転生した吸血族の私は、両腕をへし折られた後、一族を皆殺しにした

転生した吸血族の私は、両腕をへし折られた後、一族を皆殺しにした

渡り雨 · 完結 · 17.6k 文字

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紹介

私が自ら初めて血を与え、二百年ものあいだ甘やかしてきた男は、私の腕をねじ折り、餌みたいに放り投げて狩人にくれてやった。

灼けつく太陽の下、私は生きたまま灰になった。

死んだあと、骨灰の隣で――あいつらはシャンパンで乾杯して祝った。

もう一度目を開けたとき、私はすべての記憶を抱えたまま、あの夜へ戻っていた。

家族の裏切り、恋人の謀略、狩人の包囲。今度は、いい子ぶるのは終わりだ。

私を売った血の一滴残らず、悲鳴の中で返してもらう。

チャプター 1

「香水をつければ、私たちは普通の人間と何も変わらないの。吸血鬼狩りには、私たちの匂いなんて絶対わからない!」

 クレアの声がリビングに響いていた。

 私は弾かれるように目を開ける。視界が、いきなり鮮明になった。

 きらめくクリスタルのシャンデリア。その眩しさが目を刺す。

 ――私は、死んでない?

 ついさっきまで私は、吸血鬼狩りの一族が持つ、棘だらけの十字架に磔にされていた。

 夜明けの最初の光が肌に落ちた瞬間、血肉は焼け崩れ、灰になった。

 魂を生きたまま引き裂かれるような痛みは、いまも神経の先にへばりついている。

 そして、その元凶は――目の前にいる、かつて我が子同然に扱ってきた「家族」たちと、私が愛した男、アサー。

「エウィラー、何を発狂してる」

 氷みたいに冷たく、露骨な嫌悪を混ぜたアサーの声が、私を現実へ引き戻した。

 アサーはクレアを背に庇い、私を睨みつける。

「クレアは善意で、みんなのために偽装を用意してくれたんだ。外の世界を見せてくれるっていうのに……その目は何だ? わざわざ全員の楽しみを潰す気か」

 私は部屋を見渡す。

 リオー、マヤ、それから――かつて路地で病み、飢え、跪いて私に永遠の血を乞うた子どもたち。

 今はみな、アサーとクレアの背後に並び、まるで化け物を見るみたいな目で私を見ていた。

「クレアの言うとおりだ。狩人の領地には古い文献が山ほどある。どうして行っちゃいけないんだ?」

「エウィラーはいつもそう。何世紀も生きてる吸血鬼だもんね、感情なんてない冷血な獣!」

 冷血な獣。

 死神の手から引きずり返し、心血注いで育てた「家族」から浴びせられる言葉に、胃の底がぐらりと気持ち悪くなる。

 前の人生の今日も同じだった。人間の少女クレアは、アサーの寵愛を盾に、家族総出で吸血鬼狩りの縄張りへ「探検」に行こうと言い出した。香水ごときで血族の生臭さは消えない――私はそれを知っていたから、必死に止めた。挙げ句、力ずくでクレアを家へ帰した。

 だがクレアは、アサーに私の「悪意」を証明するために、たった一人で狩人の領地へ向かい、殺された。

 そしてアサー――私が自ら血を与えた吸血鬼は、クレアの仇討ちだと言って、捕まったふりの罠を仕掛けた。私を狩人の本拠へ引き込み、狂った連中が私の皮を剥ぎ、筋を抜き、太陽に晒して灰にするのを、ただ見ていた。

 私が死んだとき、あいつらは骨灰の横でシャンパンを開けて祝ったのだ。

「好きにしろ」

 私は冷たく吐き捨てた。

 アサーが一瞬、言葉を失う。想定外だったのだろう。

「『好きにしろ』がどういう意味かわかってる? 死にに行きたいなら――」

 私は口元を歪め、嘲りの弧を描く。

「扉はあっちだ。自分で転がっていけ。私は、絶対に付き合わない」

 行け。自分の手で苦い果実を醸せ。吸血鬼狩りの銀の刃が、お前らの喉をどう裂くか、じっくり見てこい。

 クレアの瞳が、みるみる赤くなった。

 彼女は悔しそうにアサーの袖をつまみ、声を震わせる。

「エウィラーお姉ちゃん……私、何かした? 怒らせちゃった? あなたが来ないと、この家は……欠けたままになっちゃう。みんな、きっと悲しいよ」

「相手にするな、クレア」

 アサーは私を嫌悪そのものの目で一瞥した。

「こいつは自分勝手な怪物だ。家族の絆が何かなんて、欠片もわからない」

 私は吐き気を堪えるのも馬鹿らしくなり、二階へ向かって背を向けた。

 クレアの目に一瞬だけ走った、怨毒と算段の光を――そのときの私は見逃している。

 深夜。

 目を閉じようとした瞬間、胃の奥が激しく痙攣した。灼けるような痛みが、一気に全身を舐め尽くす。

「――っ、う……!」

 私は苦悶に身を折り、冷汗が一瞬でシーツを濡らした。吸血鬼が病むはずがない。あり得るとすれば――血の補給に、何かが混じった。

 起き上がる間もなく、扉が乱暴に蹴破られる。

 アサーが数人を引き連れ、土足で踏み込んできた。言葉もなく、私の長い髪を掴み、弱りきった身体をベッドから床へ引きずり落とす。

「縛れ。車に積め」

「アサー、何のつもりだ!」

 必死に抵抗するが、体内の異様な灼熱が力を根こそぎ奪っていく。リオーとマヤが近づき、馬鞭草に浸した太い鉄鎖で私の身体を容赦なく巻き上げた。肌が触れた瞬間、

 ジュッ――

 肉が焼ける音がして、痛みが跳ね上がる。

 扉口にはクレアまで立っていた。口元に、薄い冷笑。

 私はそのまま引きずられ、SUVの後部座席へ叩き込まれた。

「アサー! 狂ったのか!」

 激痛を噛み殺し、私はアサーの胸を蹴り上げた。

「狂ってるのはお前だ!」

 アサーは怒りで顔を歪め、獣みたいに飛びかかってくる。両手で私の肩をがっちり掴み、瞳の奥に残忍で狂気じみた赤い光を灯した。

「クレアの言うとおりだ。お前が来ないのは、私たち全員への裏切りだ! このクソみたいな支配欲の塊が……今日だけは、行くって言っても行かないって言っても同じだ!」

 その言葉が終わるより早く、アサーの両手が捻じれる――

 バキッ。

「――あああああっ!」

 私の悲鳴が車内を裂いた。

 アサーは、私の両腕を――本当に、力ずくでへし折った。

 折れた腕は、ゴミみたいに車外へ放り捨てられた。

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