妹に婚約を奪われた私は、最弱だと思われたエルフを選んだら、実は神界最強でした

妹に婚約を奪われた私は、最弱だと思われたエルフを選んだら、実は神界最強でした

渡り雨 · 完結 · 19.9k 文字

1.1k
トレンド
1.1k
閲覧数
6
追加済み
本棚に追加
読み始める
共有:facebooktwitterpinterestwhatsappreddit

紹介

前世、私は狼人を選び、「裁決者」を産んだ。けれどいちばん可愛がっていた妹の手で、火に焼かれて死んだ。

生まれ変わって戻った私は、誓いの石の前にひざまずき、婚約書を妹へ差し出した。彼女が有頂天になるのを見届けてから、誰もが避ける精霊――セラス・セレンを選ぶ。

皆が私の笑いものになる日を待っていた。――あの結婚式の日、彼が聖樹の祝福を携えて花嫁衣装を捧げ、伏し目がちに告げるまでは。

「今生では、決して君を裏切らない」

チャプター 1

「お姉さま、私とマックスは本気で愛し合っているの」

 セリアの声が左から届く。彼女は私から三歩ほど離れた場所にひざまずき、まつげに涙をぶら下げたまま、落ちるか落ちないかのところで震えていた。

 私ははっと目を開けた。指先には、焦げた皮膚の感触がまだ残っている。

 視界に入ったのは、議会のドーム天井から下がる水晶のシャンデリア。刃物みたいに冷たい光。空気には香の甘さと古書の匂い――ここは父の書斎だ。

 私は、誓いの石の前に跪いていた。

 膝下の刻み目は、嫌というほど覚えている。百年に一度の、血盟婚の宣誓の日。

「もう……夫婦になってしまったの。彼のところへ嫁げないなら、私の人生は終わりよ」

 父は背の高い椅子に腰掛け、肘掛けを指でとん、とん、と叩く。セリアを見る目はいつも同じだ。

「困った子だ」と言いながら、甘やかしてしまう眼差し。

「エララ」父が口を開く。

「お前も、わかるだろう……」

 私は父を見なかった。見ていたのはセリアだ。

 俯いた彼女は肩を小刻みに震わせ、恋に追い詰められて壊れそうな少女そのもの――に見える。

 けれど、口元の筋肉が妙に固い。瞳の奥に薄い光が宿っている。前世、火刑台の前に立っていたときと同じ――

得意げな顔。

 この子も、戻ってきたのだ。

「エララ、議会の規定では百年ごとに必ず血盟の婚約を結ばねばならん。妹がすでに――」

「妹とマックスが両想いなら、私が止める理由はありません」

 声は平らに出た。爪が掌に食い込む。ぎゅっ――そして、離す。

 書斎が一拍、静まり返る。父は固まり、用意していた説得の言葉を飲み込んだ。セリアが顔を上げる。涙はまだ残っているのに、瞳孔がきゅっと縮んだ。

 信じられないという顔。けれど、私は無表情のままだ。

「本当か? ならお前の婚約は……吸血鬼のウィマル家も枠が残っている。竜裔のドレーク家も悪くは――それとも」

「エルフの家を選びます。セラス・セレン」

 父の手が宙で止まった。

「エルフ?」眉が寄る。

「セラス・セレン……本気か?」

「本気です」私は言葉を挟む。

「変えません」

 父の顔色が微かに変わった。

 エルフのセレン一族は、三百年前に呪いを受けた。族人は四十を越えて生きられない。嫁いだところで若くして未亡人。子が生まれても呪いを引き継ぐ。議会で彼らを選ぶ者などおらず、セラス・セレンの名は毎年、婚姻名簿のいちばん末尾にぶら下がるだけ。

