彼の浮気を暴いたのは、すべての始まりに過ぎなかった
1.5k 閲覧数 · 連載中 · 渡り雨
親友のクローゼットの中に隠れて、婚約者の浮気現場を押さえようとしていた。
ドアの隙間から、ベッドの上の二人が見えた。
寺紗はアイマスクをされて、手首をシルクのスカーフでベッドのヘッドボードに縛りつけられている。
覚の両手が彼女の喉元を締め上げていた――いわゆる首絞めプレイ、だと思った。
しかし、彼女の甘い声は、やがて苦しそうなむせ返る音に変わっていった。
身体が大きく痙攣し、縛られた両手が空を掻くようにもがき、脚はマットレスを必死に蹴りつける。
――そして、ぴたりと動かなくなった。
覚は手を離し、寺紗の首筋に指を当てて脈を確かめ、それから小さくため息をついた。
そして、タバコに火をつけた。
彼はそのまま彼女の身体の隣に腰掛け、スマホをいじり始めた。
慌てる様子もない。心臓マッサージもしない。110番に電話もしない。
まるで、人が死ぬところを見るのはこれが初めてじゃないと言わんばかりに。
悲鳴をこらえるために、自分の手を思いきり噛んだ。
床には血が広がり、ゆっくりと私の裸足のほうへ滲むように近づいてくる。
そして、彼はクローゼットのほうへ歩いてきた。
あの夜、私はどうにか逃げ出した。文字どおり、命からがら。
階段を駆け上がり、三階上のフロアに住む隣人の部屋へと転がり込んだ――
芦田成美医師。トラウマ治療を専門にしているセラピストだ。
美しくて、温かくて、そこにいるだけで人を安心させるような女性。
彼女は私を部屋の中に引き入れ、ドアに鍵をかけ、温かいお茶を差し出した。
「警察にはもう連絡したわ」
「もうすぐ来てくれるはずよ」
一時間が過ぎた。それでも、サイレンの音は聞こえてこない。
私は彼女を見た。
彼女は、静かに微笑んだ。
ドアの隙間から、ベッドの上の二人が見えた。
寺紗はアイマスクをされて、手首をシルクのスカーフでベッドのヘッドボードに縛りつけられている。
覚の両手が彼女の喉元を締め上げていた――いわゆる首絞めプレイ、だと思った。
しかし、彼女の甘い声は、やがて苦しそうなむせ返る音に変わっていった。
身体が大きく痙攣し、縛られた両手が空を掻くようにもがき、脚はマットレスを必死に蹴りつける。
――そして、ぴたりと動かなくなった。
覚は手を離し、寺紗の首筋に指を当てて脈を確かめ、それから小さくため息をついた。
そして、タバコに火をつけた。
彼はそのまま彼女の身体の隣に腰掛け、スマホをいじり始めた。
慌てる様子もない。心臓マッサージもしない。110番に電話もしない。
まるで、人が死ぬところを見るのはこれが初めてじゃないと言わんばかりに。
悲鳴をこらえるために、自分の手を思いきり噛んだ。
床には血が広がり、ゆっくりと私の裸足のほうへ滲むように近づいてくる。
そして、彼はクローゼットのほうへ歩いてきた。
あの夜、私はどうにか逃げ出した。文字どおり、命からがら。
階段を駆け上がり、三階上のフロアに住む隣人の部屋へと転がり込んだ――
芦田成美医師。トラウマ治療を専門にしているセラピストだ。
美しくて、温かくて、そこにいるだけで人を安心させるような女性。
彼女は私を部屋の中に引き入れ、ドアに鍵をかけ、温かいお茶を差し出した。
「警察にはもう連絡したわ」
「もうすぐ来てくれるはずよ」
一時間が過ぎた。それでも、サイレンの音は聞こえてこない。
私は彼女を見た。
彼女は、静かに微笑んだ。


















































