってしまったことがある。彼はまばたき一つせず、微笑んで「手は切っていないかい」と訊いただけだった。だが、あの鉄扉だけは……違った。

ソフィアがぎゅっと目を閉じた。「男たちに引きずられて扉から引き離される直前……匂いがしたの」

私は足を止めた。

「アリスターが襟につけてる、あの重たい花の香水と、同じ匂い」ソフィアは囁いた。

寝室の扉の下、細い光の筋を影が覆った。

「子どもたち?」厚い木の扉越しにアリスターの声が流れ込む。「晩課が始まる。妻に、新しい家族が来たことを知らせる時間だ」

私はソフィアの氷みたいに冷たい手を掴んだ。私たちは扉の閂を外す。

アリスターは先を歩き、廊下のガス灯を背にした黒い影となった。私たちは十歩ほど後ろから、迷路のような西棟の通路を辿る。

廊下の終わり近くで、ソフィアの膝がまたわずかに折れた。私は彼女の腰を支え、巨大なステンドグラス窓の横の壁へ押し当てて立たせる。

「息をして」私は口の形だけで伝えた。

支えながら、私は窓の外へ目をやった。この高さからなら、月明かりの下に屋敷の西中庭の配置がはっきり見える。私用礼拝堂が、急な石の尾根の上に突き出していた。

私はその線を、暗い地面へ向けて頭の中で辿っていく。

血の気が引いた。

礼拝堂の壮麗な祭壇は、地下室の最深部の真上に造られている。あの錆びた鉄扉の、真上に。

「アビゲイル、ソフィア」

前方の礼拝堂から、アリスターの声がした。彼は祭壇の前に立ち、蝋燭に火を灯している。

「もっと近くへ」囁くように言い、床のベルベットの跪き台へ手を差し向けた。「彼女が、君たちに会いたがっている」

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もう二度と、過去には戻らない。