「……本当に、改めなくていいのか」父の声が弱くなる。

 私は立ち上がった。膝がじん、と痺れる。

「改めません」

 セリアが立ち上がるのが早すぎて、スカートの裾が脇の銅盆をはねた。水がばしゃりと床に散る。けれど彼女は足元など見ず、私だけを見ていた。

「お姉さま、エルフ……」口元を押さえ、指の隙間から笑いが漏れる。

「エルフ、いいじゃない。みんな綺麗だもの」

 そのままくるりと踵を返し、走り去る。足音が廊下の奥へ響いていった。報せに行くのだろう。

 父はため息をつき――どこか安堵したようにも見えた。私は父を見ず、書斎を出た。

 回廊を抜ける風が吹き込み、私は石壁にもたれてしばらく息を整える。さっき掌を爪で掴んだ場所が、まだ熱い。

 恨みがせり上がり、喉がきゅっと締まる。奥歯を噛み締め、ゆっくり緩める。

 それから階下へ向かった。

 階段の踊り場で、セリアの声が控えの間から漏れてくる。笑っている。息が続かないほど、けらけらと。誰かが何か訊いているらしいが、聞き取れない。ただ彼女の語尾だけがやけに高く響く。

「エルフよ! あの人、エルフを選んだのよ!」

 私は歩みを止めない。

 控えの間の扉がきちんと閉まっていない。セリアはもう私に気づいていた。出てきた彼女の顔には、引っ込めそこねた笑いが張り付いている。

「お姉さま、おめでとう」首を傾げる。

「セラス・セレンですって。エルフ一の美貌だものね」

 そう言いながら口元を押さえ、肩をぷるぷる震わせた。

「どうせ……どうせお姉さまは丈夫だし。もしかしたら、彼より何年か長生きできるかも」

 私は彼女の横を通り過ぎる。

「縁起のいいことを言ってくれてありがとう」

 セリアの笑いが、半拍だけ途切れた。

 振り返らず、廊下の突き当たりまで行って自室の扉を開ける。

 閉める。

 部屋は静かだった。化粧台の上には、明日の式のための銀の櫛と白い花。使用人たちがきっちり用意している。

 私はベッドの縁に腰を下ろし、銀の櫛を手に取ってくるりと回した。櫛歯がひやりと冷たい。

 窓の外から鐘の音が届く。日没の鐘――百年に一度だけ鳴る鐘だ。

 明日の朝、三つの家が同時に誓いの石の前で婚姻を結ぶ。セリアはマックスに嫁ぎ、私はセラス・セレンに嫁ぐ。

 前世は――

 前世、私はマックスを選んだ。

 忠誠心があると信じた。狼人の継承者。目はいつも私だけを追い、評議の場では背筋を伸ばして立ち続けた。

 私は彼の子を産んだ。出産の日、その子の血統が「裁決者」だと判明し、議会は夜を徹して会議を開いた。次代の執政者に推挙されたのは、私の子。

 そしてマックスの権力は、一夜で十倍に膨れ上がった。

 セリアは吸血鬼のウィマル家へ嫁いだ。けれど吸血鬼の一族は遊びが派手で――それが祟って、彼女は呪いに蝕まれ、終生子を授かれない身体になった。

 やがて彼女は壊れた。嫉妬は狂気へ変わり、最後には火で、私と子どもを焼き殺した。

 なぜウィマルを選んだのか。理由は単純だ。ウィマルの男たちは、揃いも揃って顔がいい。

 当時の彼女は「顔は一生ものよ」と、心から楽しそうに笑っていた。

 私は銀の櫛を元の場所へ戻す。

 明日の段取りを頭の中でなぞる。教会は議会の東側。誓いの石には三つの立ち位置があり、中央が狼人、左が吸血鬼、右がエルフ。

 セラス・セレンは右に立ち、私はその正面に立つ。

 実を言えば、彼に会ったことは一度しかない。死ぬ直前、炎の向こうに見た最後の一瞥。銀の髪と碧い瞳――伝承どおりの姿だった。

 扉がノックされた。

「お嬢様。セリア様が下にいらして……明日の式で、お嬢様が主婚人の席を譲るとお約束なさった、と」

 主婚人まで奪う気だ。

 主婚人は慣例として長姉が務める。それを奪い取れば、私は観礼席に立たされ、セリアがマックスに嫁ぐ姿を見せつけられる。

「譲ってあげて」

 執事の足音が遠ざかる。

 私は白い花を、試しに整えてあったかつらに挿し、鏡の中の自分を一度だけ確かめる。

 鏡の顔は静かだった。瞳の奥に、何の揺れもない。

 ――それでいい。

最新チャプター

おすすめ 😍

氷の君と太陽の私

氷の君と太陽の私

107.8k 閲覧数 · 完結 · 鍋部奈
裏切られ、後悔に溺れながら死んだ私は、恐れられ冷酷な婚約者が私を救おうと身を投げる姿を見た。

運命が私を引き戻した——薬を盛られた結婚初夜、彼の腕の中で生まれ変わったのだ。これは私の二度目のチャンス。

かつて逃げ出した男こそが私の運命。彼の狂おしい愛こそが、私の最強の武器。世界が恐れる男を受け入れ、彼の姫となろう。共に、私たちを破滅させた裏切り者どもを灰燼に帰すのだ。

しかし私の突然の献身は、彼に疑念を抱かせる。心を砕いてしまった男に愛を証明するには、どうすればいいのだろう……彼の最も暗い欲望が、私を永遠に縛り付けることだと知りながら。
社長、突然の三つ子ができました!

社長、突然の三つ子ができました!

311.7k 閲覧数 · 連載中 · キノコ屋
五年前、私は継姉に薬を盛られた。学費に迫られ、私は全てを飲み込んだ。彼の熱い息が耳元に触れ、荒い指先が腿を撫でるたび、震えるような快感が走った。

あの忌まわしい夜から逃げるように去った私だったが、ほどなくして三つ子を妊娠していることに気付く。

五年後、医療界の新星として戻ってきた私は、継母、継姉、実の父へ全ての仕返しを誓う。

その時、彼が現れた。三人の小さな自分そっくりの顔をじっと見つめながら、優しく「パパ」と呼ぶよう子供たちを誘う彼。

ふとシャツのボタンを外し、悪戯っぽく笑って言った――

「どうだい、あの夜の熱をもう一度味わってみないか?」
本物令嬢の正体がばれました

本物令嬢の正体がばれました

141.2k 閲覧数 · 連載中 · ワニノコ
新谷南は新谷家で二十年も育てられたのに、本当の娘が戻ってきた途端、あっさり家を追い出された。

デザイン部のディレクターの席? 本当の娘へ。
何千万円もの価値がある婚約話? 本当の娘へ。

会社中の人間が、彼女という「野良扱いの娘」がどう転げ落ちていくか、笑いものにしようと様子をうかがっていた。

そんなある日、世界限定二十台の高級バイクが会社の前に止まる。降りてきた不良っぽいイケメンが言った。

「妹、兄貴と一緒に帰るぞ」

新谷家の人間「……は?」

そのあとで彼らはようやく知ることになる。

彼女こそ、国内外の美術館の館長たちが面会待ちの列を作る「南先生」と呼ばれるアーティストであり、
新谷グループの全受賞特許の名義人であり、
さらに、伝説の「国家並みの資産を持つ」と噂される周防家の、本当の長女だということを。

大手財閥の若き当主は、封印していた婚約書を取り出し、薄く唇を吊り上げる。

「なるほど。俺の本当の婚約者は、君だったわけか」
すべてを奪われた令嬢は、やり直しの人生で微笑む

すべてを奪われた令嬢は、やり直しの人生で微笑む

39.1k 閲覧数 · 連載中 · 夢物語
冷たい土の中、私はゆっくりと息絶えようとしていた。
視界を染めるのは絶望の闇。そして、耳元に届くのは――従妹・原田紀奈の、歪んだ嘲笑。

「お姉ちゃん、恨むなら自分の甘さを恨みなさい」

父の薬をすり替え、母を死に追いやり、兄の事故さえ仕組んだ。すべては、目の前で笑うこの女の仕業だった。
さらに突きつけられる、あまりにも残酷な真実。

「あなたの婚約者はね、あなたが身を削って得たお金で、私への婚約指輪を買ったのよ?」

――すべてを奪われ、絶望の中で命を落とした、はずだった。

しかし、次に目を覚ますと、そこは見覚えのある「19歳の誕生日パーティー」の会場。
前世と同じように、婚約者の七瀬崚介が私に無実の罪を着せ、謝罪を迫っている。

(……でも、もう私は、あの頃の愚かな人形じゃない)

奪われた人生も、向けられた悪意も、そのすべてを覚えている。
今度は、私が奪い返す番。
裏切り者たちに、地獄以上の絶望を――たっぷり利子を付けて、返してあげる。
マフィア姫の帰還

マフィア姫の帰還

44.7k 閲覧数 · 完結 · Tonje Unosen
タリアは何年ものあいだ、母と義理の妹、そして継父と暮らしてきた。だがある日、ついにそこから逃げ出すことに成功する。

ところがその直後、自分にはまだ外に家族がいるのだと知る。そして本当に自分を愛してくれる人たちが大勢いることも――そんなものは今まで感じたことがなかった。少なくとも、彼女の記憶にあるかぎりでは。

タリアは人を信じることを学ばなければならない。新しくできた兄たちにも、ありのままの自分を受け入れてもらわなければならないのだ。
離婚後、奥さんのマスクが外れた

離婚後、奥さんのマスクが外れた

322k 閲覧数 · 連載中 · 来世こそは猫
結婚して2年後、佐藤悟は突然離婚を申し立てた。
彼は言った。「彼女が戻ってきた。離婚しよう。君が欲しいものは何でもあげる。」
結婚して2年後、彼女はもはや彼が自分を愛していない現実を無視できなくなり、過去の関係が感情的な苦痛を引き起こすと、現在の関係に影響を与えることが明らかになった。

山本希は口論を避け、このカップルを祝福することを選び、自分の条件を提示した。
「あなたの最も高価な限定版スポーツカーが欲しい。」
「いいよ。」
「郊外の別荘も。」
「わかった。」
「結婚してからの2年間に得た数十億ドルを分け合うこと。」
「?」
彼女を誘惑して、一夜で虜になった

彼女を誘惑して、一夜で虜になった

94.3k 閲覧数 · 連載中 · 月見光
結婚して三年——
彼は毎晩、私を抱きながらも、心はいつも“好きな人”にあった。
私は必死に「今泉夫人」としての役目を果たし、
愛のない結婚を繋ぎとめようとしていた。

けれど、妊娠がわかったあの日——
最愛の夫は私を手術台に押しつけて言った。
「小島麻央、子供とお前、どちらかしか生かせない。」
その言葉で、私の世界は雲散霧消した。粉々になった心を抱えて、私はすべてを捨てて去った。
──再会した時、
私はもう、かつての小島麻央ではなかった。
世界を驚かせるほど、美しく、強く、生まれ変わったのだ。跪く元夫が囁く。「麻央、帰ってきてくれ……」私は微笑んで答えた。「ごめんなさい。もう男には興味ないの。」その瞬間、彼は私を抱き寄せ、低く笑った。
「昨夜の君は、そうは言わなかっただろ……?」
弁護士とゴッドファーザー

弁護士とゴッドファーザー

3.3k 閲覧数 · 連載中 · 月岛澪
彼が浮気したその夜、私は涙を流さなかった。ただ、お酒に逃げただけ。
ウイスキーが喉を灼く。その時、彼が目に入った。
仕立ての良いスーツが広い肩幅を引き立て、その瞳の奥には人を威圧するほどの冷静さが宿っている。
気品を纏ったその肉体は、骨の髄まで溶かすような誘惑に満ちていた。
私は千鳥足で歩み寄り、身体の火照りを感じながら問いかけた。「……あなた、お相手してくれる?」
彼は口元をわずかに吊り上げた。「君のことは知っているよ」
私は彼の膝の上に腰掛けた。シガーの煙と濃厚なコロンの香りが私を幾重にも包み込む。
指先で彼の顎に触れ、そのまま腰元の冷たい金属のアクセサリーへと滑らせた。
その瞬間、彼は私を強く抱き寄せた。その身体は重厚で力強く、逃げることなど許さない。
重ねられた彼の唇は重く、熱く、深く、拒絶を許さないほどの独占欲を孕んでいた。
口づけを交わすたびに呼吸を奪われ、触れられるたびに、私はどうしようもなく彼に寄り添ってしまう。
彼に横抱きにされてバーを後にする頃には、私の頭はすっかり朦朧としていて、心の奥でさらなる温もりを求めていた。
彼のベッドの上で、彼は熱烈でありながらも理性を保ち、何度も私を絶頂へと導き、すべての理性を狂わせていく。
翌朝、目が覚めると、私は彼のベッドのシーツにくるまれていた。肌には彼が残した痕跡がいくつも刻まれている。
夜が明ける前に、私は逃げるようにその場を去った。この一夜は、元カレへのあてつけの、ただの荒唐無稽な過ちだと言い聞かせて。
けれど、彼と過ごしたあの夜の時点で、私の運命はすでに決まっていたのだ――。
私を芯から熱くさせたあの男は、私の想像を遥かに超えるほど、危険な存在だった。
世界が彼女を選んでも、私は私を裏切らない。〜愛の終わり、私の始まり〜

世界が彼女を選んでも、私は私を裏切らない。〜愛の終わり、私の始まり〜

34.7k 閲覧数 · 連載中 · 鈴木楓花
「彼女が死にそうなのに、もっと寛大になれないのか?」

夫はそう言った。

だから、私は寛大になってあげた。

私たちの娘が、彼女のせいで引き起こされたアレルギー発作で救急搬送されたとき、夫が付き添うはずだった時間を、寛大にも彼女に譲ってあげた。

一生に一度クラスのプラチナチケットだって彼女に譲った。夫が「彼女の方がそのチケットにふさわしい」と言ったから。

実の娘から「お母さんが代わりに死ねばよかったのに」と呪いの言葉を吐かれても、私は耐え抜いた。

けれど――彼が私の同情を引くために狂言誘拐を仕組んだと私を非難したとき、私の寛大さは限界を迎えた。

私は離婚届を彼の顔面に叩きつけてやった。彼は鼻で笑い、自分が不届き者(私)の命綱だとでも思っているようだった。

彼がどれほど愚かな勘違いをしているか、すぐに思い知ることになるわ。
余命宣告された日、帰宅するとベッドに「引き裂かれた愛人の下着」があった

余命宣告された日、帰宅するとベッドに「引き裂かれた愛人の下着」があった

55k 閲覧数 · 連載中 · 七海
結婚して5年、夫とは円満だと思っていた。
しかし、運命は残酷だ。

病院で「白血病」という絶望的な診断を受けたその日。
震える足で帰宅した私の目に飛び込んできたのは、夫の裏切りの証拠だった。

私たちの神聖な寝室。
そのベッドの上には、無惨に引き裂かれたレースの下着がわざとらしく残されていたのだ。

それは明らかに、夫の愛人からの宣戦布告。
「あなたはもういらない」と嘲笑うかのような、残酷なマウントだった。

命の期限を突きつけられた日に、愛まで失った私。
絶望の淵で、私はある決断を下す。
私が囲っている億万長者

私が囲っている億万長者

5.6k 閲覧数 · 連載中 · ほしの ちなつ
私はただ、心の痛みを紛らわせたかっただけ。

彼は息を呑むほど美しく、落ちぶれていた。夫の裏切りがもたらした傷が完全に癒えるまで、彼をそばに置いておくつもりだった。

お金で彼の付き添いを買い、すべてのルールを私が決め、すべてを完全に掌握しているつもりだった。

けれど、私の隣で横たわるこの男の正体は、彼が語ったものとはまるで違っていた。

魅惑的な笑顔と抗いがたい容姿の下に隠されていたのは、仇敵から身を隠す億万長者の素顔だった。

今や彼は、私の生活に、私のベッドに、そして私の心に――完全に絡みついている。

身を引くことは、彼のそばにいることよりも、もっと危険かもしれない。
私が彼を滅ぼした――だから、今度はこの命を捧げて守り抜く

私が彼を滅ぼした――だから、今度はこの命を捧げて守り抜く

8.1k 閲覧数 · 連載中 · 南宮
愛する人を殺めた罪の重さ、その疼きを私は決して忘れない。
二度目の生を得た私は、かつて私が踏みにじった孤独な王のもとへ再び舞い戻った。
「未来」という名の禁断の知恵を、唯一の嫁入り道具として。
彼に差し出される毒も、背後に潜む暗殺の罠も、すべて私の視界の中にある。
これは彼を導くための道標であり、魂の誓い。
彼を闇へ堕としたかつての私は、もういない。
今、私は彼を守り抜くために全てを焼き払う、最も鋭き刃となる。